ここまでは藤原ヒロシや阿部千登勢といった日本人が手掛けるファッションブランドが続きましたが、次に紹介するのは世界的に有名なデニムブランドです。
“ジーンズの原点”とも言われるブランド『Levi’s(リーバイス)』
ご存じの方も多いことと思います。その成り立ちは、1853年のこと。ドイツからニューヨークにやってきて兄のアパレル事業を手伝っていたリーバイ・ストラウスがサンフランシスコに雑貨店・生地商「リーバイ・ストラウス社」を設立したのがはじまりです。そして彼が自社から世に送り出したジーンズ、そのブランドが「リーバイス(Levi’s)」なのでした。
日本では、“キムタク”こと木村拓哉さんが度々着用しTVCMでも起用されておりましたのでイメージが強い方も多いのではないでしょうか。90年代のドラマ『若者のすべて』に出演していた時のレザージャケットにリーバイスのジーンズ、そしてレッドウイングのエンジニアブーツというコーディネートは、私を含め当時のメンズを魅了しましたね。
リーバイス×スニーカー!?
そんなリーバイスも、やはりナイキとコラボレーションしたモデルをリリースしています。今回ご紹介するのは、その中でも特に「大事件だった」モデルです。
やっぱり、と言うべきか。当然リーバイスが手掛けるのですから、デニム地ですよね。モデルとなったのは、『AIR JORDAN4(エア・ジョーダン4)』。第一話で紹介した『AIR JORDAN3(エア・ジョーダン3)』の後継モデルです。デザイナーは、前作に引き続き『エアマックス』の生みの親ティンカー・ハットフィールドが担当し、1989年に発売されました。
同年シーズンのNBAプレーオフで、マイケル・ジョーダンがユタ・ジャズ戦で決めたあのミラクルブザービーター“ザ・ショット”の足元もこのシューズ。そんなことも相まって、エア・ジョーダンシリーズの中でも屈指の人気作となりました。
通常のエア・ジョーダン4と比べても、特にデザインで劇的に再構築されているところはありません。その代わりに、アッパー部分からミッドソール部分まですべてデニム尽くしという、リーバイスのアイデンティティが全力で体現されています。さらにシュータン部分には大きく皮のパッチが縫い付けられており、完全にジーンズと同じ装備に。
当然デニムですから、ジーンズと同様にこんな感じでダメージをつけることもできちゃいます。買ってもただ汚れていくのではなく、経年変化を味わいとして楽しめるという唯一無二の魅力がこのモデルにはあるのです。
デニム地とはいえ単色なので様々な合わせ方が出来る本作ですが、やはり色に合わせたジーンズをセレクトするのが王道ではないでしょうか。ルーズフィットなシルエットにシンプル無地Tシャツというコーディネートは、ナチュラルにしっかりと足元を引き立たせてくれます。
国内発売時に起きた「大事件」
私はこのモデルを発売日に国内で買うことができず、一昨年にニューヨークへ行った際に購入しました。その価格、なんと600ドル(当時の日本円レートで約70,000円)。非常に高い買い物となりましたが、それでも発売当時の価格に比べると遥かにお得な金額でした。
発売されたのは、2018年1月のこと。
東京で発売予定だった「リーバイス原宿店」では、入荷数量が140足弱だったそうです。それに対し、当日並んだ人の数はトータルで8,000人。もう嫌な予感しかしませんよね。
そして案の定、事件が起きました。
時系列で経緯をまとめましょう。
・リーバイス原宿に朝から約8000人が集結
・抽選を始めたものの警備が甘く、何度も抽選の列に入り直す人が続出
・それにより途中で抽選券がなくなる
・11時に販売を中止すると発表
・この発表に激怒した客が店頭に詰めかけて暴動
・その結果14時から販売を再開
・11時の発表を受けて帰宅した当選者大激怒
文字にしただけで震えてくる事件ですね。当時その場では、当選券が20万円以上の価格で売られていたそうです。あまりにも衝撃的な事件だったので、当時はワイドショーでも取り上げられていました。気になった方は是非YouTubeで検索してみてください。「リーバイス 炎上」と打ち込むだけで、たくさん出てきます。
とても残念な事件でしたが、結果としてこのモデルの希少価値をさらに高めることとなってしまいました。1stリリースのブルーに続き、2ndリリースではブラックとホワイトデニムカラーも発売されましたが、依然として1stカラーが最も高い取引価格となっています。
ナイキの人気、エア・ジョーダン4の人気、そしてリーバイスの人気。すべてが交わった時に起こった化学反応は、とてつもない大爆発を巻き起こしたのでした。
第一話の『Fragment Design』、第二話の『sacai』、そして今回の『Levi’s』。それぞれのブランドがナイキと創り上げたデザインは三者三様で、そのどれもがブランドの世界観・アイデンティティにふれることができるものでした。
通常のモデルと比べて見ることで、違いもわかりやすかったのではないでしょうか。今回紹介したものは氷山の一角です。ナイキはもちろん、各スポーツメーカーそれぞれは様々なブランドとパートナーシップで手掛けたモデルがあります。最後は、紹介できなかったいくつかのモデルの着画をお見せしましょう。
2021年5月公開