——それではお待ちかね、芦田さんのお気に入りファッションアイテムをお伺いさせてください!まず何からいきましょう?
芦田 僕が今のファッションスタイルを好きになったことも考えるとスニーカーが1番話しやすいので、そっちから紹介したいと思います。
——よろしくおねがいします!
芦田 一番最初に紹介するのはこのモデルですね。【NIKE AIR JORDAN11 Low “Concord”】(以下:AJ11)です。
——1発目からすごい大玉が!アウトソールの黄ばみが歴史を物語っていますね。
芦田 これが、僕がスニーカーフリークになるきっかけになった一足なんです。初めて朝から並んで買った「レアスニーカー」ですね。(発売が2014年5月なので)今からもう5-6年以上前でしょうか。
——そうでしたね。これは名作だと思います。芦田さんはもともとスニーカーが好きだったんですか?
芦田 はい。最初に好きになったきっかけは、ウィル・スミスの『アイ・ロボット』という映画(2004年公開)でした。その映画で彼がめちゃくちゃカッコよくコンバースのスニーカーを履いていたんですよ。それ以来、黒人のカルチャーに惹かれてB系の服を着るようになりました。当時は中学生だったんですが、50セント(アメリカのラッパー)がすごく流行っていたので、真似をしてオーバーサイズの服をいっぱい着ていましたね。
——中学生の頃からスニーカー含め、ストリートファッションには興味を持っていたんですね。
芦田 そうです。ただ、学生の頃はお金が無かったので、あまり高いスニーカーが履けませんでした。それからプロになって(ゆとりが出て)、初めて一目惚れしたのがAJ11だったんです。発売情報も調べて、早朝から上野の「ミタスニーカーズ」に初めて並びに行きました。
——すごい!本物のスニーカーフリークの動き方です!(笑)
芦田 でも行った時には既にたくさんの人が並んでて、圧倒されました(笑)こんなに人が並ぶものなのかと。そうして列に入っていたら途中で先着順だとアナウンスが出て、「あ、無理じゃん」となりました。そこから急いで原宿へ移動して、抽選販売に参加したんです。そこも300人くらいいたんですが、運良く15番を引くことができて買えました。
競技生活とジョーダンの素敵な関係。
——運を引き寄せる決断力がすごいですね!このモデルに一目惚れとおっしゃっていましたが、ジョーダンブランドというのもポイントでしたか?
芦田 はい、それは大きな理由のひとつでした。でもマイケル・ジョーダンが好きとか、NBAを観ていたからと言うわけではないんです。
——といいますと!?
芦田 ロイ・ジョーンズJrという有名なボクサーがいるんですけど、彼はボクサーなのにジョーダンブランドがスポンサーに付いていたんです。それでジョーダンはカッコいいなと、好きになりました。ちゃんと格闘技が絡んでいるんです。
——格闘家の芦田さんならではのきっかけなんですね。ちなみにAJ11を買ったことと、プロとしての競技生活は何か影響はありましたか?
芦田 ありました。ちょうどこれを買った後にシンガポールで開催される大きな大会のオファーが来たんです。もちろんちゃんと現地に履いていきました(笑)
——強運でスニーカーを引き寄せ、そしてビッグマッチも決まったんですね!
芦田 初めての海外遠征で、相手選手もすごく強くて、いい経験になりました。あの試合がなかったら今の僕はないと思っていますね。
※芦田選手は、2014年8月にシンガポールで開催された「Rebel FC」に出場。当時UFCやWECで活躍していたトップファイターのミゲール・トーレスと対戦し、惜しくもスプリット判定で敗れたものの、その互角以上の戦いぶりで一気に評価を高めました。
——そんな競技生活の大事な瞬間とともにあったスニーカーがAJ11だったんですね。
芦田 そうですね。しかもその試合(シンガポールでのミゲール・トーレス戦)から「reversaL(リバーサル)」がスポンサーに付いてくださったんです。色んな意味で、大きな試合でした。
さらなるお気に入りスニーカーとは!?
——オープニングからすごい一足でした!それでは二足目の紹介もお願いします。
芦田 はい、次はこれですね。【NIKE AIR FOAMPOSITE ONE “Snakeskin”】(以下:ポジット)です。
——ジョーダンの流れで次はポジットですか!これは新鮮ですね。
芦田 最初のAJ11以降、ずっとジョーダンシリーズばかり買っていたんです。でもある時にポジットを履く機会があって、そこでその履き心地に惚れてしまって。そこから買い漁るようになりました。
——履き心地はもちろんながら、その見た目もファンの多い一足ですよね。
芦田 地味なものから派手なものまでバリエーションあるのでいいですよね。でもやっぱり履き心地が1番好きです。例えば試合会場でもそうなんですが、僕は普段から走り回ることが多いので、すごくそこは重視してますね。
——格闘家としての日常にマッチしている一足なんですね。ちなみに数々のポジットを所有している中で、この柄をチョイスした理由はなんですか?
芦田 格闘技の服って結構地味なものがけっこう多いんです。なのでポジットを合わせると地味な中でも特有の存在感が出るんです。特にこれはガッツリとパイソン柄なで目立つので、よく履いているお気に入りなんです。
——なるほど。やはりこちらのお気に入りも、格闘家としての芦田さんを彩る一足ですね。どちらもバッシュというのが面白いです。
芦田 実はそうなるのもちょっと嫌だったので、最後のお気に入りはバッシュじゃないものをチョイスしたんですよ(笑) これです。
——2016年の【NIKE AIR JORDAN SKYHIGH】(以下:スカイハイ)ですね!
芦田 手持ちのスニーカーが全部ガッツリとしたバッシュだと、フォーマルやスマートカジュアルな格好をするときに困るなと思って買いました。これ以外のスニーカーは全部バッシュですけどね(笑)
——(爆笑)
芦田 最初はナイキから離れてコンバースを買おうとも思っていたんです。でもこれだったらギリギリ大丈夫かなと。ゴツく無いですし、カジュアル過ぎるわけでもないので。実際にスキニージーンズのような細身のシルエットにも合わせることができました。シャツを羽織るようなシチュエーションで選ぶアイテムですね。
——競技生活の中では、時として少しカチッとした装いが必要な時もありますよね。
芦田 そうなんです。仕事上でも色んな所へ行くこともありますから、やはりそうしたタイミングはあります。そんなときに履いていけるんだけど、僕の好み(ジョーダン)が入っているという、妥協はしないという意味もありますね。
——すごく芦田さんのキャラクターが伝わってくる、3足のチョイスでした。それでは後半のラウンドは、アパレルへいきましょうか!
所有するスニーカーは数十足にものぼる芦田さん。
勝とうが、負けようが、試合ごとには必ずスニーカーを購入するのだそう。その靴に対する思い入れができるから、と笑いながら理由を説明してくれた。
どのスニーカーのストーリーを聞いても、そこには必ず格闘家芦田崇宏としての顔が存在している。これこそが、アスリートにとってのファション、そのアイテムを紐解いていく醍醐味なのだ。
取材後日に、紹介したモデルの写真を芦田さん自身が改めて撮影して送ってくれた。それぞれ最も輝いて見える角度で撮られていて、溢れんばかりのスニーカー愛を感じる。結びにそんな写真を笑覧いただき、続くアパレル編もお楽しみいただけたら。
2020年6月掲載