メルセデスの独走はいつまで?
第5戦70周年記念GP。第4戦と同じく舞台はシルバーストーンサーキット。同じサーキット場での2週連続開催です。冠名は変わっており「70週年記念GP」となります。F1が1950年から開催されていることにちなみ、このような冠名になっております。
前回と同じく予選ではメルセデスが圧倒的に速く、1秒差をつけて3位以降を引き離した結果です。レッドブル・ホンダのエース、フェルスタッペンはやはりメルセデスに1発の速さは敵わない状況です。
先週に行われたイギリスGPではレース2周前に相次いでタイヤがパンクし、なんとかフェルスタッペンは2位に入ることができましたが今回のレースはどうでしょう。70周年記念GPはイギリスGPと同じコースとなります。それでは競技として面白くはないということでタイヤが1段階柔らかいものを用意されました。
※F1のタイヤは1社提供となっており、ピレリが供給しています。晴れの日に使用するドライタイヤは5種類。雨の日に使用するレインタイヤは2種類あります。コースの特性に合わせてピレリ側がタイヤの柔らかさを決定し、5種類の中から3つを選択し、それぞれ硬いほうからハードタイヤ、ミディアムタイヤ、ソフトタイヤを各チームに供給します。
タイヤが柔らかいということは複数の周回を走ることが難しくなります。柔らかければ柔らかいほど直ぐにタイヤのゴムが減ってしまいグリップが無くなってしまいます。グリップが無くなってしまうと、コーナーが遅くなってしまう等の弊害が起きラップタイムに影響が出てきてしまいます。
そんなタイヤ戦略が重要になる70周年記念GPはスタート。
快調にメルセデスの2台が後続を突き離していきます。先週と同じく最後の最後に何かが起きないとつまらない全く同じレースになるなと思っておりました。しかし、10周目程からメルセデスの雲行きが怪しくなってきました。
2台ともにミディアムタイヤでスタートしたメルセデスのペースが上がりません。ハードタイヤでスタートしたフェルスタッペンに徐々に差を詰められていきます。
いったいメルセデスに何が起きたのでしょうか?
タイヤに優しいレッドブル、厳しいメルセデス
実はメルセデスに乗るハミルトンとボッタスはタイヤのグリップが無くなってしまい大変苦しんでいました。グリップが無くなってしまうと先程の解説の通り、コーナーが遅くなってしまい、または加速が悪くなってしまいます。
タイヤのグリップを保たせるのはドライバーの腕とマシン性能に依存してきます。現役最高のドライバーと称されるハミルトンをもってしても、すぐにグリップが無くなってしまうほど現在のメルセデスのマシンはタイヤに厳しいということが今回のレースで露呈してしまいました。
タイヤのグリップが無くなってくると、第三者の目から見ても分かるようになります。スリックタイヤと言って溝が無いツルツルのタイヤをF1では使用しているのですがグリップが無くなるとタイヤに筋が入り、一般の車のように溝のように見えてくるようになります。
メルセデスの2台には明らかに筋が入ってきており、タイヤが「終わっている」サインが出始めておりました。しかし、フェルスタッペンのタイヤには26周を走っても筋はまだまだ見えません。つまりドライバーの腕はもちろんのこと、レッドブルのマシンが非常にタイヤに優しいということが今回のレースで明らかになってきました。
タイヤに厳しければ何度もピットインをしてタイヤ交換をしなければなりません。ピットインをすることはロスタイムも発生してしまいます。おいそれと何回もピットインすることは戦略上、望ましくはないのでタイヤが終わったまま我慢して走り続けるチームがほとんでございます。
十数周でタイヤがダメになってしまうメルセデス。20周を超えてもタイヤが保つレッドブル。勝負は中盤でついていたと思います。
結果はフェルスタッペンが今季初優勝。メルセデス独走につまらないと感じる筆者にはうれしい結果となりました。
スタートが鍵になった第6戦スペインGP
第6戦スペインGPの舞台はカタロニア・サーキット。スペインのバルセロナから北東に20kmほどの場所に位置します。何度も言いますが、大都市からのアクセスが良いサーキット場は憧れます。鈴鹿サーキットはなんであんなところにあるのだろう…
カタロニア・サーキットは、シーズン前のF1合同テストで使用されるサーキット場でありドライバー達にも走りなれたコースとなります。また、抜きづらいコースでも有名です。
第5戦をタイヤマネジメントで苦しんだ、メルセデス。タイヤマネジメントで前回の優勝をもぎ取ったレッドブル。予選1位のハミルトンは順当なスタート。予選2位のボッタスがなんとスタートで失敗をしてしまいスタート後に4位に沈んでしまいます。
抜きづらいコースでもあるので、スタートが重要になります。スタートで失敗したボッタスは3位に浮上しますが、フェルスタッペンは3秒も前を走行。もうここで勝負アリ。
結果はハミルトン、フェルスタッペン、ボッタスの順でチェッカーフラッグ。一つのミスで順位が決定してしまうなんてF1は残酷なものです。言い換えればミスをせずに完璧なレースをしなければ優勝ができないということです。それだけ緊張感を持って全力でF1に乗るドライバーは1レースで体重が5kgほど軽くなるそうです。チューブで水分補給をしながらも汗で流れてしまいます。
マシンセッティングが完璧だったハミルトンが圧勝という、いつも通りの結果となりましたが同じマシンに乗るボッタスを完膚なきまでに叩きのめしたレースになったのではないでしょうか?ボッタスも良いドライバーですがハミルトンが異常過ぎるほどに上手なドライバーなのです。現役最強ドライバーのハミルトン。その座を奪おうとするフェルスタッペン。新旧交代をF1ファンは心待ちにしています。
第7戦はベルギーGP。第8戦はイタリアGP。第9戦はトスカーナGP(イタリア)と3戦連続開催となります。3戦連続開催が3回目。F1スタッフも大変そうですね。
次回のF1レビューもお楽しみに。
2020年8月掲載