――プロレスリング・ノア2・21東京ドーム大会において武藤敬司さんの対戦相手がなかなか決まらない状況が続きました。
「武藤さんのなかで何人か候補はいたはずです。当初から2023年に入ってからだと思っていましたし、なかなか決まらないなという思いは私にはなかったですよ。プロレスは流れとか、タイミング、インパクトとかが大事になってきますから。それが重なるときに決めればベストなので」
――1・22横浜アリーナ大会の前日に新日本プロレスが同じ場所で大会を開催して内藤哲也選手の試合後に武藤さんがリングイン。そして「お前に決めた」と。
「その意味ではベストな流れ、ベストなタイミングだったのではないでしょうか。もちろんインパクトもありました。普通、他団体の興行に乗り込んでいって勝手に対戦相手に指名したら、ブーイングですからね(笑)。それも日本で今一番人気のあるユニット『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』のリーダーに対してですから。私も会場にいましたけど、ブーイングじゃなく逆に盛り上がってしまうのも武藤さんの魅力というか、魔力というか(笑)」
――ちょうど1カ月前での発表になりました。反響はどうでした?
「チケットは一気に動きましたよ。おかげさまでかなり売れています」
――内藤選手は武藤さんに憧れてきたという背景もあります。
「武藤さんにしても、内藤選手となら凄い試合ができるんじゃないかって思えたから指名したんだと思います。バックステージでも『ムタとNAKAMURAの試合を超えたい』『ムタに負けたくない』って言ってますし、本当に年間ベストバウトを狙ってますよ、あの人」
――凄いですね。ライバルはムタって(笑)。
「単にセレモニーマッチにはしたくないというのが武藤さんの思いですからね」
――東京ドーム大会は武藤さんの引退試合のみならず、かなり仕掛けていますよね。新日本プロレス、全日本プロレス、ドラゴンゲートとノアの対抗戦が「裏テーマ」になっています。個人的にはIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカ選手とGHCヘビー級王者・清宮海斗選手のシングルマッチが楽しみです。
「なぜ対抗戦なのかと言えば、武藤さん自体、対抗戦が好きだし、それこそ武藤さんと言えばUWFインター高田(延彦)さんとの対抗戦を思い浮かべる人って多いじゃないですか。武藤さんを外したコンセプトではなく、あくまで武藤さんの歴史を踏まえたうえでのコンセプトとして今回のいろいろな対抗戦があると捉えていただければ」
――先ほど、AEWのスター、ダービー・アリン選手をわざわざ招聘したのもプロレス界の未来を考えて、という話もありました。その意味もある、と。
AEWのスター、ダービー・アリン参上!
「まさにそうです。武藤さんの引退試合ですけど、これからのプロレス界のためになる興行になればいいと考えていますし、かつそれは武藤さんの願いでもあります」
――ライティングを含めたいろんな演出も考えているのでしょうね。
「そこはもちろん。楽しみにしていただければ」
――業界最王手である新日本プロレスよりも、ここにはかなり力を入れているようにも感じるのですが。
「いや、新日本プロレスさんはもうそのハードルを越えているからだと思います。安定的な市場をつくれているからマットのほうに集中できる。でも我々はまだそのレベルに達しているとは言えません。ビッグマッチでは演出も含めてプロレスリング・ノアを楽しんでもらって、それを続けていくことで安定的な市場をつくりたい。そうなれば演出も大事ではあるんですけど、我々もそのハードルを越えていくことができれば演出のやり方も少しずつ変わっていくとは思いますよ」
――2・21東京ドーム大会がどんな興行になればいいと思っていますか?
「私としてはプロレス史上最大となるプロレスビジネスをやりたい、と」
――具体的に教えてください。
「格闘技の世界では那須川天心選手と武尊選手が対戦した『THE MATCH』が凄い盛り上がりだったわけじゃないですか。同じ東京ドームで、同じABEMAのPPV中継で。あの興行は私にとっても凄く刺激になりましたし、武藤さんの引退興行をプロレス史上最大にしたいという思いを強く持つきっかけにもなりました。会場に多くのお客さまに来てもらって喜んでいただくとともに、ABEMAのPPVで本当にたくさんの方に見ていただきたい。武藤さんのラストファイトを、そしてこれからの日本のプロレスの未来を見ていただきたいなって思いますね。
――ちょっと心配なのは、武藤さんのコンディションですよね。
「(ケガを抱えた)体のことがあるから引退を決断されたわけだし、もちろん良いか悪いかと言ったら、決して良くないとは思います。ただ注目を集めるのが何より好きな人ですからね。武藤敬司らしくカッコ良く、締めくくってほしいですね」
(終わり)