「立てぇい、立つんだぁジョー!」
皆さんご存知、映画「あしたのジョー」(2011年)から、あまりにも有名な一言。大ヒット漫画の実写版。当時の最先端のカメラワークやCGを駆使し、昭和のドヤ街の町並みもオープンセットで完全再現。主演俳優達のトレーニングによる肉体美も必見の作品。こんな減量シーンやり過ぎだろうと漫画では思っていましたが、なんの違和感もない仕上がりに。また、エンディングの映像もシブいものになっております。
さて、今回の「SPOALの本棚」は百田尚樹作の『「黄金のバンタム」を破った男』(PHP文芸文庫)をご紹介。
恥ずかしながら未読でしたので、まずは裏表紙のあらすじを読んでみると、どうやらファイティング原田の半生を綴った小説らしい。フムフム。これだけ聞くと、本人の生い立ちから始まってタイトルどおり黄金のバンタムと呼ばれているボクサーに勝つまでの話でしょう。とちょっと高をくくっていたのですが、いい意味でやられました。
もちろんファイティング原田のボクシング人生に触れられ、いかに世界を獲るのが厳しいものなのかを知らされると同時に、この本にはボクシングの歴史、戦後の日本の歴史、そしてボクサー達のたくさんの夢が詰まった作品でした。ボクシングに詳しい人であれば、「こんなん全部知っとるでー」となるのでしょうが、テレビでやっている時にたまに見るけど、そんなに詳しくは知らない。という人に是非読んでもらいたい。
トレーナーの存在の重要性。「あしたのジョー」のモデルとなった人物。あそこのボクシングジムはこの人がこういう経緯で作ったのか等々。そして、何度も何度も作品内に出てきますが、階級の数、世界チャンピオンの数について詳しく書かれています。
最近の若いアイドルの顔と名前がさっぱり区別つかないなーと思っているあなた。それは決して老化現象の一つではありません。答えは本書を読んでいただければわかります。
また、作中に三島由紀夫の観戦記が載っているのですが、こうもボクシングが文学的になるのかと、その表現力にため息が漏れました。こちらも是非チェックしてみてください。
敗者がいるから勝者が生まれる。運に恵まれなかったボクサー達も多数。
神様は皆に平等にチャンスを与えてくれていますが、そのチャンスが掌に乗った瞬間、それを掴めるか掴めないかで人生が大きく変わってくる。そして、そのためには日々の努力が大切なんだと本書から感じました。
私も来たるべきチャンスを掴むために、まずは地道にカメラの清掃から始めたいと思います。
終
墨田区は「あしたのジョー」推し
2021年5月公開