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SPOALの本棚 『新日本プロレス物語 第2巻』 著者 高木圭介インタビュー VOL.1

アントニオ猪木が1972年に新日本プロレスを創立してから50年。紆余曲折を経て今や世界への進出も本格化する業界最王手の団体に成長を遂げた。オカダ・カズチカ、内藤哲也、棚橋弘至、ウィル・オスプレイら人気、実力を兼ねた個性あふれるレスラーたちがしのぎを削っている。

週刊プロレスを刊行するベースボール・マガジン社によって新日本創立50周年を記念した「新日本プロレス50年物語」三部作が展開されることになり、「第1巻昭和黄金期」(流智美著)に続いて2022年11月に「第2巻平成繁盛期」が発刊された。

第2巻の著者は元東京スポーツ、新日本プロレス担当記者の高木圭介さん。「平成の新日本」を追ってきた人でもある。今は独立されてフリーライター兼コラムニストとして活躍中だ。敏腕記者時代の圧倒的な情報量のみならず、高木さんらしい軽快な〝ツッコミ〟や〝毒〟も楽しめる。執筆の大変さから新日本プロレス担当記者時代の話までいろいろとうかがいました。

二宮 第2巻で取り上げている時期は東京ドームに初進出した1989年(平成元年)から低迷期とも言われる2008年(平成20年)までの20年。「その年ごとの時代解説と、キーワード集&こぼれ話」という2部構成によって、時系列で整理されているから非常に分かりやすかったです。原稿を書くにあたってこれは相当に苦労されたんじゃないか、と。

高木 昭和のプロレスなら結構いろんな資料があるんだけど、平成期に入ってからグッと減ってしまうんだよな。書籍のオファーがあったのは(2022年)2月ごろで、そこから半年間かけて下調べしましたよ。図書館に行って新聞、雑誌を読み漁ったりして。東スポはほとんどどこも置いてないんだけど(笑)。

二宮 高木さんは1993年に東京スポーツに入社されて、そこから「新日本と言えば高木記者」というふうになっていきました。

高木 そんなこと初めて聞いたぞ(笑)。

二宮 僕がスポニチで新日本担当のころは随分とお世話になりまして……。だからそんなに調べなくても大体は頭のなかに入っているんじゃないですか?

高木 忘れていることばかりだから調べ直した。何があったかって自分で年表をつくってレジュメにして、自分が取材したものと照らし合わせていった感じかな。執筆は2カ月間ほどでバーッと書いていった。

二宮 いかつい見た目(※高木さんは神奈川大レスリング部出身)と違って、相変わらず丁寧に仕事されてますね~。第1巻とは全然テイストが違うので、そこは著者に裁量が任されているんですね。

高木 そういう意味ではやりやすかったよ。

二宮 読んでみていくつか「へぇ~」と思ったところを挙げたいと思います。まずは1989年(平成元年)の「キーワード&こぼれ話」での「獣神ライガー」。永井豪さんの漫画「獣神ライガー」から生まれて、正体は山田恵一だと最初は明かされていたんですね。ツノが短かったのに長くなって「獣神サンダー・ライガー」に。正体、ツノ、改名、そして全身を覆うコスチュームなどいろいろ画期的でした。

高木 ほかにも候補者はいたんだよ。海外遠征中だった船木(誠勝)さんもその一人だったとか(1989年にUWF移籍)。なぜかイケメンにマスクをかぶらせることって多いよね。

二宮 ザ・コブラのジョージ高野さんもかなりのイケメンで知られていました。全日本プロレスで言えば、タイガーマスクになった三沢光晴さんもそうですもんね。

高木 まあ正体をバラさなくとも山田さんだって分かるよ。でもその後は「正体不明」にしたりして、そのあたりは実にファジーな感じだったんだよ。

二宮 1990年(平成2年)で言えば、「ルー・テーズ引退」。フィニッシュホールドのSTFを授けた蝶野正洋さんと引退試合を行なったのは知っていましたが、あのとき74歳だったんだなって。高木さんは「高齢選手が珍しくない現在の視点で見ると、当時のテーズのコンディションやスピードが尋常ではないことが理解できる」と記されています。

高木 テーズさんは本当に凄い。最晩年までのぼり棒を横で並行になれたらしいから。俺、大学時代にテレビでその試合を観たんだよ。当時は高齢選手の出場に賛否あったらしいけど、テーズさんの身体能力は半端ないとそのときも感じたね。

二宮 定期的に試合をしている藤波(辰爾)さんは現在69歳。コンディションの良さと筋肉の張りには驚かされますが、偉大な大先輩が70代半ばまで試合をやっていたとなると励みにもなりますね。

高木 二宮くんはなんか「キーワード&こぼれ話」ばかり読んでるな。

二宮 いや、そんなことはないですよ(笑)。ただどの事象も興味深くて。特に1999年、2001年、2002年あたりは僕も新日本プロレス担当でしたから、昔を重ねながら読ませていただきました。本の流れで言うと、こんなことまで載っているの、と思ったのが2002年(平成14年)の「INP」です。

高木 イノキ・ナチュラル・パワーⅣね。新日本と言えばやはり猪木さんだから。

二宮 じゃあ次回はこの話題から始めていきましょう。

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