東京エクセレンス 再びB3で迎えた2020-21シーズン
バスケットボールB3の東京エクセレンス、石田剛規ヘッドコーチ(HC)はシーズンが終わって間もないというのに慌ただしい日々を送っていた。6月半ばのことだ。忙しいのもそのはずで、昨シーズンまでGMを兼務していたキャプテンの宮田諭がGMを退き、石田が来季から新たにアシスタントGMを兼務し、運営会社社長の向井昇がGMを務めることになったからだった。
石田剛規ヘッドコーチ
「HCだけだとシーズンオフはゆっくりできるんですけど、GM業務が入って、今が一番忙しいですね。HCは与えられたチームをどう強くするかが仕事ですが、GMとなるとクラブの2、3年後を見据えてチームを編成します。どうやって今いる選手を伸ばすのか、外国籍選手を含めてだれを獲得するのか。チーム編成はGMの大事な仕事の一つです」
トレーニングで個々の力を磨き、チームとしての連携を磨いて勝てるチームを作っていく。その前段階となるのがチーム編成であり、どんなメンバーがそろうかによってチーム力は大きく変ってくる。石田はB2からB3に降格して迎えた昨シーズン、あらためてそれを感じることになった。チームの要だったセンターのライアン・ステファンとジョーダン・フェイゾン、ポイントガードの丹野合気がチームを去り、別のB2のチームに移籍したのである。
石田が「B2でやれる力がある選手ならB2でやるべきだと思う」と語るように、少しでもいい条件、少しでも上位のカテゴリーでプレーすることはプロ選手であるなら当然だ。主軸が3人抜けた状況であっても、新たなメンバーを迎え入れ、勝てるチームに育てるのがHCの仕事である。
エクセレンスは2シーズン前にB3で優勝しており、そもそもB2での成績が悪かったからB3に降格したわけではない(その理由はあらためて説明する)。だから2020-21シーズンの目標を優勝に定めたのは当然だった。新たな外国籍選手を獲得し、優勝できるだけの手応えを感じていた。その結果が3位だったのである。
石田は少し悔しさをにじませながら、昨シーズンを思い起こした。
「優勝できるだけの要素はそろっていたと思いますけど、それをうまく組み合わせることができなかった。勝つべき試合を落としてしまったし、準備の甘さが途中で出てしまった。コーチとしては反省ばかりのシーズンでしたね」
これはエクセレンスだけの話ではないのだが、コロナ禍という荒波での航海は予想以上に大変だったことも書き記しておきたい。そもそもスケジュールがなかなか決まらなかった。昇降格に関するルールが発表されたのはシーズンが開幕した1月半ばだった。コロナ禍によるクラブへの影響を考慮し、今シーズンは入れ替え戦がなく、2020-21と2021-22シーズンの上位チームがそのあとの入れ替え戦に出場できる――というのがその内容だった。
エクセレンスは例年と比べ、数ヶ月遅れの2021年1月にシーズン開幕を迎えた。そしていきなり開幕節の2試合が中止に追い込まれる。対戦相手チームに新型コロナウイルス感染者が出たのである。
15連勝から失速、最終順位は3位
こうして2週間遅れとなった開幕節はベルテックス静岡に2連敗。最悪のスタートを切りながらもその後は立て直し、順調に白星を重ねてチームは波に乗ったかに見えた。2月から4月にかけては15連勝をマーク。ムードは決して悪くなかった。
そして4月17日、愛知県に乗り込み。最終的に優勝チームとなるアイシン・エィ・ダブリュ アレイオンズ安城と対戦する。これが一つのターニングポイントになった。
「現地に行ったら相手チームにコロナの感染者が出て前日練習ができないことが分かり、土曜日に急に試合をするという形になりました。この試合は勝てたのですが、翌日の試合では樋口大倫がけがをしてしまい黒星。なかなか難しい1週間となりました。ここからですね、負けが多くなっていったのは」
パワーフォワードの樋口の離脱で一気にチームが下降線を描いたようにも思える。しかし石田によれば、樋口の離脱だけが低迷にいたった理由ではないという。
「15連勝している間にもディフェンスに綻びが出てきていた。それを見過ごしてしまっていた。より上位チームと対戦するときに、外国籍選手に頼った戦いをしていて、そこをつぶされたときに次のもう一手が用意できていなかった。その2つが重なって、そのあとの失速につながりました。連勝している間に改善できれば良かったんですけど、なかなかできなかったんです」
黒星が一つ増えるごとに、優勝の二文字は遠のいていく。5月28、29日の最終節を迎える時点で優勝の可能性は消滅していた。ただし、対戦相手は2位のトライフープ岡山であり、2連勝すれば2位という状況だった。
優勝がなくなったからといってチームの士気が落ちていたわけではない。なぜならこの最終節は8年間ホームアリーナにしていた小豆沢体育館での最終戦。「ありがとう、小豆沢」と銘打ったメモリアルマッチだったのである。
2021年7月公開