SPOAL

Entertainment
モータースポーツに愛を込めて 前半戦 VOL.1

ホンダの復活劇

2021年は中東のバーレーンからスタートし、すでに11戦を終えました。11戦を終えた時点での順位は

1位:ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2位:マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
3位:ランド・ノリス(マクラーレン)

という順位で前半戦を終えた。近年稀にみるメルセデス一強からレッドブルとマクラーレンの台頭が目立った前半戦であった。ハミルトンと同じメルセデスに乗るバロッテリ・ボッタスは4位であるので同じマシンを乗ったとしても個人の技量が如実に現れた結果となる。ハミルトンとフェルスタッペンのポイント差は8点。1レースで覆されてしまうほどの僅差となっており後半戦も目が離せない。

現在、2位に付けているフェルスタッペンの躍進はホンダエンジンの躍進といっても過言ではないだろう。今年でF1から離れてしまうホンダはエンジン開発に全力を注いだ。その結果、前半戦を2位で終えており結果が結びついた形だ。

F1参戦第4期となるホンダは2015年にマクラーレンへエンジン供給をすることで再度F1に復帰。しかし、2017年でマクラーレンと決別をしている。80年代、90年代に最強といわれたマクラーレン・ホンダの復活と期待されたのだが、マクラーレンの狭いシャシーに無理やり収めることを余儀なくされたホンダはエンジンを小さく作らなければならなかった。エンジンを小さく作らなければならないということはエンジンの冷却性能を落とさなければならない。つまり、冷却性能が低いエンジンは出力を強めることもできずパワー(馬力)が弱いエンジンとなってしまった。第4期の参戦当初はエンジンブローが多発。何度もエンジンから火を吹く(壊れる)結果になってしまった。ドライバーのフェルナンド・アロンソからはシャシーは良いのにエンジンが駄目だとメディアに愚痴を言う始末。レース中の無線でも「パワー!パワー!下位カテゴリーのエンジンだ!」とホンダを馬鹿にしていたのは記憶に新しい。そんなアロンソは結局、F1を引退しインディーなど他のレースに活躍の場を移すことになる。アロンソはF1に今年から復帰しているのだがやはり歳には敵わない。若いドライバーの台頭でかつては最強と言われたアロンソの面影は少しも見られない。

そんな苦汁を飲んだホンダは、2017年をもってマクラーレンと決別。2018年からトロ・ロッソ(現アルファタウリF1チームでありレッドブルの弟分であるチーム)と組むことに。同じくしてレッドブルは当時使用していたルノーエンジンの弱さを露呈。2019年はホンダかルノーのどちらかのエンジンを使用するとニュースが駆け巡った。結局、弟分のトロ・ロッソF1チームの成績が好調であったこともありホンダが内定。2019年からホンダはレッドブルとトロ・ロッソの2チームエンジンを供給することとなる。

そして、2019年F1シーズン第9戦目のオーストリアGPで見事優勝。オーストリアはレッドブルの出身国。そこでレッドブル・ホンダとして初優勝。2019年は3勝でシーズンを終えた。マクラーレンから離れて2年目。3勝を取るまで成長したホンダエンジンは翌2020年シーズンはレッドブル2勝、トロ・ロッソ1勝の3勝でシーズンを終えている。2020年はメルセデスエンジンが絶好調。結局17戦13勝とメルセデスは圧巻のシーズンをみせた。

 

今年2021年F1シーズン、ホンダ最後の年。ホンダは環境問題からエンジン開発を辞めると宣言。今年をもってF1から引退することとなる。ホンダは有終の美を飾ることができるのかとそんな期待を込めた初戦のバーレーンGPでは惜しくも優勝はできなかったが続く第二戦のエミリアGPでは見事優勝。シーズン序盤で早くも1勝をあげ戦えるマシンだということを証明してみせた。しかし、第三戦・第四戦はハミルトン(メルセデス)が勝利をしメルセデスもまだまだ負けてはいないという王者の風格を見せつける。

しかし流れが変わる。レッドブルは第五戦目のモナコGPから第九戦目のオーストリアGPまで圧巻の5連勝。もともと定評のあったレッドブルのシャシーにホンダのエンジンがマッチしてきた結果であった。まさに「レッドブル。翼をさずける。」ではなく「ホンダ。翼をさずける。」となった前半戦であった。

