——さて、続いては「スケボーとファッション」というテーマに移りたいと思います。いまはスケボーシューズやスケーターブランドのストリート人気がとにかくすごいですよね、インスタントさんも発売時に大行列が出来た様子がSNSで話題になっていました。
森 それ僕も見ました。インスタントさんの吉祥寺店の並びに行ったことありますけど、人すごかったです。
関 お店を一周できるくらいの列になったこともありました。たくさんのお客様に来ていただけるのは有り難いことだと思っていますが、2?3年前まではここまでの人気ではなかったんです。スケーターの子たちの中でも、前までは「ダンク」(DUNK:NIKE SBのシューズ名)も人気は下火で売れ残ったりもしていました。でも最近は、インスタでもフォロワーの多いスケーターが(ダンクの)写真を履いていることもあり、全体的にブームが来ている印象です。
森 すごくわかります。昔は「ムラサキスポーツ」とかでも売れ残ったりしてましたもんね。今みたいにNIKEがプロモーションを押し出す前から、スケーターにダンクは人気だったんでしょうか?
関 そうですね、ダンクには一定のファンが常にいるんです。それに加えて、普段履いてこなかったような人も履くようになってきたんだと思います。
——本当に多くの方が履くようになりましたね。ちょっと突っ込んだ話ですが、転売市場でもスケーターシューズは人気です。履きたい人が定価で履けない、そんなプレミアムなマーケットになっているのはお店の立場としてはどう思いますか? 言い方は悪いですけど、「絶対スケボーしないだろ」みたいな人もいるのかなと思います。
森 スケボーする人からしたら、僕みたいに今はやってない人がダンク履いてたりすると「あいつミーハーだな」とか思われたりするんですかね。今日ちょうどダンクを履いてきたので、気になっていました(笑)
関 周りにはやっぱりそう思う人もいますが、僕は全くそういうことは気にしません。むしろ良いことなのではないかと思っているくらいです。スケーターだけ履いていても商売として成り立たないですし、意外とスニーカー好きの中にも昔スケーターだった人もいますから。
——スケボーシューズを履くこと自体は日常生活でもできますし、先程の話にもありましたが小さな頃はスポーツとして、大人になったらカルチャーとしてスケボーを楽しむというフォーマットなのかもしれませんね。
関 そう思います。それに今はダンクだけではなく、1990年代の少しゴツいシルエットのものも全体的に流行ってきているんですよ。「DC(ディーシー)」とか、復刻版も結構出しています。そういうモデルが売れることで、ダンクブームだけじゃなくて90’sブームみたいな感じがしますよね。服装も、若い子は結構太めのシルエットを選んでいると思います。
——服の話が出ましたが、ここも気になる点です。最近ではストリートファッションにおいてスケータースタイルを見ることが多くなってきました。つまりファッションとしてのスケートボードがトレンドになっているといえるのですが、そうした実感はありますか?
関 スケボーは、トレンドの移り変わりが早いんですよ。2?3年周期でファッションが変わっていますね。例えばB-BOY系のルーズなファッションは、僕がスケートを始めたときには珍しくて。でもここ最近は、オシャレな高校生や大学生ぐらいのスケーターにB-BOYな子が多かったりします。パンツなんて、みんなウエスト38インチ(約96.5cm)くらい大きいのを履いていて。
森 えっ、それ僕のサイズです。僕は「874」(ディッキーズのワークパンツ)は38をいつも履いているんですよ。結構店舗には36インチまでしかなかったりするので、買うの大変なんですよ。スケーターに流行っちゃったらもっと買いづらくなっちゃいそうで嫌ですね(笑)
——例えば今のストリートシーンを牽引するブランドの「supreme(シュプリーム)」も元はスケートショップですよね。シーズンごとのルックブックに、ショーン・パブロのようなトップスケーターがモデルになって着用しているのは印象に残ります。
関 そうですね。ファッション的に影響力のあるスケーターが、まさにショーン・パブロやナケル・スミスのような人たちです。若い子は、そういうのに憧れてファッションも流行っていくのではないでしょうか。
森 昔シュプリームのカタログに載ってる人達って誰だろうって思ってたんです。でもだんだん知るようになって、みんなすごいスケーターなんだなと。
——やっぱり、シュプリームって偉大ですね。スポーツとしても、ファッションとしても、両面でスケボーを引っ張っているのはすごいです。
関 シュプリームがスケーターからもリスペクトされる理由として、服のカッコよさはもちろんちゃんと映像も出しているんですよ。その映像が、スケーターから見ても上手いし、カッコいいんです。
森 シュプリームって、例えば細身のパンツに合わせて着ている人もいれば、思いっきりスケーターファッションの人も着ているし、そういうのは見ていて楽しいですよね。僕自身もシュプリームをファッションとして楽しむことが多いです。
——スポーツとしては若年層の競技者が増えているということでしたが、ファッションもこのようにシュプリームという入口からスケボーに触れている人が多いですね。来年のオリンピックでの結果次第で、この層からも競技人口が増えてきそうな気がします。実際にスケボーで生きていくとしたら、どんな活動になるんでしょうか?
関 スケボーって、大会に出る人と映像を出す人がいるんです。例えば堀米悠斗君はその両方をやっているんです。もちろん大会で活躍することも凄いことですが、自分で映像を出すという活動がスケーターにとっては一番認めてもらえることなんですよ。
——大会で活躍することもすごいと思いますが、自分の活動映像の方が注目されるんですね。
関 大会は時間内に一発で乗らなければいけない難しさがあるんですけど、映像は何回でもやっていいんです。だからこそ、何回でも撮れるからこそ、いい意味で”ヤバい”映像にしなきゃいけないのが難しいところですね。
森 それは面白いですね。特に今ってSNS文化だから、そういう映像を人に見てもらえるチャンスって多いと思います。
関 本当にその通りです。YouTubeもあるので、昔よりも今はピックアップされやすくなっていますね。
森 ハンドボールでも自分のいいシーンやシュートシーンばかりを集めた映像を作っている選手もいますよ。初めてみた人は「この人すごい」ってなるような。そういうセルフプロモーションがちゃんと出来ているんです。
——スケボー然り、ハンドボール然り、今のデジタル社会の中では個人の活動の範囲も大幅に広がりましたね。特にSNSをどう活用するか、これを考えることはアスリートとしては非常に大きなテーマであり、チャンスなのだと思います。さて、トークもいよいよ終盤戦になりますが、もう少しだけお付き合いください!
最終話へつづく
※取材は2020年10月上旬に行いました※
2020年11月公開