東京ベイゾーンで新競技を味わう気分に浸る
両国から都営地下鉄大江戸線、東京メトロ有楽町線を乗り継いで豊洲駅へ。ここからゆりかもめに乗り換えて向かった先は「東京ベイゾーン」。湾岸エリアに集まっているオリンピック競技会場である。車窓に選手村のマンションを眺めながら、まずは有明テニスの森駅で下車した。目の間に広がるのが自転車BMXフリースタイル、自転車BMXレーシング、そしてスケートボードが開催されている有明アーバンスポーツパークだ。
駅から撮影した自転車BMXの会場
競技の様子が外からそれなりに見えてしまう会場はここくらい。自転車BMXの会場はゆりかもめから丸見えである。改札を出た2階のフロアに人だかりができないように、改札前の競技会場側には東京2020の大きな横断幕が目隠しのために張られていた。
ところが“タダ見”を防げない場所があった。競技場近くにかかる有明北橋だ。外から競技が見られる!とあっという間に話題となり、人だかりができるようなったのだ。この日、競技はなくて人はいなかったが、橋の上に行ってみると確かに見える。すべて見えるわけではないけれど、ジャンプした瞬間なんかは見えそうで、その“チラ見”かえって観客の興奮をさそうのかもしれない。
右奥がスケートボードの会場。競技のあるときはこの橋に人だかりが
ご存知のように新競技のスケートボードは男子ストリートの堀米雄斗選手、女子ストリートで西矢椛選手、女子パークの四十住さくら選手が金メダルを獲得。合わせて金3、銀1、銅1の大活躍! しかもみんなめちゃめちゃ若い! そりゃあ元気のある若い人たちはちょっと無理してでも観戦したくなるよな~と妙に納得した。
さて、有明アーバンスポーツパークに別れを告げた私たちは再びゆりかもめに乗って今度は東京ビッグサイトで下車。モノレールの中からメディアセンターが見えたので顔を出すことにした。だれか知っている人はいるかな? そんなことを考えながら歩き回ってみたのだが、そもそも日本のメディアをほとんど見かけない。みんなどこかへ取材に出ているのだろう。そもそも自国開催の今回、日本のメディアはここを使わず、自社で仕事をしているのかもしれない。そのあたり、いつか五輪取材をした記者に聞いてみよう。
こちらがメディアセンター。世界のメディアの取材拠点だ
さあ、次は本日最後の目的地、夢の大橋である。ここに聖火が灯された聖火台があり、自粛の呼びかけにもかかわらず連日、家族連れなどでにぎわっているとのこと。聖火台に近づいていくと、アルバイトスタッフが首からハンドマイクを提げ、「熱中症に気をつけましょう」とか、「聖火台の見学は自粛しましょう」という録音テープが流されていた。
炎天下にも聖火はメラメラと燃えていた
さらに近づいていくと「混雑」というほどではないけれど、そこそこの人出といった印象。みんな静かに写真撮影をして長居をせずに去っていくのだが、けっこうな数のスタッフが「見学は自粛してください」というボードを首から提げたり、「密にならないように」と呼びかけたり、何とも微妙なムードである。
聖火はメラメラと燃えていた
この炎天下の中、仕事とはいえ他人を注意し続けるのは大いにストレスがたまることだろう。言うことを聞かない人も多いだろうし、中には「うるせーな、ちょっと見てるだけじゃねーか!」と文句をたれる人いるのではないか。だったら公開しなければ?というツッコミも。う~ん、何か今回のオリンピックのチグハグぶりを感じさせる夢の大橋だった。
さあ、そろそろ散歩を切り上げることにしよう。やはり暑さが影響したのか。私と近藤カメラマンはそろそろ限界。青海駅からゆりかもめにのり、最後はモノレールの中からベイゾーンの競技場を眺めることにした。
ゆりかもめから撮影した青海アーバンスポーツパーク
青海駅で乗車して最初に目に入るのが青海アーバンスポーツパーク。前半はバスケットボールの3X3、後半スポーツクライミングが行われた。さらに進んでいくと、パラリンピアンの練習拠点として整備されたパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」が眼下に現れ、続いては潮風公園に仮設されたビーチバレー会場が登場する。
そのままフジテレビの横を通り過ぎ、最後にトライアスロン、マラソンスイミングの会場となったお台場海浜公園の仮設スタンドをチラリと目にし、私たちはようやくベイゾーンを後にしたのである。
この日の歩数は1万5476歩。そういえば去年、近藤カメラマンと「夏の間、さすがにしぶさんぽは無理ですね」と話していたことをようやく思い出した。来年、真夏は避けようと心に誓ったのだった。
おわり
2021年8月公開