ここで後半戦を占いたい。残すレースは12レースである。そのうちメルセデスパワーが炸裂するであろうストレートが多いコースはベルギー、イタリア、メキシコ、アブダビの4戦。残りの8戦は中低速コースが主流であるのでレッドブルに適したコースでありここで優勝を取ることができればメルセデスを押しのけて総合優勝が可能であると予想する。

ホンダがさずけた翼は見事表彰台の頂点へと導くことができるのか。
イカロスの翼のように途中で失墜してしまうのか。

後半12戦も目が離せない。

2021年8月公開

New Arrival

すべて見る
Special
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

女子ラグビーワールドカップ開幕前に行なった日本ラグビーフットボール協会理事、香川あかねDirector of Women’s Rugbyへのインタビュー後編。日本女子ラグビーのこれまでの歩みとこれからの未来は――。 2025年8月公開

記事を読む
Special
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

女子ラグビーワールドカップ2025イングランド大会が開幕した。マイナースポーツの色合いが強かった女子ラグビーは日本でも徐々に盛り上がりを見せ、風が吹き始めている。その背景にあるものは何か。ワールドカップ開幕前、日本ラグビーフットボール協会理事を務める香川あかねDirector of Women’s Rugbyに、二宮寿朗SPOAL編集長が話を聞いた。 2025年8月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「Viaje con pro wrestling NOAH」好評連載第24弾!2025.08.16 後楽園ホールで行われた「STAR NAVIGATION PREMIUM 2025」の模様をお届け!2025年8月公開

記事を読む
Discussion
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

2025年3月に上梓された「ミシャ自伝」(ベースボール・マガジン社、ミハイロ・ペトロヴィッチ著)の構成者、佐藤景さんへのインタビューも後編に突入します。ミシャさんは現役時代、オーストリアのシュトルム・グラーツで人気選手でした。一方、ミシャさんが引退後に同クラブで指揮を執ったのがあのイビチャ・オシムさん。ミシャさんにとってその後の運命にも影響する大きな出会いが待っていました。 2025年8月公開

記事を読む
Discussion
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

今回の「SPOALの本棚」は2025年3月に上梓された「ミシャ自伝」(ベースボール・マガジン社、ミハイロ・ペトロヴィッチ著)をピックアップします。Jリーグで実に19年間も指揮を執り、歴代2位となるJ1リーグ戦監督通算試合数の594試合を誇るミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が自らの半生を振り返る初の自伝となります。構成者(本では編者)の「サッカーマガジン」の元編集長、佐藤景さんにインタビューしました。 2025年8月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「Viaje con pro wrestling NOAH」好評連載第23弾!2025.07.20 後楽園ホールで行われた「LINEヤフーpresentsプロレスリング・ノア25周年記念大会 NEW DEPARTURE day2」の模様をお届け!2025年7月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

ホンダの復活劇 2021年は中東のバーレーンからスタートし、すでに11戦を終えました。11戦を終えた時点での順 […]

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

アジア最終予選の最後の舞台は雨の吹田。インドネシアを迎えての一戦でした。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

アジア最終予選の最後の舞台は雨の吹田。インドネシアを迎えての一戦でした。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

カメラマン近藤によるボクシングフォトギャラリー第8弾!「Road to the RING〜第8章〜2025.6.8 有明コロシアム」vol.02はWBC世界バンタム級王者中谷潤人vs IBF世界バンタム級王者西田凌佑!2025年6月公開

記事を読む
Prev
Next

同じジャンルのコンテンツ

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

今回はパリオリンピックにちなんでフランスにゆかりのある東京日仏学院を最初に目的地に選んで散歩をスタート。偶然見つけた“サムライ施設”に立ち寄ったあとは、神楽坂から早稲田へ足を伸ばし、スポーツとまた出会う。炎天下の東京を歩き続けたSeason17――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

スポーツを求めて街を歩く「しぶさんぽ」も17回目を迎えた。今回はパリオリンピック開幕にちなみ、フランスとの接点を求めて向かった先は神楽坂。長く日本とフランスの架け橋となってきた東京日仏学院の所在地であり、この地域に住むフランス人も多いとか。日本文学の匂いも感じながら、風情漂う街を歩き始めた。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
高須力

SPOALカメラマン

高須力

3大会ぶりの優勝が期待されたアジアカップに挑んだサムライブルーが直面したのはアジアと世界のギャップでした。髙須カメラマンが撮影した準々決勝のイラン戦の写真をご覧ください。

