二宮 いよいよ始まりました新企画「LOVE FOOTBALL」。試合を撮影する際、スポーツカメラマン高須力はどのようなことを意識しているのか。ちょっと頭のなかをのぞいてみたいと思います。かつ写真もバンバン掲載していただきます。よろしくお願いいたします。
高須 よろしくお願いいたしますっ!
二宮 最後に「っ」が入ってるときの高須さんは気合いが違う(笑)。第1回目のテーマはサッカー日本代表のカタールワールドカップ、アジア最終予選。埼玉スタジアムで開催された中国代表、サウジアラビア代表との2連戦を取り上げていきましょう。私も高須さんも取材に向かいました。
高須 1月末、2月頭だというのに案外寒くなかったですね。
二宮 試合が熱かったからかな。簡単にアジア最終予選のこれまでを振り返っておくと日本は自動的にワールドカップ出場権を得られる2位にいるとはいえ、既にホームのオマーン戦、アウェーのサウジアラビア戦で負けていて、残り4試合において1敗も許されない状況でした。中国代表、そして首位サウジアラビア代表に対して2連勝がノルマ。結果は見事、2連勝。いずれも2対0というスコアでした。これで3月24日のアウェー、オーストラリア戦に勝利すればワールドカップ出場が決まるというところまできました。
高須 僕、埼玉スタジアム2002は好きなんですよ。
二宮 ジーコジャパンのころから「最終予選は埼スタ」みたいになっていて、ずっと最終予選を突破できているからね。ゲン担ぎもあって、俺も最終予選は埼スタじゃないと落ち着かないな。
高須 いやいや、写真的に。きょうは撮影の話でしょ。
2021年1月27日、ホームの中国戦で左サイドを駆け上がる長友佑都。
二宮 そうでした! 写真的にいいっていうのは?
高須 陸上トラックがない分、フォトポジションが当然ピッチと近くなるのが理由の一つ。そしてもう一つというか、これがデカいんですけど、照明がきれいなので、写真の色みもきれいに出るんですよ。おそらくLEDを導入したのが早かったんじゃないですかね。名前は言わないほうがいいと思うので出しませんけど、スタジアムによっては全然、色が良く出ないところもある。だから埼スタだと「きょうはいい試合撮れるかもな」って期待しちゃいます。
2013年6月4日、ブラジル大会の最終予選、ホームのオーストラリア戦。決戦に向かう選手と密集するフォトグラファー、そして、大観衆を狙った一枚
二宮 今は新型コロナウイルスの感染対策でサポーターも声を出して応援することができないのでスタジアムが沸騰することはないけど、最終予選の撮影で何か気をつけていることってあります?
高須 やっぱり熱い戦いの場ですからね。ストレートにプレーを撮りたいし、あとは定められた撮影場所次第ですけど、ベンチ前はカメラマンみんな狙ってますよね。ゴールが決まったらベンチに行ってみんなで喜ぶじゃないですか。撮影ポジションで一番おいしいのは日本ベンチサイドのメインスタンド側ですね。
二宮 ベンチ前はかなり盛り上がるから、確かに「最終予選感」が出ますよね。
高須 アウェーだと逆に照明が悪いほうが、アウェー感が出るからいいんですよ。でも今はアジアもいいスタジアムが増えてきて、照明も悪くない。荒い感じが出せないのは、ちょっともどかしいところ(笑)。後はアウェーの観客や看板をわざわざ写り込ませるとか、そういうのもテクニックとしてはありますね。
2017年3月23日、ロシア大会の最終予選。アウェーのUAE戦。あえて広めの構図にすることでカンドゥーラを纏った観客を写し込んでアウェー感を演出した一枚
二宮 完全アウェー感が伝わるには、相手のサポーターだったり、ボコボコのピッチだったり。まあ激しいバトルもそうかな。
高須 そうですね。親善試合であれば(媒体が)切り抜きしやすいようにとか新しいユニフォームだったら1人ひとりプレー写真を撮るとかあるんですけど、アジア最終予選を含めた公式戦になると対戦相手を入れて撮るのが基本にはなってきますね。
二宮 次回は中国戦、サウジアラビア戦のプレー写真を見ていくことにしましょう。
2022年3月公開