イングランドはフットボールの国である。
サッカーも、そしてラグビーも男子も、そして女子も。2023年女子欧州6カ国対抗(シックスネーションズ)、イングランドとフランスの一戦は、ロンドンのトゥイッケナム・スタジアム(アリアンツスタジアム)に5万8000人の観客を集めた。イングランドは世界最高峰のトップリーグ「プレミアシップ」を充実させ、レッドローズ(イングランド女子代表)は世界ランキング1位だ。
2025年8月、世界中で最も女子ラグビーが盛り上がるこのイングランドで第10回女子ラグビーワールドカップ2025が開幕した。チケットは開幕前において既に37万枚以上が売れているという。注目度も規模も、過去最大となることは言うまでもない。
3大会連続出場のサクラフィフティーン(女子日本代表)もこの大舞台に挑む。女子ラグビーは日本でも徐々に盛り上がりを見せ、風が吹き始めている。その背景にあるものは何か。開幕前、日本ラグビーフットボール協会理事を務める香川あかねDirector of Women’s Rugbyに、二宮寿朗SPOAL編集長が話を聞いた。
二宮 サクラフィフティーンはワールドカップの壮行試合となったスペインとのテストマッチ(太陽生命ジャパンラグビーチャレンジシリーズ)で2連勝を挙げ、2戦目の舞台となった東京・秩父宮ラグビー場には5244人の観客を集めました。女子15人制日本代表戦において歴代最多となりましたね。
香川 今までは女子の代表戦を行なう場合、プロモーションは女子のことだけやっていました。それが男子日本代表のプロモーションと一緒にやっていこうと、昨年12月くらいから協力してやってきた成果が出たのかなとは感じています。また協賛社のみなさまにはワールドカップイヤーになる本年、今までにないくらいのサポートをしていただいて告知や露出の増加を図ることができていることにも厚く感謝しなければなりません。
二宮 女子ラグビーを生で観ると、思った以上に迫力がありますし、試合としても非常に面白い。男子に比べればフィジカルのパワー、スピードは劣るとしても、チームそれぞれ組織としての色も出やすいのかなと感じました。
香川 今回のスペインとの2試合では若いファンの方が多かったんですね。言っていただいたようにプレーの迫力、試合の面白さというものが新しいファンのみなさんの心に刺さってくれたらうれしいな、と。競技としてのポテンシャルを感じることができた2連戦でもありました。
二宮 女子ラグビーは今回、ワールドカップの舞台となるイングランドを始め、非常に盛り上がっている印象です。ワールドラグビー(WR)が女子ラグビーの普及、認知、拡大に力を入れてきたこともあると思うのですが、その背景にあるものをどう捉えていますか?
香川 多様性を大切にする国際社会において、女子スポーツに対してスポットライトが当たり始めていることも当然、背景にはあると思います。女子ラグビーそのものに目を向ければ欧州にはシックスネーションズがあって、そういう環境が魅力にもつながっています。それにイングランド協会(RFU)が世界一のプロリーグを目指すべく、プレミアシップに10年間で約400億円の投資をする、と。イングランドが女子ラグビーをリードする存在になっていることは間違いありません。
二宮 2023年の女子シックスネーションズではトゥイッケナム・スタジアム(アリアンツスタジアム)で行なわれたイングランド対フランスは5万8000人の観客を集めたんですよね。
香川 昨年のパリオリンピックでも(女子セブンズで)6万6000人を記録しています。女子ラグビーが世界全体として関心が高まっているなと感じています。たとえばパリオリンピックにも出場したアメリカのイロナ・マーハというスター選手はインスタグラムで520万人のフォロワーがいます。ワールドラグビーとしても、女子ラグビーの認知度を上げるために今回のワールドカップでSNSの担当者を各チームに一人ずつ帯同させて発信していけるような態勢にしています。史上最大規模になると言われているこのワールドカップが、今後の女子ラグビーの発展を後押しするんじゃないかと期待しています。
二宮 2年前に日本ラグビー協会(JRFU)は「女子ラグビー中長期戦略計画」を発表されています。重点領域に「持続的なパスウェイの構築」「女子ラグビーのコミュニティ構築」に加えて「リーダーシップ育成」がありました。「グローバルな視点を持つ人材輩出に貢献し、JRFUが女性の社会進出を体現するフロントランナーへ成長」と記されていて、つまりラグビーを通じてリーダーシップを育んでいきたい、ということ。女性活躍推進にも沿っていて、時代の要求とも重なっていると感じます。
香川 どの国においてもリーダーシップのところは注目しています。誰かがつまずいたら、誰かがサポートする。そうやって前に向かっていくラグビーはお互いに助け合うことが凄く重要になってくるスポーツですから、選手を見ていると自然にリーダーシップが身についているんですよね。チームをまとめるということを体で覚えていくのでラグビーの枠を超えて、社会のなかでも貢献できると思っています。ここ(リーダーシップ育成)はもっと前面に押し出すことを検討していきたいですね。
二宮 「中長期戦略計画」にもありますが、ワールドラグビーはワールドカップ開催地を男女セットにしている傾向がある。2027年と29年にオーストラリア、31年と33年がアメリカです。日本は最短、35年、37年での招致を視野に入れています。そのためにも女子ラグビーを日本で盛り上げていく必要があるということですね。
香川 女子ラグビーワールドカップの招致に向けて競技者数を増やし、47都道府県にそれぞれ拠点をつくって当たり前に女子ラグビーがやれる環境を整えていかなければなりません。女子の指導者がちゃんといて、レフェリーがちゃんといて、普及をマネジメントできるユニットを各地に配備できる体制をここ4、5年でつくっていきたいですね。
二宮 ありがとうございます。インタビューの後編は、日本女子ラグビーの歩みをテーマにしたいと思います。
2025年8月公開
※試合写真は2025年7月26日、東京・秩父宮ラグビー場で開催された「太陽生命ジャパンラグビーチャレンジシリーズ」女子日本代表―女子スペイン代表