ジークスター東京のオーナーはITコンサルティング大手のフューチャー株式会社だ。フューチャー・グループであるライブリッツ株式会社はスポーツにおけるITの活用に取り組んでいてプロ野球などで大きな成果を上げている。新しいスタイルのクラブチームを目指すジークスターはライブリッツ社のバックアップを受け、最新のITを駆使して本格的にデータ分析に取り組んでいる。ハンドボール界で初めての取り組みも多い。
アナリストの荒川哲史。横地監督を支える
ITを活用 参謀はなんと元バスケ分析担当
――新規参入のリーグがはじまって8試合を終えました。ITの活用がどうなっているのか教えてください。
横地 普段のトレーニングや試合における映像とスコアを組み合わせたデータ分析はひとつの形になってきました。今は次のステップ、パフォーマンスの分析、体の動きを解析するほうにシフトしています。ウェアラブル端末をつけて心拍数を取ったり、体にかかる負荷を計算したりします。
――そうしたデータを実際の試合で活用するのは難しいですか?
横地 試合中となると難しいところはあります。私はゲームを見ていますから、iPadを持って頻繁にデータを見ることはできません。そこでいまは観客席にいるアナリストの荒川哲史と電話をつないで、たとえば「いまのプレーを後から見せてくれ」と伝える。そしてハーフタイムにそのプレーの映像とデータを選手に見せながら指示を与える、ということをしています。本当は試合中にそれができるといいと一番いいんですけどね。
――それができるとかなり効果的だと思います。
横地 あとは上(観客席)からの情報をもっとほしいと要望を出しています。私が平面で見ているよりも上から見ているほうが分かることもある。だから普段から荒川とはミーティングを何度も重ねて、チームで目指すプレーを共有して、私と同じ目線でゲームが見られるようにしてもらっています。面白いことに荒川はハンドボールの経験者じゃないんですよ。
――えっ!、それでハンドボールのコーチ目線になれるんですか?
横地 荒川はもともとバスケットボール日本代表のアナリストをやっていた人間なんです。彼がすこぶる優秀でして、理解度がものすごく高くて、いまではハンドボールの理解度もかなりのレベルだと思います。
――そんなこともあるんですね。いや、驚きました。
ジークスター東京に学生日本一の中央大学から期間限定で3選手が加入すると発表されたのは11月10日のこと。日本代表選手でもある部井久アダム勇樹、U-21日本代表の中村翼、U-19日本代表の蔦谷大雅の3人だ。大学生が日本リーグでプレーするのは特別なケースを除くと初めてだという。
ハーフタイムに出す指示も試合の行方を左右する
チームに大学生が加入、他ができないことをやる!
――11月から中央大学の3選手がジークスター東京でプレーすることが決まりました。いきさつを教えていただけますか?
横地 もともと中央大学さんからきた話なんです。秋のインカレが新型コロナウイルスの影響でなくなって、大学生は来年の4、5月まで試合がない。そこで監督さんが実戦経験を積ませるために日本リーグでプレーできないかとうちに話がきました。
――話を聞いていかがでしたか?
横地 もともと私はそういう大学生がいたらどんどん受け入れたいと考えていたんです。学生のレベルであきたらない選手がいたら日本リーグでプレーすればいい。うちはクラブチームだからそういうことができます。盛り上がるんならどんどんやっちゃえ、という感じですね。
――実業団チームではそうはいかないのですか?
横地 やはりちゃんと社員の選手を出さなければならないでしょう。これまでは就職が内定している大学4年生がインカレを終え、内定しているチームでリーグ戦に出場することはありました。うちにくる中央大の選手は2、3年生ですからこれは初めてのケースとなります。
――大学生は戦力的にプラスになるとお考えですか?
横地 うちのチーム状況を考えるとかなりのプラスです。日本代表のアダムはもちろん、中村も蔦谷も即戦力ですね。大いに期待しています。
新戦力が加わりリーグ戦は怒濤の後半戦へ
――そうなると他の選手たちもうかうかしていられませんね。
横地 そこなんですよ。そこで周りの選手たちがどう感じるのか。「大学生になんか負けたくない」と思って発奮するのか。「やっぱり勝てない」と思ってしまうのか。3人は間違いなく卒業すれば日本リーグに入る選手だと思います。つまり日本リーグにはこういう大学生が入ってくる。だから強くなる。チームで生き残るためには、彼らのような新戦力との戦いにも勝たなければならないんですよ。
――選手たちにとっても、チームにとってもこれからが正念場ですね。
横地 そうですね。大学生3人は3月までですが、私は使えると思えばためらわずに彼らを使います。ここは実力の世界です。一生懸命やった選手の中から実力のある選手が試合に出る。その中で結果を出した人間が日本代表に選ばれる。そういう世界に私たちはいるということです。
――分かりました。レギュラーシーズンは2月いっぱいまで、プレーオフは3月に開催されますから、まだまだ先は長いですね。見ている者の胸が熱くなるような試合を期待しています!
ジークスター東京物語 横地康介監督編 おわり
2020年11月公開