ダンクのリリースだけでも目一杯でしたが、ナイキの主力商品はそれだけではありません。むしろ、ダンクはあくまでも「先発三本柱の一角」のようなものです。
桑田、斎藤、槇原
誰が出ても勝つ、最強の先発三本柱。往年のプロ野球ファンの方ならご存知と思いますが、例えるならナイキも本当にそれに近いものです。ダンク、エア・ジョーダン、そしてNIKE SB。今はこのラインから繰り出されるモデルは、とにかく勝ちます。
エア・ジョーダンの攻勢
まずは、エア・ジョーダンシリーズのリリースからご紹介しましょう。この『恋するスニーカー』シリーズでもたびたび登場してきた、ナイキの代表作。言わずもがな、NBAのスーパーレジェンドであるマイケル・ジョーダンのシグネイチャーシリーズです。
昨年春に、Netflixで『ラストダンス』というマイケルのドキュメンタリー番組が配信され、日本のみならず世界中で多くの方が視聴しました。そんな追い風も相まって、当時はエア・ジョーダンシリーズのモデルがかなり高騰していたのですが、年末にかけてその勢いは小康状態に。
今年はどうなることやらと思っていたのですが、そんな心配は全く無用でした。
①NIKE AIR JORDAN 6 RETRO “CARMINE”
これは、マイケル・ジョーダンが初めてNBAを制覇した1990-1991シーズンに着用していた、「エア・ジョーダン6」。そんなメモリアルイヤーのモデルということもあり、シリーズの中でも屈指の人気を誇ります。カラーリングもオリジナルから新色まで様々にリリースされてきましたが、今回発売となった”CARMINE(カーマイン)”というモデルはシリーズ最高傑作の一つとの呼び声も高い、当時のオリジナルカラー。
記憶に新しい2019年には、カーマインと同じくらいの人気を誇る”NIKE AIR JORDAN 6 RETRO OG BLACK/INFRARED(インフラレッド)”というモデルが復刻されています。ただ、この2021年2月に復刻発売されたカーマインは、私にとってはそれを遥かに上回るインパクトでした。
その理由は2つあります。1つは、復刻回数の少なさ。カーマインは、2008年と2014年とこれまでたった2回しか復刻されていません(ちなみに先程のインフラレッドは3回)。そしてもう1つは、完全にOG(オリジナル)仕様であること。実は過去2回の復刻は、いずれも“ジャンプマン”というジョーダンのアイコンロゴがヒールに入っています。今回の復刻モデルは、写真にもある通り「NIKE AIR」の文字ロゴが入った完全な当時の仕様。まさに生誕30周年を迎えた2021年のリリースにふさわしい作りだったのです。
②NIKE AIR JORDAN 1 RETRO HIGH OG “UNIVERSITY BLUE”
エア・ジョーダン6で盛り上がった2月でしたが、もちろん初代モデルであるエア・ジョーダン1もしっかりリリースされてきました。私は買うことが出来ませんでしたが、1985年当時の仕様で復刻された「AIR JORDAN 1 HIGH ’85 “NEUTRAL GRAY”」が発売に。取引価格は3月時点で定価の3~4倍になっています。恐るべし、エア・ジョーダン1。
続く3月にリリースされたのが、こちらのモデル。鮮やかなパウダーブルー配色のエア・ジョーダン1です。こちらも発売当日から即完売が相次ぎ、セカンドマーケットの流通額も4万円以上となっていました(定価は約1.9万円)。
そんな価格高騰の大きな要因となったのが、色でした。コードネームにもある「UNIVERSITY BLUE」というカラーは、マイケル・ジョーダンの出身校でもあるノースカロライナ大学のスクールカラーに由来していると言われています。
これまでも、エア・ジョーダンシリーズではたびたびこのカラーが配されたモデルがリリースされ、毎回大きな反響を呼びました。ジョーダンのアイデンティティがより強く込められている印象ですし、ファンにとってもそこが魅力なのでしょう。今回はそんなノースカロライナ大学のライトブルーがふんだんに使われた一足とあって、事前に情報が出た段階からファンの間では関心が寄せられていました。
恒例コラボから生まれた、上半期のベストモデル。
相変わらず好調をキープするエア・ジョーダンシリーズでしたが、実は上半期最大の人気モデルではありません。もっと多くの人が欲しいと願い、もっと高い価格で取引されているモデルがあるのです。
③SUPREME×NIKE SB DUNK LOW OG QS “CROC SKIN GOLD STARS”
その一足が、こちら。ストリートブランド「supreme(シュプリーム)」とNIKE SBがコラボレーションしたダンクです。第一話で紹介したナイキのダンクとは異なり、こちらはスケートボードラインである「NIKE SB」から展開されたスケートボード用のダンク。ソールにはズームエアが入り、シュータンも分厚くクッションのようになっているのが特徴です。
先にお伝えします。
本モデル、定価12,000円に対して取引価格は130,000円前後となっています。書いている手も震えそうですが、なんと定価の10倍以上に跳ねているという事態なのです。
一体なぜこれほどまでに人気を博しているのか。その理由は、ナイキとシュプリームのパートナーシップヒストリーにあります。実は両社は、過去15年以上前から毎年のようにコラボレーションし、アパレルやスニーカーなどを世に送り出してきました。世界的スポーツブランドのナイキ、世界的ストリートブランドのシュプリーム、そんな2大巨頭が手を組むわけですから、話題にならないはずがありません。
そしてこのコラボレーションから生まれた”至高の名作”と呼ばれているのが、2003年に発売されたダンクのハイカットモデル(NIKE SB)。サイドには金色の星が散りばめられ、アッパーには豪華絢爛なクロコダイルの型押しレザーが使われた一足は、2021年たった今ではなんと70万円ほどの取引価格になっているのです。
今回リリースされたモデルは、そんな至高の名作のディテールをしっかり再現したローカット版という位置づけでした。そのため、当時買うことが出来なかったファンも巻き込んだお祭り騒ぎとなったのでした。
30周年に完全オリジナル仕様で復活した、エア・ジョーダン6。
大学カラーを全身にまとった、新色のエア・ジョーダン1。
至高の名作がローカットに生まれ変わった、SBダンク。
今回ご紹介した3足は、すべてナイキ。でもすべて違った魅力があります。第一話のダンクと合わせただけでも、たった3ヶ月でこんなにもリリースされてきたという事実です。今年もスニーカー界は、ナイキを中心に回っていくのでしょう。
2021年3月公開