店内にずらっと並ぶスニーカーを見て回ること数十分。ようやく気になるスニーカーを絞ることができたふたりに、店長の奥山さんからもオススメモデルを紹介してもらうことに。
まずは、森から。
今日の30cm在庫は主にバッシュ系に多いとの情報が。森は既に嬉しそうな顔をしている。さらに、今ちょうど店頭に出そうとしていたというモデルが30cmとのことで、それを見せてくれるという。
それは、予想を遥かに上回る、超大玉だった。
【AIR JORDAN 6(エアジョーダン6) – SLAM DUNK EDITION】という、2014年10月に発売された、ナイキのエアジョーダンブランドの人気作、エアジョーダン6と人気バスケットボール漫画『SLAM DUNK』とのコラボレーションモデルだった。約5年以上前の発売ということもあり、今は市場にもほとんど流通していない。
モデルの特徴は、全体にレッドを用いたアッパー部分だ。そこには、主人公の桜木花道の成長や彼の才能を表現した瞬間など、ファンの記憶に残るイメージがプリントされているというこだわりよう。そんなお宝を目の前にした森の顔は、真剣そのものである。

これか、これなのか。店内に緊張感が走る。
と、その時だった。店長の奥山さんが、もう一足あると言って上から箱を出してきた。
それは、またもや超大玉の【JORDAN SUPERFLY3(ジョーダン スーパーフライ3) – SLAM DUNK EDITION】であった。実はナイキとスラムダンクのコラボレーションは、先程出てきたエアジョーダン6だけではなく、このスーパーフライ3との二足展開だったのである。
伝説的なモデルのエアジョーダン6には、ファンの記憶に残る名シーンが。そして(発売当時は)革新的なモデルのジョーダンスーパーフライ3には、ファンには決して語られなかった主人公桜木花道のその後、を示唆するようなイラストが、それぞれプリントされている。プロダクトと漫画、それぞれのストーリーがしっかりと噛み合った、まさにお手本のようなコラボレーションである。こうした要素もスニーカーを彩る素敵なものだ。

まさかのお宝に、不覚にも胸が高鳴った。
実はこのモデル、筆者も買おうとして買えなかったという痛恨の思い出があったのだ。やはり実物のカッコよさは尋常ではない。サイズは合わないが観賞用でも欲しいなと、密かな邪念が芽生えはじめたその刹那、
「お買い上げでお願いします」(森)
なんという速さ…
森は一瞬でそのモデルに惚れ込み、すぐさま決断した。いや、決断してしまった。とはいえ、貴重なモデルがよりによって希少なサイズで入荷した奇跡を逃さないその判断力。お見事である。
こうして森は運命の一足と出会うこととなった。さらに、実際に早速履いてみたいと言う。
「履いてみて、試合で履くか、プライベートで履くか決めたいんですがいいですか?」(森)

「履き心地最高にいいです。サイズもピッタリです。これは試合でも履きたいと思います。めちゃくちゃ嬉しいです、これは。本当に買えてよかったです」(森)
これこそ、ネットで買うだけでは味わえない、現場に足を運ぶ醍醐味である。
今日たまたま取材でやってきて、そこにたまたま30cmのお宝があって、それが心を打ち抜く出会いに。極稀に起こる、自分が選ぶのではなく、スニーカーが自分を選んでくれたような感覚。
これだからスニーカー探しはやめられない。
恐るべき精度を誇る奥山店長のオススメは、夏山へも続く。
こちらはやはりエアマックス系が希望とのことだが、森とは異なり27.5cmと日本人に多いサイズのため在庫も豊富という。そんな中で奥山店長は、派手なデザインを提案してきた。たしかに季節は夏(取材当時は7月)だし、いつも無地系のコーデが多い夏山にとっては足元のアクセントになるので良さそうだ。
最初のオススメは、ナイキの【AIR MAX PLUS(エアマックス プラス) OG】。1998年に、アメリカの大手スニーカーショップ”FOOT LOCKER”が別注として登場したのが起源のモデルだ。半球状クッション材のTUNED AIR(チューンドエア)を搭載し、OGカラーの鮮やかなオレンジグラデーションを基調とした流線形のシルエットが美しい。
次のオススメは、【NIKE × ACRONYM AIR VAPORMAX MOC2(エア ヴェイパーマックス)】。2018年に発売された、エロルソン・ヒューが手掛ける「ACRONYM(アクロニウム)」とのコラボレーションモデルだ。アッパーはユニークなカモフラージュ柄が特徴で、機能性を重視してシューレースをなくし、代わりに伸縮性に優れた素材をシュータンに採用。まるでスリッポンのように履くことができる。アウトソールは完全単独のエアユニットになっておりその履き心地は異次元のもの。まさにデザインと機能性のハイブリッドスニーカーである。

手に取る夏山の顔は、これまでで一番真剣に見えた。かなり気に入ったのだろう。
子供もまだ小さいため、土日のプライベートで履く上では着脱のしやすさも大切なポイントで、そうした点でもこのモデルはとても魅力的だそう。また、ナイキのヴェイパーマックスは一度も履いたことがないらしく、とても興味があるという。

「嫁に内緒で買っちまうか…」
試着した後にこういう発言をした人で、手ぶらで帰る人は120%存在しない。
ということで、あっさりと夏山も奥山店長のオススメスニーカーを購入したのであった。実はこのモデル、密かに森も欲しかったようで、自分のサイズがなかったことを本気で残念がっていた。アスリートとは、実に貪欲である。
こうして、ふたりの原宿スニーカー探訪は最高の幕切れとなった。ふたりともお互いのスニーカーを見せ合いながら、嬉しそうな顔をしている。普段のコート上では決して見ることのできない表情が見られること、そしてプライベートのリラックスした空気で色んな話が聞けること、この探訪にはたくさんの意味があったのではないか。
また明日から森はコートに戻り、夏山はデスクへと戻っていく。それでもきっと、ふたりはこれからも「同球生」として共に歩んでいくに違いない。
同郷、同級生、同僚、同ポジション、今日も同じ店でスニーカーを買った。
同じ袋を持って、同じくらいとびっきりの笑顔で。

同球生がゆく ~スニーカー探訪 in 原宿~ 終
2020年1月掲載







