アイテムで振り返る1990年代
――本日は、宇曽井さんにとっての1990年代思い出アイテムも持ってきていただいたと伺いました。早速ですが、ご紹介いただけますか?
宇曽井:じゃあ、まずはこれですね。
――とんでもないお宝が!
宇曽井:これは中学校卒業の時に父親が無理してくれて、マイケル・ジョーダンの試合を観に行くことができたんです。卒業前のイベントも全部すっぽかして、仮病を使って(アメリカに)行ってきたんですよ(笑)
――こんなチャンスがあったら誰でもそうしますよね(笑) チケットのデザインがたまらないです。試合は3月と記載がありますね。
宇曽井:そうです。ちょうどオールスターが終わってシーズンの後半戦に入った時の、シカゴ・ブルズ対サンアントニオ・スパーズの試合でした。
――初めてのNBAがブルズのゲームなんて贅沢すぎますね。羨ましいです。
宇曽井:感動を通り越してパニックでしたよ(笑) 会場の雰囲気もそうですが、あの場所で得た体験や経験は言い表せないですね。忘れられないです。そしてちょうどその時の試合でジョーダンが着用していたのがこのモデルなんです。
――「エア・ジョーダン11」の“ブレッド”!
宇曽井:そうです。これ自体は2012年に復刻されたものなんですが、当時の試合で履いていて本当にカッコよかったんですよ。エア・ジョーダンシリーズの中でも、僕は11がとても好きです。
――10年以上前のものと思えないくらい状態がいいですね。
宇曽井:これは(バスケットボール用で)下ろしてないんです。バスケの試合を見に行く時に何回か履いたくらい。僕はあまり物をとっておけないタイプで、すぐ捨てちゃうんですよ。履いて、汚くなったら捨てて、また新しいのを買うんです。でもこれだけは開けた瞬間に「めちゃくちゃカッコいい」と思って、どうしようか悩んだんです。結局(ボックスを)開けて、ため息ついてしまっちゃいましたね(笑)
――てっきり宇曽井さんほどのキャリアを持つ方だと、家には大量のスニーカーがあるんじゃないかと思っていました。
宇曽井:昔は結構あったんですけどね。今は、ちょっと大事だなってもの以外は全部断捨離したんです。そんなセレクション的なことがあって、残ったものの一つがこの一足ですね。
――これは「エア・ジョーダン1」の“ロイヤル”!かなり年季がはいっていますね。
宇曽井:これは当時スニーカーショップで働いていた先輩に頂いたものなんです。自分の結婚報告をするためにお店に行ったら、その時に飾ってあったこのスニーカーを「やるよ」と言ってくれたんです。その先輩が、実は僕に(今働いている)山男というお店を紹介してくれた人でもあったんですよ。
――そこでつながってくるとは!このモデルは1985年のオリジナル以降復刻回数も非常に限られていますよね。色んな意味でこれは捨てられない一足ですね。
宇曽井:そうですね。これは2001年のものです。直接1990年代のものってわけじゃないけど、エア・ジョーダン1としてみたらやっぱり外せないなと。
――おっしゃる通りですね。よく見たら宇曽井さんは今日もエア・ジョーダン1を履いているじゃないですか!
宇曽井:これは去年発売されたエア・ジョーダン1の“モカ”ですね。これもいいカラーですよね。僕は収集癖があるわけじゃないので、全部のモデルを買うわけじゃないですがやっぱりエア・ジョーダン1も好きです。
――そろそろお時間が来たようです。宇曽井さん、今日はたくさんのお話をありがとうございました!この時間は本当に1990年代にタイムスリップしたような気持ちになれました。
宇曽井:いえいえ、こちらこそありがとうございました!
1990年代という10年間。
ストリートシーンでは、とにかく様々な出来事が起きました。
その出来事を、どこで、どう感じて、どう過ごしてきたのか。人それぞれにストーリーがあるのです。
今日の話で特に印象的だった宇曽井さんの言葉がありました。
「カルチャーって人と人とでつくるもの」
1990年代に感じたことを忘れず、2020年代の今こそそんなカルチャーを創り上げていきたい。そんな熱い気持ちを持って、上野という街に生きる宇曽井さん。どうかお近くにお立ち寄りの際は、山男へ足を伸ばしてみてください。
お目当てのスニーカーがなくたって、いいんです。
何も用事がなくたって、いいんです。
そこには、宇曽井さんという人がいます。
それが目的になっていくのもまた、面白いじゃないですか。
カルチャーは人と人とで作るものですから。
90sSTREETMEMORIES 終
2021年4月公開