いざ、真夏の湘南へ まずは鎌倉の大仏さまから!
3月にお届けした“アキレス腱断裂編”から5カ月。松葉杖をついていた私もすっかり傷が癒え、「海に出かけて夏気分を味わおう!」と思い立ち、相棒の近藤カメラマンとともに神奈川県の湘南地区に足を運んだ。
青い空と、光り輝く海――。そんなイメージをしていたけど、あいにく朝からパラパラと雨。この日の天気予報は降水確率が終日50%以上だ。「こりゃダメだな」と私は撮影に少しでも支障のないように黒い折りたたみ傘ではなく、透明のビニール傘を開きながら国分寺の家を出た。
ところが――。
待ち合わせの鎌倉駅に近づくにつれ、「うん?」という感じで青空が見え始めたではありませんか。さすが、近藤さん、晴れ男! このとき地獄のような暑さに襲われることになろうとは、2人とも知らなかったのである。
この日のさんぽは鎌倉駅からスタート
さて、私たちは江ノ電鎌倉駅で「のりおりくん」という乗り降り自由のチケット(800円)を買い求め、緑のかわいらしい江ノ電を待った。平日の夏休み、しかもコロナ感染者数は高止まりという状況で、人手はどうかなと思ったけど、観光客はそれなりにいて、しかも若い人たちが目立つ。古都鎌倉はコロナに負けない、若者をも引きつけるオシャレ観光地なのだ!
江ノ電が動き出すと、人家が電車にぶつかりそうなほど迫っているのが分かる。この路面電車ふうの味わいこそが江ノ電の魅力だろう(路面電車の区間も一部ある)。目を凝らすとけっこう立派な家が多く、思わず「高いんだろうな~」と庶民のつぶやきをしてしまう。
そんなことをぼんやりと考えながら3つ先の長谷駅で下車。私たちは高徳院にある鎌倉大仏に足を向けた。既に雨の心配はまったくなさそうで、容赦ない真夏の太陽が少しずつ、そして確実に私たちにダメージを与えていく。それでもまださんぽは始まったばかりだ。私と近藤カメラマンは会話を弾ませながら大仏に向かった。
この時点でかなり暑かった
「今回のメインテーマって『スラムダンク』なんですよね?」(近藤)
「そうです」(渋谷)
「大仏は何か関係あるんですか?」(近藤)
「いえ、ないですけど今年のNHK大河ドラマが『鎌倉殿の13人』なので、少し気分を出そうかなと」(渋谷)
そう、今回のテーマのひとつは1990年代に一世を風靡したバスケットボール漫画の金字塔『スラムダンク』だ。スラムダンクといえば湘南が舞台であり、漫画に登場する“聖地”がいくつかある。そこを巡ってみようというのが今回のメインテーマなのだ。
軽いトークをしながら歩くこと10分、鎌倉大仏殿高徳院に到着した。私たちは参観料300円を払って中へと入った。
夏の青空にくっきりと浮かび上がる大仏さまは実に神々しく、神社仏閣に萌えるタイプではない私でも思わず見とれてしまった。やっぱり大きなもの(台座を含む高さは13.35メートル)、美しいものというのは人の心を動かすのだろう。ましては大仏が建立された時代は高い建物もないのだから、庶民は心から大仏さまをありがたがったに違いない。
神々しいたたずまいの大仏さま
さて、大仏さまとスポーツに縁はある?
近藤さんに聞かれたこともあって調べてみると地元、神奈川新聞の電子版「カナロコ」にナイスな記事を発見。2019年のラグビーワールドカップ日本大会開催にあたり、優勝トロフィー「ウェブ・エリス杯」が初めて一般公開されたのが、決勝の舞台となる横浜と、ここ高徳院だったという。
記事によれば鎌倉が「国際観光地」であり、「神聖なトロフィー」をお披露目するのにふさわしい場所として白羽の矢が立ったようだ。掲載されている写真は金ぴかの優勝トロフィーを、大仏さまが慈悲に満ちた表情で見守っている。何だか御利益が二重にありそうにも思え、「訪れた300人ほどが記念撮影をした」という記事に深くうなずいた。
気がつくと近藤カメラマンは「息子が受験生なもので」と断り、売店で合格祈願のお守りを購入。ああ、そういえば夏の高校野球大阪府予選に出場した私の甥っ子も受験生だったなあ、と思い出しながら、まったくお守りを買おうという発想にはつながらず、私たちは静かに高徳院を後にした。
長谷駅で再び江ノ電に乗り込み、次なる目的地、鎌倉高校前駅に向かおう。そう、この地こそ『スラムダンク』ファンなら知らない者がいないという巡礼スポットなのだ。私たちは早くも暑さにやられ始めた体を江ノ電のエアコンで冷やしながら西へ進路を取った。
2022年8月公開