みなさんご存知、映画「恋する惑星」(1994年)から。
当時まだ日本では有名ではなかったウォン・カーウァイ監督が、金城武やフェイ・ウォンを一躍スターダムに押し上げた作品。主役のトニー・レオンは盤石のイケメン具合を発揮しています。
ハンバーガーショップで働くちょっと変わった女の子フェイ・ウォンは、お客であるトニー・レオンへの手紙(元彼女から)を勝手に開封。中に入っていた合鍵を使って無断でトニーの家に侵入すると、部屋の模様替えをし、金魚の数を増やしてみたりとやりたい放題。ストーカーの枠を超えたサイコパス感も90年代の香港の気怠い空気感と、独特な色彩表現も相まみえ、淡い恋心と捉えてみればそれさえもスタイリッシュに。幻想と現実の狭間を行き交うかのごとくクリストファー・ドイルのカメラワークが冴え渡ります。クエンティン・タランティーノが絶賛した映画として有名なこの作品、続編である「天使の涙」も含めて根強いファンは多いはず。
そして印象的な劇中歌、歌手であるフェイ・ウォン自身が歌う「夢中人」はおそらく聞いたことはあるでしょう。そしてフェイが働く店で流れる、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」がこの映画のキーポイント。
ゴールデンステート〜カリフォルニア州〜
「アメリカン・ドリーム」ではなく、「カリフォルニア・ドリーム」今回のマニアックモノガタリは、そのカリフォルニア、サンタクララを本拠地とする「サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ」をご紹介しましょう。
まずは恒例の地図から。
2014年に本拠地をサンフランシスコからサンタクララに移転。
アラスカ、テキサス州に次ぎ、全米第三位の大きさを誇るカリフォルニア州。その大きさもさることながら人口も東京都のおよそ3倍の3900万人と全米最多。アメリカを代表する州の一つと言っていいでしょう。
独立するという噂も流れるカリフォルニア州。その理由はアメリカで一番稼いでいる州であること。シリコンバレーにハリウッド。ディズニーランドやヨセミテ国立公園などの観光資源も豊富とあればうなずけます。
ではなぜ人はカリフォルニアに集まるのか。
それは1848年から49 年に起きた“ゴールドラッシュ”が起源とも言われています。
ゴールドラッシュとは
1848年、まだ州にもなっていないカリフォルニアで、ジェームズ・マーシャルという人物がたまたま工場の放水路で金の破片を見つけた事が黄金狂想曲の始まり。
「金発見!」の噂はまたたく間に広がり、全米各地からはもちろん、世界中から一攫千金を夢見た人々がカリフォルニアに押し寄せます。
余談ですが、金の第一発見者、歴史を動かした男であるジェームズは「金」発見後その土地を追い出され、ぶどう園の経営に乗り出すが失敗、金鉱で金を探すも見つからず破産と、なかなかザ・ノンフィクションな生涯を送っています。
初期のゴールドラッシュでは10万人近い移民が来たとも言われていますが、その中でも中国人は2万人ほどが上陸。中国人の一風変わった外観(日本人からみたらそんなに変ではないと思いますが)と安い労働賃金は白人の敵意を増長することになり、やがて排斥運動にまで発展します。そこで中国人は暴力から逃れるために自分達だけの居留地を作り、これが後のチャイナタウンになったと言われております。
また、金鉱夫のために帆布をリベットで補強したパンツが、のちのジーンズとなったのはもはや説明不要でしょう。
ただ金を発見しただけではなく、そこから様々な文化が生まれた事も面白いところ。脱線ついでのゴールドラッシュつながりとしては1991年から放送されたフジテレビのオーディション番組「ゴールド・ラッシュ!」の初代グランドチャンピオンが千秋なのも説明不要でしょう。
「デニム」の語源はフランス語の「serge de Nîmes(セルジュ・ドゥ・ニーム)」
ゴールドラッシュ以前、人口わずか数百人だったカリフォルニアは、トータルで30万人以上もの移民のおかげで州に発展し、カリフォルニア・ドリームとして歴史に刻まれます。
そして、1849年にカリフォルニアの地を踏んだ多くの人達のことを “フォーティーナイナーズ”(’49年の人達)と呼びます。
「サンフランシスコ・49ers」のチーム名は、この開拓者達の名前からきたもの。もちろんチームカラーはゴールドとなっております。
ゴールドと赤がチームカラー
過去のチーム名紹介ではオーナーの会社の職種の影響で名前がつくパターンでしたがアメリカの歴史から来ている新しいパターンを発見!
49ersの歴史
金と赤のユニフォームが印象的な49ers。
1946年にアメリカ西海岸初のメジャープロスポーツ球団として創設。1960年、今では当たり前のパス攻撃の一つである、「ショットガンフォーメーション」を初めて導入します。画期的なシステムでしたが、リーグ中位をウロウロする状況は変わらず。
その流れが変わったのが80年代。
ビル・ウォルシュ監督がショートパスを多用する「ウエスト・コースト・オフェンス」を導入。さらに学生時代から逆転劇を演じていたQBジョー・モンタナをドラフトで獲得。
あまり肩が強くないとの理由で注目されなかったモンタナですが、このチーム戦略にうまくマッチし、「ザ・キャッチ」や「ザ・モンタナドライブ」といったアメフト好きなら誰もが知っている語り草のシーンを演出。
モンタナ・マジックとも言われた逆転劇を繰り返し80年代後半から90年代前半まで黄金時代を築きます。チームとしては5回スーパーボウル制覇していますが、そのうち4回はモンタナがQBの時に。
また日本のNFLブームの火付け役とも言われており、当時の三菱(テレビやビデオ)のCMでは「どんなモンタナ」「ジョー況判断」とダジャレなのかよくわからないギリギリのセリフで牧瀬里穂と共演。
外国の方に変な日本語を言わせるのは今でも謎のまま。気になった方は是非検索してみてください。
もちろん永久欠番である背番号「16」
今シーズンは地区優勝からプレーオフに出場。僅差の戦いを制し4年ぶりにスーパーボウルに進出。対戦相手は連覇を狙うカンザスシティ・チーフス。
4年前と同じカードになった今大会。フォーティーナイナーズは4年前の雪辱と史上最多タイの6度目のスーパーボウル制覇を狙います。
今年のチケットは最安値でも120万円と過去最高額になる可能性があるとも。
お見逃しなく!
マニアックモノガタリ「サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ」 終