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しぶさんぽ Season15 VOL.2

サッカーと野球の名門、帝京高校を通り過ぎる

板橋区立植村記念加賀スポーツセンターをあとにしたSPOAL渋谷淳と近藤俊哉は北西に向かって歩き出した。左手に板橋こども動物園が見えてくる。調べてみるとこちらも植村直己冒険舘と同じように2年ほど前にリニューアルしたのこと。

板橋子ども動物園には野球場も併設

 

私たちが訪れたときには見られなかったが、ポニーに乗ったり、モルモットを抱っこしたり、山羊や羊にエサをあげたりできるのだという。確かに馬場がある。子どもたちがポニーに乗り、飼育員に手綱を引かれるかわいらしい姿が目に浮かぶ。

ほんわかとした気持ちになって住宅街を北へ進んでいくと石神井川に出た。川を覆うように枝を伸ばす桜の木が並ぶが、花見にはまだ早い。それでも石神井側沿いはウォーキングを楽しむ人が多いそうで、この日のように真冬でもお日様が出ていればなかなか心地よい散歩ができる。春や秋はさぞ気持ちのいいことだろう。

石神井川 氾濫に備えて護岸が高い

 

呑気に歩きながらスポーツの匂いを探しているとありました。スポーツの名門、帝京中学、高校の校舎がドドーンと現われたのだ。

それにしても校舎が微妙に湾曲しているのはなぜだろう。敷地が狭いから? 漠然とした疑問を持って裏に回ってみると納得。なんと校舎の北側は野球場になっていて、野球の外野フェンスのカーブに沿うように、扇状に校舎が建てられているのだ。つまりは校舎一体型球場。意気込みが違う。

帝京といえば野球に加え、サッカーの名門校として古くから知られている(サッカーは別の場所にグラウンドがある)。サッカーは1975年に全国高校サッカー選手権で初優勝し、これまでに6回も選手権を制している。インターハイも入れると全国優勝は9度。Jリーグに多くの選手を輩出している。

野球部は1989年の夏の甲子園で優勝し、選抜と合わせて甲子園の頂点に3度立っている。もちろんプロ野球に進んだOBは多数いる。

ウィキペディアで帝京高校の「著名な出身者」を見てみるといるわいるわ、著名人の名前がズラリと並ぶ。あまたのOBの中からあえてピックアップしてみると、サッカーならワールドカップに2度出場した中田浩二さんが一番の出世株か。元日本女子代表監督の佐々木則夫さんも帝京出身だ。

野球もプロ入りした選手の名前がブワーっと並ぶのだが“あえて”の一人は横浜DeNAベイスターズのクローザー、山崎康晃選手。ここは東京オリンピックで金メダリストに敬意を表わそう。ちなみに山崎選手はオリンピックで2試合に登板して2イニングを無失点に抑えた。

そんな名門も昨今は野球、サッカーともに全国大会にあと一歩届かない状態が続き、かつてほど絶対的な存在ではなくなっている。著名OBの筆頭とも言えるとんねるずの石橋貴明さん(野球部)、木梨憲武さん(サッカー部)はどう感じているのだろうか。

ほかの競技に目を向けると東京五輪レスリング・フリースタイル65㎏級金メダリストの乙黒拓斗選手、同じく74㎏級出場の兄圭佑選手のオリンピック兄弟はぜひ押さえておきたいところ。個人的には元プロゴルファーの東尾理子さん、ラグビーのリーグワン、相模原ダイナボワーズで38歳にして活躍中の安江祥光選手、さらには俳優の的場浩二さんの名前もしっかり頭に入れた。

ROUTE2020トレセン通り

 

トップアスリートが集うハイパフォーマンススポーツセンター

さて、長居は無用だ。おやじ2人が学校の前でウロウロするのはマズイ(ましてや首からカメラを提げるなんてもってのほか!)。ここはあまり校舎に顔を向けないでスタスタと通り過ぎよう。代わって目指すは西が丘の味の素ナショナルトレーニングセンター。環七通りの姥ヶ崎陸橋をくぐり抜け、板橋区から北区へ入った。

北区は2017年に西が丘からJR赤羽駅、JR十条駅に通じる道路に「ROUTE2020トレセン通り」との愛称をつけた。「トップアスリートのまち・北区」を全国に発信するのが目的で、通りにはオリンピック・パラリンピック競技紹介看板やアスリート手型モニュメントが設置され、オリパラのエンブレムをデザインしたフラッグがはためいている。

NTCモニュメントの前で

 

そんな通りを抜けていくと味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)に到着。ここでNTCについて少し説明したい。

NTCは日本のトップレベル競技者用のトレーニング施設で、施設が国立西が丘運動場跡地に誕生したのが2008年のこと。翌年、味の素が命名権を得て現在の名称となった。19年にパラリンピック選手に対応したNTCイーストが開業し、それまでの建物がNTCウエストと呼ばれるようになる。

敷地内には選手の宿泊棟や国立スポーツ科学センター、テニスコート、フットサル場、味の素フィールド西が丘(西が丘サッカー場)があり、これらとまとめてハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)という。最寄りのバス停に「HPSC南」とあって最初意味が分からなかったのだが、そういうことである。

施設の全景

 

私もNTCにはレスリングやバスケットボール、卓球、あるいは研究者の取材で訪れたことがある。とても立派な施設で、それだけに警備も厳しい。この日はもちろん外から眺めただけ。もし興味のある方はNTCイーストの見学ツアーがあるので、機会を利用して日本トップスポーツの心臓部をのぞいてみるのもいいかもしれない。

ここから都営三田線の本蓮沼駅まで歩いて今回の散歩は終了。歩数計は1万4132歩を表示した。駅近くの喫茶店に入って一息つくと、中年男子2人は「足がジワーッときますね」と心地よい疲労に目を細め、おいしくコーヒーをいただいた。

おわり

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