ボートレースは初心者でも楽しめる
多摩川からほど近い東京都府中市のボートレース多摩川に足を運んだ私たちは競艇にチャレンジしてみることにした。前回告白したように私と近藤カメラマンは競艇は未経験だ。近藤カメラマンは競馬をたしなんでいた時期があるというが、私にいたっては競馬もほとんどやったことがない。
ボートレース多摩川の入り口にて。気合いが入ってきた!
いざ、勝負だ! と気合いを入れてみたものの、舟券の買い方すら分からないのだから情けないったらない。
とりあえずボートレース絡みのブログを検索してみると、「初心者は単勝か二連単を買いましょう」と書いてある。そうか、複雑な組み合わせは玄人さんのお楽しみで、1位を当てる単勝、1位と2位を当てる二連単なら私にもいちおう分かる。
第4レース、出走表とオッズに目を通し、どの選手にお金を賭けるか考える。う~ん、分からない。内側の選手が有利という情報をチラ見したので、1番の寺本昇平、2番の伊藤誠二を軸に二連単で8点買いをすることにした。すべて100円で賭け金の総額は800円。8点買いと通ぶってみたものの、なんてことはない。1枚のマークシートで買えるのが8点までだったのである。
さあ、予想は決まった。あとはマークシートに記入して、それを読み取る機械で舟券を買うだけなのだが…。
「え~、近藤さん、このマークシートはどこを塗りつぶせばいいのでしょうか?」
「たぶん、二連単を買いたいのならここをマークしてそれで… あれ、競艇って6艇なんでしたっけ? ああ、そうそう、そんでもってここが金額で100円賭けたいのなら…」
う~ん、どうやって記入するの?
常連とおぼしき人しかいない舟券売り場で、初心者丸出しの会話を交わすSPOAL編集部員。「たぶんそれでいいと思います」という近藤カメラマンの頼りないゴーサインを受け、額に汗をにじませた私は常連さんに白い目で見られないように人のいないスキを狙ってササッと舟券を購入した。
買えました~。
ここで少しボートレースの解説をしておこう。ボートレースは6艇で争われ、1週600メートルのコースを3週して順位を決める。レース前に展示航走といって各艇がコースに現れ、思い思いに艇を走らせる。競馬でいえばパドックのようなものか。まだ時間があるから展示航走を見て選手や艇の調子を見分ける人もいるのだろう。
しばらくするといよいよ出走ということになる。競艇の特徴はスタートだ。「よーいドン」ではなく、決められた時間内にスタートラインを通過する「フライングスタート方式」が採用されている。と、ボートレースの公式ホームページには書いてある。
あまりピンとこなかったのだが、見ているとスタートラインのはるか後方から各艇が飛び出し、だいたい同じくらいのタイミングでスタートラインを通過していた。つまり止まっている状態ではなく、思い切りスピードがついた状態でスタートを切るということだ。
渾身の8点買い 初ボートレースの結末は…
さあ、いよいよ勝負の第4レースの始まりだ。舟券を握りしめ、不安そうな表情でレースを見守る私。ブオ~ンと6艇が目の前のスタートラインを通過した! 第1コーナーで早くも2番の伊藤が先頭に立つ。ブオ~ン。伊藤を追いかけるように1番の寺本が続く。ブオ~ン、ブオ~ン。そのまま両艇は後続に抜かれることなくゴールラインを走り抜けた。
ついにスタート。自分の賭けた艇はどれだ?
結果は2番が1着、1番が2着。おおっ、当たっているじゃありませんか! 配当は560円也。800円出して560円のリターンということ。な、なんて手堅い、セコイ買い方なのか。ギャンブラーとは正反対の「危ない橋は渡らない」という性格がもろに出てしまった。せめて1点当たれば800円以上になるような買い方をしないとダメだよな~と思っていると、隣の近藤カメラマンがぼそりとつぶやいた。
「私もいちおう当たったんですけど、二連複で300円購入したので、払戻金は190円ですね」
近藤さん、あなたも勝負しない人ですね…。
それでもまあ、払戻金はあるということで機械に舟券を入れるとジャラジャラと小銭が落ちてきた。100円玉5枚と10円玉6枚で560円。なんだかこの細かい払い戻しに競艇場らしさを勝手に感じ、ボートレース多摩川をあとにしたのだった。
ボートレース場からは無料送迎バスで府中本町駅を目指した。時刻はちょうど午後1時。バスから下りてきてレース場に入る人が10数人、私たちと同じバスでレース場を去る人が10人ほど。朝から数レース楽しんでサッと切り上げる人がいれば、午後の何レースかを楽しむ人もいるということだ。ほとんどが高齢の男性だった。
府中本町駅から南武線に乗り込み多摩川を渡る。ここから南武線は東京都稲城市、神奈川県川崎市に入って終点の川崎駅まで多摩川沿いを走る。電車に揺られ、少し眠たくなってきたところで武蔵小杉駅に到着。ここで東急線に乗り越えて再び多摩川を渡り多摩川駅で下車した。
多摩川駅にいったい何があるというのだろうか? 私たちはまたバスに乗って多摩川グラウンドで下車。土手の下には野球場とサッカーグラウンドが広がっていた。なんていうことのない河川敷のグラウンドである。しかしここはかつて数々の名選手を生み出す、スター養成所のようなグラウンドだったのである。
2021年4月公開