高須力

SPOALカメラマン

高須力

記事を読む
高須力

SPOALカメラマン

高須力

3大会ぶりの優勝が期待されたアジアカップに挑んだサムライブルーが直面したのはアジアと世界のギャップでした。髙須カメラマンが撮影した決勝トーナメント1回戦バーレーン戦の写真をご覧ください。

高須力

SPOALカメラマン

高須力

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

全世界待望のスポーツイベント、NFLスーパーボウルがいよいよ2月11日(現地時間)に開催されます。今回のマニアックモノガタリはそのスーパーボウルを5度制覇した「サンフランシスコ・49ers」をご紹介。さあマニアックの扉を開きましょう。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

マニアックモノガタリ、アメリカンフットボール編第2弾。今回の舞台は鉄鋼の街として有名なペンシルベニア州ピッツバーグ。さあマニアックの扉を開きましょう!2023年12月公開。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森でホッケーの聖地を訪れ、そのあとはいざ平和島へ。ギャンブルにどっぷり(?)浸かったあとはただただ歩き続ける。大井・平和島かいわいのスポーツ施設の充実ぶりに目を見張った。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

寒さが身にしみ始めた11月下旬、しぶさんぽSeason16の舞台に選んだのは大井・平和島。大井といえば大井競馬場が真っ先に思い浮かぶが、足を運んでみるとほかにもスポーツとの出会いがたくさんあった――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「エンタメ大百科」×「マニアックモノガタリ」第3弾のテーマは映画「クールランニング」です。ジャマイカのボブスレー代表が1988年カルガリー冬季オリンピックに出場した出来事をベースに、彼らの起こした奇跡をコメディタッチで描いた作品。マニアック男・近藤と、私、二宮が再び熱く語り合います!※一部ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年11月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

マニアックモノガタリ、アメリカンフットボール編の舞台はテキサス州ヒューストン。時の波間に消えたあるチームを、テキサス州の歴史と共にご紹介。さあマニアックの扉を開きましょう。2023年10月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「エンタメ大百科」×「マニアックモノガタリ」のコラボレーション第2弾は、映画「キャノンボール」。40年前のカーアクション映画を熱く語り合います!※一部ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年10月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

SPOALの企画「エンタメ大百科」と「マニアックモノガタリ」のコラボ。テーマは映画ロッキーシリーズ。モノではありませんが、この作品を心の大切な宝モノにしている近藤俊哉と私、二宮寿朗がエイドリアーン!とロッキー愛を叫びながら、語り合います!※ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年10月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

SPOALディレクターの石井が発信するeSports情報。今回は現在のeSports大会などを紹介していこう。

石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

記事を読む
石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

SPOALディレクターの石井はF1以外にも趣味がある。それはゲーム。ゲーマー自身から見たeSportsの発展と展望を語っていきたい。

石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

粘着テープじゃないけれど、カセットテープにビデオテープ。あれ?テープってもしかして過去の物?いえいえ、パーマセルテープは違います。生涯現役、永遠の先発ローテーション。今回はより細かい使用方法や、緊急事態での対処方法もご紹介!またまたマニアックの扉を開きましょう。2023年4月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

好評連載「マニアックモノガタリ」今回は写真、映像業界なら誰でも知っている『粘着テープ』にスポットライトを当ててみたいと思います。裏方中の裏方。キングオブ小道具。その便利さに誰も異議を唱える人はいないかと。さあ、マニアックの扉を開きましょう!2023年4月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

国民栄誉賞にも輝いた登山家にして冒険家、植村直己さんの冒険舘をあとにしたSPOALの渋谷淳と近藤俊哉は進路をいざ北に取った。次なる目的地はトップアスリートが汗を流す味の素ナショナルトレーニングセンターだ――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

国民栄誉賞にも輝いた登山家にして冒険家、植村直己さんの冒険舘をあとにしたSPOALの渋谷淳と近藤俊哉は進路をいざ北に取った。次なる目的地はトップアスリートが汗を流す味の素ナショナルトレーニングセンターだ――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

今年はイーグルスvsチーフス!そうです、第57回スーパーボウルが迫ってきました。今回のマニアックモノガタリは、NFLのトップを決める戦いを都市伝説と共に!さあ、マニアックの扉を開きましょう。2023年2月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「リフレッシュしていますか?」日々の戦いに疲れた企業戦士。そんな彼らの休日の過ごし方ではなく、充電池についてのお話。カメラマンのこだわりギアシリーズ第二弾。カメラだけでなく日々の生活でもお世話になりっぱなしの「電池」について。2023年1月公開。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む