二宮 1981年公開の「キャノンボール」について、近藤さんにマニアックな視点からご指摘いただきたいのですが。
近藤 まず世界の名車が集まっています。カウンタック、フェラーリ、アストンマーチン、ロールスロイス……。
二宮 主人公のバート・レイノルズは、ポリスにつかまりにくいという考えから救急車でしたけど。まあこのレースはいかに警察の取り締まりを潜り抜けてアメリカを縦断していくかという内容ですからね。ただ女性コンビが乗るカウンタックの迫力は凄まじかった。
近藤 そこでマニアックからの視点を一つ。
二宮 お願いいたしますっ(カメラマンの高須力調に)!
近藤 空撮のテクニックが凄いと思うんです。今のようにドローンやCGもない時代。セスナか何かでカウンタックに並走しながら撮影していて、カメラマンの高度な技術が試されている。そこをしっかりとカウンタックの迫力を伝えていて、かつ、違う角度からも撮っていて相当にこだわっています。
二宮 まさにカメラマン視点ですね。
近藤 撮影以外にも結構、驚くようなシーンありますよ。電線がそこにあるのに、セスナをうまく離着陸させたり、カースタントと火薬を仕込んだ爆破のタイミングが完璧だったり、80年代映画の特徴である単純明快だけど、オカネは掛かっている感が半端ないですね。
二宮 西部警察がどれだけオカネが掛かったのか、よく分かります。基本的にカースタント系って好きな人は多いのかもしれない(笑)。
近藤 スーパーカーもそうですよね。カウンタックのガルウイングはやっぱり最高です。ミニカーを持っていましたし。
「LP400」「LP500」とか。
二宮 40年前の映画ですけど、時代のギャップを感じることもできましたね。
近藤 たとえばどういったことですか?
二宮 普通にバドワイザーとかシャンパンとかお酒飲みながら運転していて。いやいや、絶対ダメでしょ。そんな飲酒運転を大目に見る時代があったのか、と。
近藤 シートベルトもそうですよね。「スピードを出すならちゃんと着けておけ」みたいな感じですもんね。
二宮 続いて「2」の話も少々。バート・レイノルズ、サミー・デイビィス・ジュニア、ジャッキー・チェンらは引き続き登場します。
近藤 実はキャノンボールの大会自体、2年に1度でその年はなかった。「1」で負けたアラブのファラフェル王家の王子が、オカネ出すから今年もやりましょうということになって参加者を募ったわけです。
二宮 基本的なタッチは「1」と同じだったかな、と。小学生の近藤少年は、どんなシーンが印象に残りました?
近藤 やっぱりジャッキーのアクションシーンですかね。とにかくジャッキー好きでしたから。あとジャッキーが乗る日本車のハイテクがもっと進んでいて、潜水もできる。わざとオイルが漏れるようにしてポリスに死んだと思わせるなど、ちょっとルパン三世っぽいところもありました。
二宮 相棒はマイケル・ホイじゃないんですよね。
近藤 身長2mくらいある巨漢の男とのデコボココンビでした。二宮さんは何か印象に残ったシーンあります?
二宮 残念ながらパッと思い出せないんですよね。フランク・シナトラがカメオ出演で出たことが話題になったことは覚えているけど。
「2」でのジャッキーチームのマシン、「三菱スタリオン」。
近藤 「2」は最低評価の作品に贈られる不名誉なゴールデンラズベリー賞に、何部門かでノミネートされているんですよ。
二宮 だから「2」で終わったのか。
近藤 いや、実は「3」があるんです。僕も観てはいないんですけど。
二宮 まじ? それは知らなかった。
近藤 正式名称は「スピードゾーン」。キャストも全部入れ替わっているんですけど、テイストは踏襲されているようです。日本でのタイトルは「キャノンボール3 新しき挑戦者たち」。一応、後継作品として認められています。お決まりのカメオ出演にはカール・ルイスが登場しているとか。
二宮 最後にまだ何かマニアック視点、何かあります?
近藤 あります。香港映画のジャッキー作品って、エンドロールにNG集を出すじゃないですか。
二宮 このアクションシーンやっぱり難しかったんだなとか、こういうふうに撮っているんだとか、ちょっとした発見の場ですよね。トクした気分になります。
近藤 「1」も「2も」エンドロールが、まさにNG集だったんですよ。ここはジャッキーや香港の映画会社の意向が働いたんじゃないかと思いました。
二宮 「キャノンボール」がジャッキーのそれ以降の作品や、後のカーアクション映画に影響があったことは確か。かつ日本でも「プロレスキャノンボール」や「パチンコキャノンボール」などインスピレーションを受けた作品がいろいろと登場しています。それほどインパクトがあった作品であったということですよね。
近藤 キャノンボールってそもそもどういう意味がご存知ですか?
二宮 いや、単語の意味は分かるとしても、何となくインパクトあるフレーズだなってくらいで。
近藤 加速性能に優れているものに、その愛称がつけられていまして。特急列車とか、それこそミニ四駆とか。タレントの平子理沙さんのCDとフォトブックのタイトルが「キャノンボール」です。
二宮 マニアックやなあ。僕からすると機動戦士ガンダムのガンキャノン&ボールということで耳障りのいいフレーズです。
近藤 何ですか、それ(笑)。まあつまりはフレーズのインパクトもあって「キャノンボール」は今なお愛されている作品ということですね。
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2023年10月再公開