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しぶさんぽ Season16 VOL.2

侍ジャパンが練習した大田スタジアム

 東京モノレールの大井競馬場前駅から京浜運河を渡り、「大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森」を歩く。木々に囲まれた公園は気持ちいいものだと思っていると、「ここは海抜6.5メートル」という看板に出くわす。そう、ここは埋立地なのだ。「津波が怖いな」なんて妄想しながら歩いていると、公園の南端に位置する大田スタジアムに到着した。

大田スタジアム

 

 スタジアムには入れないと思っていたら、スタンドを無料で開放していて、ひょいっと中に入ってみる。緑の人工芝が青空によく映えるきれいな球場だ。掲示板には「東京都クラブチームオールスターゲーム」の開催告知や「硬式野球体験練習会」のお知らせが。いかにも“地元の球場”といった趣である。

と感じていたら、スタンド席に上る階段で「東京2020オリンピック競技大会 野球 練習会場」というパネルを発見した。「オリンピック競技大会の野球の練習会場として、大会に出場した6カ国の代表選手が使用しました」と説明がある。

 栗山英樹監督率いる“侍ジャパン”はオリンピックで金メダルに輝いた。代表メンバーに使ってもらった大田スタジアムもきっと喜んでいるに違いない。「大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森」、初めて来たけど、なかなか素敵な公園だった。

倉庫街を歩く

 

 公園を出て今度は新平和橋を使って京浜運河を渡る。このあたりは巨大な倉庫が群れをなす物流の一大拠点。幅の広い路上には一休みするドライバーたちを乗せたトラックがズラリと並ぶ。そう、ここはトラックの街なのだ。だだっ広い倉庫街をテクテク歩いているのは私たちくらいしかいなかった。

 首都高羽田線を超えて向かった先はボートレース平和島。しぶさんぽSeason8でボートレース多摩川に足を運んで以来、2度目の競艇場訪問である。競艇場を含むここいら一帯はレジャースポットで、ボウリング場や映画館が入ったビルがあり、「トンデミ平和島」という体験型スポーツ施設もある。私と近藤カメラマンはゲートに100円をチャリンと入れて競艇場に入っていった。

平和島の複合施設

 

 客席に足を踏み入れると、電光掲示板の向こうにドドンと立ち並ぶ大小のマンションが目を引いた。「競艇をタダで見られる」というロケーションだが、それが理由で入居する人はいないよな……。つまらないことを考えながらスタンドを見渡すと、意外にも若い人、女性の姿が目につく。ボートレース平和島の未来はなかなか明るいのかもしれない。

 さて、レースである。普段、ギャンブルをたしなまない私だが、ここにきて舟券を買わずに帰っては非礼というもの。予備知識はまったくないので、モニターでオッズだけ確認して、プラスチックの小さい鉛筆(ペグシルというそうだ)でマークシートを塗りつぶす。3連単と2連単にそれぞれ100円ずつ。ケチくさいと言われたら、「はい、その通りです」と答えるしかない。

 投票締め切りが迫ってきたので、慌てて舟券を買いに行く。ところが券売機にマークシートが入らない。なぜ? 焦っていると後ろから近藤カメラマンが近づいてきた。

「あの、これ、マークシートが入らないんですけど」(渋谷)
「それ、お金を先に入れるんです」(近藤)
「えっ、そうなの!?」(渋谷)

 多摩川での経験をすっかり忘れていた。無事に舟券を購入し、客席に出てレースの発走を待つ。どうやってスタートするんだっけ? 女性選手も一緒に出てるの? 何周するの? と頭の中で「?」を繰り返しているうちにレースは終了。私にも、近藤カメラマンにも、ボートレースの女神は微笑まなかった……。

人生2度目のボートレースを体験

 

 さあ、今日はまだまだ歩くぞ! 近藤カメラマンを誘い、道を隔てた向かいにある「平和の森公園」に足を踏み入れる。芝生の上で本格的なテントを張っている男性がいる。まさかここでキャンプというわけでもないだろうから、テントを張る練習か、メンテナンスでもしているのだろう。

 環七通りを渡ると、こちらはスポーツ施設のゾーン。まずはアスレチック場がある。平日の昼間ということであまり人の姿は見られないが、きっと週末は親子連れで賑わうに違いない。こちらは有料。隣にある小さな子向けは無料だ。

 さらに先に進むと相撲場、アーチェリー場、弓道場がある。ふと、「アーチェリー場ってどれくらいあるんだろう?」と思って調べてみると「東京のアーチェリー場一覧」というホームページを発見。なんと都内だけで34カ所のアーチェリー場があった。その中でも中心的な存在がオリンピックの会場となった夢の島公園アーチェリー場である。

 せっかくなので日本のアーチェリー競技におけるオリンピックメダリストを列挙しよう。銀メダルが道永宏(1976モントリオール)、山本博(2004アテネ)、古川高晴(2012ロンドン)、銅メダルが山本博(1984ロサンゼルス)、古川高晴(2020東京)。団体で女子(2012ロンドン)と男子(2020東京)がともに銅メダルを獲得している。ホッケーに続いてアーチェリー。勉強すべきことがまた一つ増えた。

「大森ふるさとの海浜公園」に到着

 

 「平和の森公園」を抜けると、「大森 海苔のふるさと舘」をはさみ、本日のゴールとなる「大森ふるさとの浜辺公園」に到着した。海に面したこの公園は白砂の浜辺が売りで、市民がのんびり散歩をしたり、座ってひなたぼっこをしたりしている。そして、ここにもスポーツ施設があるのだからすごい。ビーチバレー場、フットサル場、そしてバスケットボールゴールも。隣には東京ガスの大きなグラウンド、野球場があるので、なお広く感じられた。

 公園を抜けて駅に向かうとようやく住宅地が現われ、少しホットした気持ちになる。帰りは東京モノレールの大井競馬場前駅ではなく、京浜急行の平和島駅へ。本日の歩数計は1万9186歩をマーク。天気も良く、気持ちのいい1日となった。

しぶさんぽSeason16 おわり

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