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SPOALの本棚 特別編 『ベイスターズ再建録』著者 二宮寿朗インタビュー VOL.1

――二宮さん、書籍『ベイスターズ再建録』発売おめでとうございます!はじめにどうしてもお伺いしたいことがありまして、なぜ今回は「野球」をテーマにされたのでしょうか?競技でみると、やはりサッカーやボクシングのイメージが強かったので。

去年スポーツナビさんと原稿の打ち合わせをしていたときに、先方からこの話をいただいたんです。DeNAベイスターズが10周年ということで、この企画(『ベイスターズ再建録』)が既にあって。「二宮さん、興味ありませんか?」っていう提案をいただいたんです。

――二宮さん起点ではなく、スポーツナビさんからのお話だったんですね。

はい。『SPOAL』をやっていく中で、野球というコンテンツが僕にとってはあまり強くないこともあって、自分の幅を広げるいいチャンスだなと。多分(『SPOAL』を)やってなかったらこの話は受けてなかったかもしれません。

――なるほど。それはまた驚きです(笑)

ずっとDeNAベイスターズさんを見てきたわけじゃないですし、もっと僕よりふさわしい方がいるんじゃないかって断ってたんじゃないかな。そういう意味で『SPOAL』の存在が大きかった。あとは、コロナ禍で仕事の形態も変わってきて、これからに不安があったこともありますね。そんなこともあって、今回の話をお引き受けしたのがきっかけです。

――今回の著作は、二宮さんにとっても新しいチャレンジだったんですね。20人以上ということもありかなりの取材数だったと思うのですが、どのような苦労がありましたか?

取材を始めたのは、去年の8月からだったかな。ただ、コロナの影響で全ての人に対面で取材することはできなくて、むしろほとんどがリモート取材だったんですよ。僕は(対面で)人の目を見て、肌感覚で掴んだりしたいというタイプなので、リモートで話を聞く難しさが一番大きかったです。もちろん今回の書籍はベイスターズ公認だったので職員の方も安心して話してくれていたと思いますが、対面ではない分様子を見ながら話を聞いていたので、関係値を作る難しさもありました。

――それもまた新しいチャレンジの産みの苦しみですよね。例えばサッカー取材で関係性のある人だったら「二宮さんだから」である程度通じてしまうことじゃないですか。

いや、ほんとそう。だから「何を書きたいの?」とか「何を知りたいの?」とか思われていたんじゃないかなと。スポニチ時代に野球は触れてきましたけど、ちゃんとベイスターズの歴史を見てきたかといわれると、そこは”後追い”なんですよね。映像や資料では見てきたけど、リアルタイムで触れてきたわけじゃないから。だから今回はその事前勉強や資料の読み込みは、時間をかけましたね。

――もうひとつ僕が「新しい」と感じたことがあって。今まで二宮さんの著作は個人にクローズアップしたものが多かったじゃないですか?もちろん今回も取材自体はそうだったと思いますが、『ベイスターズ再建録』というタイトルの通り個人の話・ドラマを通じてチーム全体を描いていくという試みは今までにあまりなかったのかなと。

そうですね。確かに個人の物語を書くことが多いんですが、今回は”パズル”のような感じだったんですよね。(取材した20人の)いい物語があって、それをどう組み上げていくか。とにかく構成力が大事でした。今回は中畑清監督からは始めていますが、話を聞いた順番はバラバラなんです。時系列に合わせていくのか、それともテーマに合わせていくのか、これが一番難しかったです。ただ並べても読んでもらえないから、インパクトのあるくくり方も必要ですしね。

――今回は8つのプロジェクトという構成で、冒頭に中畑清監督、最後に三浦大輔監督という時系列でまとめられていましたね。とにかく構成と時系列の両軸がきれいに揃っている印象でした。

本当は9まで揃ってたら綺麗なんですよね、野球なので。あとは、DeNAベイスターズが10周年だったから10とか。でも編集の方と話していく中で「二宮さんが一番収まり良いところでいいですよ」と言っていただけたので、8にしました。あと中畑さんの話がでてましたけど、実は中畑さんにインタビューするまで頭の中がグチャグチャだったんですよ。

――それはなぜ?

(中畑さんに)インタビューしたのがだいたい中盤くらいだったのですが、それまでに聞いてきた話をどうやってまとめれば、どう書き出せばみんなが読んでくれるのかなと悩んでいたんです。たくさんの方から話を聞きましたけど、ベイスターズファンだって名前を知らない職員の方もいました。(物語としては面白いけど)そこから書き出したところで、みんな読んでくれるのだろうかと。

――そして中畑さんにインタビューした結果、冒頭に持ってくることを決めたんですね。

それまでにインタビューしてきた球団職員の方の話からも感じてはいましたけど、実際に話を聞いてみたら選手だけじゃなく、職員の方のマインドにも影響を与えていたことに気付かされました。中畑さんの影響力はこんなにも強いものなのかと。これは中畑さんから書き始めようと。そこからは本当にスムーズに進めることが出来ましたね。で、最初が(かつての監督)中畑さんだったら、最後は(現在の監督)三浦大輔さんだろうと。結論でいうと、中畑さんにインタビューしたことで、全てのパズルの組み合わせが見えてきたんです。

――選手だけでなく、球団職員、そして二宮さんにまで影響を与えた中畑さんはすごいですね。

僕の知り合いのスポーツ紙記者もそうですが、“キヨシファン”って多いんですよ。とにかくいいイメージがあって、中畑さんに話を聞いてみたいという気持ちはありました。それに中畑さんへのインタビューはリモートじゃなかったんです。取材はやっぱり対面のほうがいいなと思いましたが、その時僕は完全に中畑さんのパワーにやられてしまいました(笑)

――中畑さんへのインタビューが対面だったからこそ、二宮さんがパズルの組み合わせを見つけることが出来たのかもしれませんね。前半からかなり貴重なお話を聞いてしまいましたが、まだまだ聞きたいことがありますのでもう少しお付き合いください。

もちろん!

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2021年6月公開

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