「黒パーマセルテープ」
突然ですがこのテープの存在はご存知でしょうか?写真、映像、舞台等の現場では当たり前のアイテム。ガムテープより細い、黒いテープ。テレビの収録現場などで、ADさんがバッグにつけているのを見たことあるかと思います。
便利さではトップクラスなのに、何故もっと褒めてあげない!?絶対お世話になってるはずだ!と、「マニアックモノガタリ」で取り上げるには絶好のキャラクターと勝手に盛り上がってしまったので、その魅力に迫ると同時に、実際の現場ではカメラマンがどのようにして使用しているか、実例を交えて紹介していこうと思います。
まずは簡単に説明を、「パーマセルテープ」とは。
セロハンテープ以上、ガムテープ以下といった位置づけ。マスキングテープの一種と考えていただければ、わかりやすいかと思います。実は、知らない間にパーマセルというブランドは消えていて、現在はシュアーテープという呼び名になっております。(中身は変わらず)ただ、撮影現場では「パーマセル」という呼び名が固定されており、通称は「黒パー」と呼ばれ、略されすぎて、「黒」とだけで呼ばれる時も。ちなみに黒以外に白とベージュがあり、表面のコーティングや耐熱性、粘着力に微妙な差があります。
ガムテープとセットで持っていることが多い。
なんで、そんなにただのテープに人気があるのか。主な理由を並べてみました。
・手でちぎれる。
・熱に強く、遮光してくれる。
・粘着力はあるが、剥がしても糊が残らない。
・貼り直しがきく。
早速、実例写真も交えて詳しく見てみましょう。
ハサミもカッターもいらない
人気の一番の理由は手でちぎれる点。
セロハンテープなどと違って、パーマセルテープは和紙のような紙ベースで作られています。撮影時間が限られている現場では、ハサミやカッターを使う時間さえもったいない。また、現場では腕輪のようにして持ち歩きます。こうしておくと、左手に何か持ったままでも片手でちぎることが可能です。
ファッション誌のスタジオにアシスタントとして勤務していた時の事。カメラマンから「テープちょうだい」と言われた時(どれくらいの長さかは言ってくれません)、撮影シーンからカメラマンが求めている長さを推測し、いかに速く、適切な長さをちぎって渡せるかが、アシスタントとして出来る出来ないの判断基準の一つとされていました。
今となっての攻略法としては、モタモタしていると怒られるので、とりあえず長めにちぎって渡しておけば、あとはカメラマンが勝手にやってくれます。まずはスピード重視で渡しちゃいましょう。(一言文句言われるかもしれませんが、そこはスルーで)
腕に通しておくと片手でちぎれる。
「遮光性」「耐熱性」に自信あり
ポートレートや物撮りなど、スタジオ撮影時には大型ストロボを使います。
大型というだけあり、それなりの大きな電力を使うので、ストロボ本体の熱さもけっこうな温度になります。連続発光によって、ちょっとしたボヤ騒ぎなどはよくある話。
光を柔らかくするため(日差しが強い時レースのカーテンを引くイメージ)、ストロボにトレーシングペーパーをつけることはテッパンですが、そんな時は耐熱性に優れたベージュのパーマセルを貼り付けておけば、より安心です。また黒テープは遮光性も優れているので、余分な光がレンズに入ってこないようにカットしたり、何枚かテープをつなげて面にすることもあります。
黒パーマセルで面を作り、光の行方をコントロール。
しっかり固定してくれるけど、貼り直しもきく優れもの
プラモデルを作ったことのある方は、マスキングテープの存在は昔からご存知でしょう。塗料がはみ出ないように、その名のとおり塗らない部分をマスキング。現在はおしゃれ文房具として、様々な柄がついたものが売られています。マスキングテープそのものがアートとして表現されている時代。もう、ガンダムカラーとセットで買わないのですね・・・。
貼り直せるといった点も、人気の一つでしょう。とりあえずの仮止めで使っても、本番で使っても問題ないポテンシャル。マスキングテープも便利なのですが、カメラマンとしては粘着力がもうちょっと欲しいところ。その点、ガムテープまでは強力じゃないけど、マスキングテープよりはしっかり止めてくれるパーマセルは「グラディウス」のレーザーぐらい、信頼のアイテム。
ただ、気をつけていただきたいのは、壁に何かを貼り付ける時。
貼り付ける時はいいのですが、壁紙が古い場合、勢いよく剥がすと壁紙ごと剥がれてしまう事も。木目調のプリントを貼ってある机なんかも要注意。人様のお家にお邪魔しての撮影なんてこともありますので、そんな時はいつも以上に慎重に剥がしております。
左)パーマセルテープ右)シュアーテープ
スポーツ界でも「テーピング」は、怪我の予防など競技に欠かせないアイテムだと思います。同じ括りになるかわかりませんが、粘着テープの便利さに気づいていただければ。
筆者はこのテープを知ってから、日常生活でもほとんどこれを使っています。
次回もパーマセルテープの活躍ぶりを紹介いたします。
マニアックモノガタリ「粘着テープ」vol.01 終
2023年4月公開