高尾山頂で富士山を見ながらとろろそばを食す
山の頂とは気持ちのいいものである。1時間30分かけて登った山に敬意を評して看板の前で記念撮影を。疲労困憊というほどではなく、かといってダメージがまったくないわけでもなく、ほどよい疲れが心地よい。
山頂にたどりついたSPOALメンバー
山頂に突き刺さる柱には599.15メートルと刻まれていた。ところが調べて見ると、かなり昔は601.6メートルだったそうで、それが1923年の関東大震災により600.3メートルに。測量技術の進歩もあったのだろう、さらに599.0→599.15→599.30メートルと変化していった。一番新しい数字は2014年のものだからかなり信頼できそうだ。
高尾山口駅の標高が191メートルなので、登った高さは599-191=408メートルということになる。高さとスポーツといえば、お正月の風物詩、関東大学箱根駅伝だ。5区の小田原中継所から芦ノ湖まで23.4キロで標高差は864メートル。世界最高峰のサイクルロードレース、ツール・ド・フランスはもっとすごい(自転車だけど)。2019年の第18ステージは標高585メートルからスタートして2770メートルの山を越えて、2113メートルでフィニッシュ。全長126.5キロで5つの山を登ったり下ったりするのだからすさまじい。
さあ、うんちくはこれくらいにして少し休もう。高尾山は道中にいくつもの茶屋があるのだが、私たちは「とろろそば」の暖簾がかかる山頂の「曙亭」で昼食を摂ることにした。
「えーっと、生ビール」
運動をすると反射的にこう口にしてしまうのはなぜだろうか…。時刻は午前11時40分。山を登ってきたからいいじゃないか。だれもが心の中でそう言い訳して、ビールと高尾山名物のとろろそばを注文した。平打ちの麺はガッツリした感じでなかなかうまい。
高尾山は「関東の富士見100景」でもある
ビールとそばでおなかはけっこうパンパン。ここはもう一度、富士山を眺めて気合いを入れ直そうではないか。高尾山頂は国土交通省により「関東の富士見100景」に認定されている。つまり富士山がきれいに見える名所ということだ。東京・国分寺市の自宅ベランダから見るよりも大きく見える(推定2倍)富士山を拝み、私たちは気持ちも新たに下山を始めたのだった。
下山は吊り橋もあるという4号路も考えたのだが、入り口に「4号路 滑りやすい山道」の表示が。こちらは見るからに山道で残雪もたくさん見られたので無理をせずに登りと同じ参道コースを下った。
山頂付近には雪も残っていた
帰りはコースが分かっていることもあり、鼻歌気分で軽快に参道を踏みしめた。このままずっと同じルートというのも能がないと感じて、最後はリフトを使うことに。片道490円也。山上駅から山麓駅まで12分の空中散歩である。フワリ、フワリと楽しく下山するのも悪くない。
さあ、係員の人に導かれてリフトに乗り、駅舎から発車してみると…。
「こ、こわっ! これ、安全バーみたいのないんですか!」
はっきり言ってこれは怖い。下は金網が張ってあるから落ちても死ぬことはないだろうが、ググッと下っていくのでリフトから落ちそうでならないのだ。身体の前にバーがあれば少しは安心できるというのにそれもない。下りだからというのもあるだろうが、最初の数分は予想外の恐怖に顔面が引きつるばかり。空中散歩を終えてメンバーに聞いて見ると口をそろえて「怖かった!」。何事も油断は禁物ということだ。
リフトを降りてケーブルカーの清滝駅を抜けると高尾登山は終了。昼ご飯を食べた時間も入れて3時間あまりの行程だった。
みんなが固まった下りのリフト
また、うんちくになってしまうが、高尾山は「世界一登山客の多い山」としてミシュランガイドで3つ星に認定されている。日本の情報を海外に発信する「ニッポン・ドットコム」によると訪れる観光客は年間なんと300万人! いや、これがどれくらい大きな数字なのかピンとこないのだが、あの世界的に有名なミシュランが認定するくらいだから多いのは間違いないだろう。
コロナ禍の中、高尾山は密ではないし、空気はいいし、身体も動かせていいことずくめ。飲み会やイベントが軒並み縮小される中で、ひょっとすると注目のレクリエーションになれるかもしれない。そんなふうに感じた。
本日の歩数は1万6589歩。京王線の電車に揺られながら、半日の山歩きで頭がクリアになったことに気がつく。次回はこちらも関東の人気スポット、丹沢の大山を目指そうと、その場の雰囲気で決まったのだった。
しぶさんぽseason7 高尾山編 終
2021年2月公開