<CASE.4>
ホテルに着くまでが旅行です。このとき僕が取った宿はモザイク地区の小さなオステルでした。大きなホテルと違って大きな看板がでていることもないので、iPhoneの位置情報だけが頼りでした。このとき時刻は既に21時を回っていました。辺りは暗く人気もありません。危険なのでスマフォを片手に歩き回るわけにはいきません。位置情報を確認するときは、壁にむかいスーツケースは壁と体に挟んだ状態で速やかに確認します。
右後ろから人の気配がした次の瞬間、手が伸びてきました。ビックリした僕は体を左に捻って防御の姿勢をとります。どうやら後ろ向きで立ち止まっている僕の背後から走りながらスマフォを盗もうとしたようでした。
あまりに急だったためスマフォは僕の手を離れて地面に落下しました。犯人とは3メートルの距離で、ちょうどその中間地点に落ちました。僕は咄嗟にスマフォに手を伸ばしかけて止めて周囲を見回しました。仲間がいてスーツケースを持っていかれることを警戒したのです。
周囲には僕らしかいませんでした。睨み合う2人。どのくらい睨み合ったのか分かりません。やがて男は後ずさりしながら走って逃げていきました。
●対策
到着時間が遅い場合は慣れたホテルかタクシーで横付けできる大きなホテルを取りましょう。
<CASE.5>
地下鉄周りはスリの温床です。特にサグラダファミリアなど観光名所の駅や、そこに向かう乗り継ぎ駅は釣場です。その中でも上りエスカレーターは特に危険です。エスカレーターに乗るときたいていの人は前を向いています。すると、スススっと背後から手が伸びてきます。ちょっと手が混んでいると、その手をスカーフなどで隠してくるツワモノもいるので注意が必要です。
僕がみかけたのはスラブ系の夫婦でした。なんの気になしにエスカレーターに乗っていて、ふと足元に目をやったら、スッと手が伸びてきました。
「へい!」
咄嗟に大きな声をだして後ろを振り向くと痩せこけた男が「どうしたんだい?」みたいな感じでおどけています。文句を言いたいけれど、証拠もないし、言葉も喋れないので「ぐぬぬぬ」となっているところに、今度はその隣にいた女性がスカーフで隠した手を近づけてきました。
「もういいわ、いい加減にしろ!」
●対策
エスカレーター乗るときは横向きで視線は足元!
<CASE.6>
最後に地下鉄周りでもうひとつ。これはかなり強引な手口です。
サグラダファミリアに向かう乗り継ぎ駅で、地下鉄を待っていると4、5人の男がたむろしていました。ちょっと嫌な感じがしたので、地下鉄が構内に入ってきたタイミングで乗り口を変えました。すると、その男たちも僕のあとを着けてきました。
車内に乗り込んだ瞬間、その男たちとおしくらまんじゅう状態になりました。混んでいるのかと思いましたが、周りを見渡すとメチャクチャ空いています。男たちの防御網を破るかのように体を左右に振りながら、車両の隅っこへ移動します。
「ドンッタッチミー!!」
とりあえず出てきた言葉を大声で叫びます。こういうときは大きな声をだすに限ります。日本語でもなんでも良いので大きな声で威嚇して対抗しましょう。
●対策
とにかく大声を出すこと。黙っていても誰も助けてくれません。
コロナウイルスの影響で海外への渡航は旅行だけでなく取材すらも制限されていますが、一日も早い終息を願っています。そして、海外にでられるようになったら、安全に楽しい旅行を送るための参考にして頂ければ幸いです。
終わりッ
2020年9月公開