6月12日 チッパーに感謝!
朝起きて身支度を済ませて、タクシーで日本―カメルーンの会場となるフリーステートスタジアムへ。フリーステートとは自由州。ブルームフォンティーンはその自由州の州都としての顔も持つ。
私とライターのSくんはひとまずAD(身分証明書)をピックアップするためにスタジアムに入って手続きのカウンターへと向かった。メディア用ADだけでなく、ボランティア用ADも同じ場所で受け付けているために大混雑なのである。
パスポートなど提出書類をチェックして、写真を撮って、ADを受け取るというのが流れ。手続きしてくれるのもボランティアさん。とてもフレンドリーだ。
「日本語でありがとうは何て言うの?」「さようならは?」などと聞いては、スペルを書いてくれとせがまれる。理由を聞くと「これからたくさんの日本人が来るので、あいさつしたい」と白い歯をのぞかせていた。なんかこう、胸がジーンとした。
手続きの後でメディアセンターに入ってみると、かなり広いスペースだった。有線LAN完備で、至るところにテレビがあり、至るところに警備員が立っている。メディアセンターを一歩でると警官も多く配備されており、国を挙げて大会を絶対に成功させてみせるという意気込みが伝わってくる。
午後4時から日本代表が練習するスタジアム近くのグラウンドに移動。600mほどの距離を歩いて移動してみた。なるべく外は歩かないほうがいいとは言われていたが、タクシーを呼ぶのもひと苦労なので仕方ない。まあ、スタジアム近くは警察の車が多く走っていたので、まったく問題はなかった。
日本代表は非公開練習。警備員が2m間隔で立っていて、厳重体制のなかで練習が行なわれた。練習後、取材を終えてから私とSくんは2人で歩いてスタジアムに移動した
ちょっと暗くなっていたので「大丈夫かな?」という思いはあった。だが、2人でワールドカップの話で盛り上がっていたのであっという間に着いた印象だ。
問題はここからである。
ホテルにどうやって帰るか、だ。タクシーを呼んでも来ない可能性はあるし、メディア送迎用のバスももう終了したようだ。
周りを見渡すと、すっかり暗闇に。困った、困った。
スタジアムのスタッフに「我々はホテルに戻りたいのだが、手段がない」と相談してみると、何と、車を用意してくれたのだ。
運転手もこれまた気のいいおじさんで「俺の名前はチッパーっていうんだ。おまえたちの名前は?」とフランクな会話を楽しめた。楽しい時間を過ごしながら、ホテルまで送ってもらうことができた。
車から降りると、僕たちは絶叫していた。
「サンキュー! チッパー!」
6月13日 決戦前日にコーラ一気飲み!
きょうのブルームフォンティーンは快晴だ。起床して日本の出版社と打ち合わせを済ませてからフリーステートスタジアムへ。日本代表、カメルーン代表の公式練習があるため、きょうも一日中ここにいることになる。
メディアセンターで一日仕事。
特にネタもないので、ここでの話題を一つ。
売店でペットボトルのドリンクを買うと必ずフタを取られる。これもテロ対策の一環とかで、密閉したままで液体を持ち運びできないようにしているとか。コーラだと時間が経つと気が抜けてしまい、Sくんは「シュワッとこない」とこぼしていた。それにテーブルに置いておくと、フタがないためにどうしてもこぼしてしまうんじゃないかと気になってしまう。持ち運びはできないけど、コーラを猛烈の飲みたくなる欲は抑えられない。ググッと飲んじゃえばいい。僕も高校3年以来となるコーラ一気飲みにチャレンジしてみた。やはりハイキングウォーキング、鈴木Q太郎のスピードには勝てない。
ここのチキンバーガーはうまい。ジューシーで肉厚で、早くも2日連続でこれを食べている。バーガーに合うのはやっぱりコーラなんだよなあ。
さあ、明日は運命の初戦。日本代表の勝利を願いつつ、早く原稿を終わらせてこの日は早く寝るとしよう。
6月14日 勝利の後で起こった事件。
やってくれました、日本代表。
フリーステートスタジアムの記者席の一番後ろで試合を観ていた私はカメルーン代表に勝った瞬間、思わず立ち上がっていた。横にいたカメルーン人の記者に「おめでとう。日本に負けるとは思わなかった」と手を差し出され、握手した。
取材を終えてまずは原稿に集中。書き終えると午後10時を回っていて、メディアセンターを見渡すと人の数も少なくなっていた。
そんなときに、1本の電話が。
先にホテルに戻って仕事をしていたMくんからだった。
「観戦に来ていた日本人のお客さんが帰り際、強盗被害に遭ったみたいなんです。みなさんも帰るときには十分気をつけてください!」
情報を集めてみると事実だった。一人になったところを狙われ、荷物を奪われたそうだ。ただ、その方はケガもないし、無事だと聞いてメディアセンターに残っていた人たちも安堵の表情を浮かべていた。
この日ばかりは余計に気を張ってホテルまで向かった。部屋で残していた仕事を済ませると、勝利を祝うためにビールが飲みたくなった。でもそのために外出はできない。ミネラルウォーターで乾杯。こんなに水が美味しいって、あったかな。
続くっっ!
2022年9月公開