歴史上の日本人のなかで、たった2人しか成し遂げていないことがあります。それは、ナイキから自分の名前が入ったモデルが発売されるということ。
その一人が、野茂英雄。
1997年に、MLBドジャースに在籍していた野茂英雄へ、ナイキが日本人初のシグネチャーモデル「AIR NOMO MAX(エア ノモ マックス)」を作りました。
シグネチャーモデルとは、特定の著名人の名を冠した製品のことです。もちろんエア・ジョーダンも然りで、例えばF1のミハエル・シューマッハーなど、その時代を代表するスーパースターたちの名を冠してナイキから作られていたのです。名だたるスター達に並んでシグネチャーモデルが作られた野茂さんは、やっぱりすごかったですね。
今回の主役は、そんな野茂さんと並ぶもう一人の日本人です。と言ってもシグネチャーモデルを作るようなスーパースターではありません。先に事実だけ言ってしまうと、都内に住む30代のおじさんです。
その名は、宅万勇太。
彼の人生は、2018年で大きく変わりました。「NIKE ON AIR」というナイキが世界6都市(東京、上海、ソウル、パリ、ロンドン、ニューヨーク)で開いたワークショップに参加し、自分がデザインしたシューズを応募。トータル数千種類にも及ぶ中から見事東京代表に選ばれ、他の5都市のデザインとともに2019年に全世界で発売されたのです。
これが、「AIR MAX 1 OA YT “TOKYO MAZE”」です。OAはOn Air。YTは宅万さん(Yuta Takuman)のイニシャル。まさに自分の名前を冠したスニーカーなのです。
今やすっかりスニーカー界の寵児となり多方面に大活躍の宅万さんですが、いつも心の傍にあったスニーカーこそエア・ジョーダン1なのです。すっかり前フリが長くなってしまいましたが、そんな宅万さんに思いっきりエア・ジョーダン1を語っていただきました。
今回は「恋するスニーカー」と題して、エア・ジョーダン1スポットを当てて愛を語っていただきたいと思います。早速なんですが、エア・ジョーダン1を初めて買ったときのことを教えてください。
「はじめは、2001年でしたかね。今年の7月にも復刻されますが、グレー×シルバー配色のモデル(「AIR JORDAN 1 RETRO+」※)を買いました。実はそのときはエア・ジョーダン1には全く興味がなかったんです。たまたま『これ、いいな。』と思って買ったのがそのモデルでした。」
※2001年に日本企画で日本のみで2001足だけ発売された専用ジェラルミンケース入りスペシャルモデル
そうだったんですね!当時のデザインってHigh(ハイカット)とかMid(ミッドカット)のような区分がなかったと思うのですが。
「そうそう、なかったんですよ。なので今みたいにHighとかMid、Lowとモデル展開されるようになっているのはすごいなと思います。」
実際にそれぞれの魅力を教えていただけますか?
「まずLow(ローカット)はとにかく履きやすいですね。楽に履けるのが一番の魅力ですね。Mid(ミッドカット)は色んなコラボデザインが出ているのが魅力だと思います。実際僕が最初に買ったエア・ジョーダン1も形で言うとMidに近いんでしょうね。そして何よりHigh(ハイカット)はもうね…言うまでもないですよ(笑)」
基本的にエア・ジョーダン1=ハイカットなイメージですよね。
「そうなんです。僕のコレクションもほとんどがハイカットです。特にオリジナルのカラーが大好きで、ほとんど持っていますよ。コラボモデルもいいなと思ったものだけは持ってます。」
さすがですね、オリジナルの配色はどれもカッコ良いので本当に羨ましい限りです。ちなみにコラボモデルは何を買ったんですか?
「(ロサンゼルスのセレクトショップ)UNIONとコラボしたモデルですね。オリジナルを除いてはこのデザインが一番いいと思っています。リリースの時は本当に衝撃でした。買えなかったらスニーカー集めを辞めようかなと思ったくらい欲しかったんです(笑)。」
結局2色ともゲットされてますよね(笑)
「本当にラッキーでした。両色ともUNI0NのWEB抽選で当たったんです。」
宅万さんがゲットしたユニオン×エア・ジョーダン1
先程おっしゃっていたMidもそうですが、最近はコラボモデルもカッコいいものが多いですよね。
「そうですね、特に今はMidがフィーチャーされることが多いです。リリースされる割合も多くなってますから、最近ハマった人はエア・ジョーダン1=Midの印象を持っているのではないでしょうか。でも決してそんなことはなくて。昔はHighの”廉価版”のような位置づけだったんですよ。なのでオリジナル好きな自分としては、実はちょっと抵抗があったりします。」
なるほど。特に宅万さんはオリジナルから始まっているからその気持ちも強いんですね。これもある意味ナイキの戦略だったりするのでしょうか?
「そうだと思います。あまりにもHighが人気すぎるから、MidやLowに魅力的なコラボやデザインを寄せているのではないでしょうか。特に昨年はその傾向が強くて、『むしろそれHighで出してよ』って思っちゃうくらいカッコいいものもありました(笑)。」
本当にオリジナルへの愛に溢れていますね。やっぱりエア・ジョーダン1を語る上ではナイキ自体の魅力も見過ごすことは出来ないと思うのですが。
「その通りですね。ナイキだからこそ、あのモデルが生まれたと思っています。ナイキはもうとにかく、『カッコいい』の一言に尽きますね。僕はエア・ジョーダン1が好きですけど、最初に買ったスニーカーはダンク(NIKE DUNK)ですし、エアマックスなどのハイテクスニーカーもたくさん履いてきました。NIKE ON AIRで受賞して発売できたのもエアマックス1ですしね。」
ナイキへの愛があって、またその中にエア・ジョーダン1への愛があるんですね。
「とにかくナイキが好きです。だからナイキから出る色々なモデルを履きました。その中でもやっぱりエア・ジョーダン1は特別です。実は僕、大学過ぎてから2017年くらいまではスニーカーを履く生活じゃなかったんです。ただその時にアディダスのイージー350(Yeezy Voost 350)がブームになって、たまたまスニーカー熱が再燃しました。そこから今に至っています。」
復帰してたった3年の間に、自分の名前入りスニーカー出したり、YouTuberとしても活躍したり、すごい変貌ですね(笑)
「本当に自分でも驚いています(笑)。今年も色々な活動をしていくので、がんばります。もちろん毎回争奪戦になっちゃうと思うけど、ちゃんとエア・ジョーダン1の新作も集めます!」
応援してます!今日は貴重なお話ありがとうございました。
最初にリリースされたオリジナルモデルからの系譜を継ぐHighは、やはりエア・ジョーダン1の王道的な存在です。しかしながら、多様なデザインで魅力を発揮するMidや履きやすいLowモデルなど、バリエーションに富んだ展開が最近のトレンドなようです。
「恋するスニーカー」の第一弾としてお送りしたエア・ジョーダン1は、いかがでしたか?
その歴史はとても深く、コート外でも様々なコーディネートを愉しむことができます。そして今回、そんなスニーカーに恋をした人の話はまた魅力を伝えてくれたのではないでしょうか。
最後になりますが、宅万さんの家にはテレビやYouTubeでも数々取材が来るほどの豪華なコレクションルームがあります。実は次回掲載予定の記事で、実際に訪問して取材してきました。その予告も兼ね、圧巻のコレクション風景を一枚だけ特別にご紹介して締めくくりたいと思います。
2020年4月掲載