「バッグの中身は聖域だ」
みなさんあまりご存知ないかもしれません。映画「ザ・バッグマン 闇を運ぶ男」(2014年)での一言。一つのバッグをめぐるサスペンス映画。
「バック・トゥー・ザ・フューチャー」ジョージ・マクフライ役で有名なクリスピン・グローヴァーの演技が印象的。
この映画では普通のボストンバッグが重要なポイントになっていますが、カメラマンの必須アイテムはもちろん「カメラバッグ」
これまた100点満点のバッグが存在しない永遠のテーマ。誰もが一度は沼にハマっているのでは。
独断と偏見でお送りする、ここ20年ほどのカメラバッグメーカー変遷史。
■第一期 報道現場が花形 ショルダーバッグ全盛期
僕がカメラマンになったのは90年代も終わりかけ。デジタルカメラはありません。まだまだフィルムが現役です。この頃のバッグの主流は肩から掛けるショルダーバッグタイプ。
先輩からのおすすめファーストバッグは「ドンケ」と「テンバ」の2大ブランド。どちらの派閥になるかを非常に迷った記憶があります。
当時の先輩からの一言。単三電池と黒パーマセル(※)、iso800のフィルムは常時バッグに入れておけ。
※「黒パーマセル」・・写真用とされている黒いテープ。詳細はまた別の機会で。
結局自分は「DOMKE」派に。セレクトショップで販売されていたことも。
■第二期 キャスター付きでシャレオツに
スポーツ現場にはバズーカーと言われている(現場では「長玉」「長いの」といいます)超望遠レンズを持っていきます。
専用のレンズケースもあるのですが、なるべくバッグは一つにまとめたいのがカメラマンの心情。
スポーツカメラマンの先輩達は旅行用のスーツケースとして有名な「リモワ」を使っていました。通称「コロコロ」。
黒いバッグが大多数のところにシルバーの光沢。値段も高いですし、ちょっとしたステータスに。
初めての「myリモワ」に長玉を入れ、現場に行った時はちょっと誇らしげな気分でした。
もう一点、キャスター付きといえば「ペリカン」。米軍が使用している事でもお馴染み。
こちらは防水密閉機能が優れていて、雨天時の運搬は何の心配もいりません。
また、車が踏んでも壊れないほどの堅牢性を持っているので、椅子や踏み台代わりはお手の物。
両メーカーとも、超望遠レンズがぴったり入るのと、飛行機内に持ち込めるサイズというのも魅力の一つかと思います。
当時の先輩からの一言。コロコロのタイヤは自分で交換しろ。
■第三期 現在も根強い人気 多種多様なリュックタイプ
キャスター付きタイプは身体に負担がかからないのですが、階段、舗装されていない悪路を苦手とするところがあります。
00年代に入ってきてから、リュックタイプは「ロープロ」や「マンフロット」といったメーカーが存在感を出してきます。やはり両手が使える、肩から落ちるのを気にしなくていい等、機動性を考えるならリュックが一番でしょう。
当時の先輩からの一言。年取るとリュックタイプは腰にくる。
何回も買い換えて、現在はこちらのシリーズに。
■第四期 写真業界のリア・ディゾン「シンクタンクフォト」
超望遠レンズをリュックで背負うと、腰はもちろん、首や肩にもダメージがきます。
また、リモワ等はそもそも旅行用なので、中にカメラ専用の仕切りはありません。自分でそれを調達し、なんとかカメラケースに仕立てていました。
まだまだ満点のバッグを模索中の時に、黒船襲来の噂が。
アメリカから「シンクタンクフォト」の参入です。
現在、ほとんどのカメラマンが使用しているのではと思うほど。
堅牢性、仕切りの自在度も満足ですし、小物入れからキャスター付きまで様々なタイプを網羅し、さらに同タイプでも豊富なサイズ展開が人気の一つかと思います。
先輩からの一言。「thinkTANK photo」って最初、読み方わからなかったよ。
我がバッグファミリー。撮影内容によって使い分ける。
■第5期 時にはムーブメントを。カメラバッグの未来は!?
幸運にも、フィルムからデジタルに移行する変革期のど真ん中を体験しました。
現場に持っていく露出計、フィルム等のアイテムは、メモリーカード、パソコンに変わり、全体の重量は増えたかもしれません。
現在ではミラーレスカメラの勢いがとまりません。
2022年7月にはニコンが一眼レフの開発から撤退するとのニュースも流れました。
これから先は、カメラから直接クラウドにデータ転送され(もはや写真という概念ではなくたんなるデータ!?)、現場にパソコンは必要ないけれど、動画用に録音マイクや、はたまた小型ドローン等が必須アイテムになったりするかもしれません。
カメラバッグも含めて、写真業界の次なる変革の波はそこまで来ているのでしょうか。
「カメラマンのこだわりギアシリーズvol.01 カメラバッグ」 終
2022年8月公開