SPOAL

Entertainment
しぶさんぽSeason13 VOL.3

モノレールの車窓に藤井聡太さんが五冠を達成した王将戦の舞台

立川駅でJR中央線を下車した私、渋谷淳とカメラマンの近藤さんは多摩都市モノレールに乗り換えるため、駅前のデッキを通って立川北駅に向かった。人通りは多いものの、デッキは広く、平らで、松葉杖でも歩きやすい。

松葉杖でもエスカレーターには乗れます

 

エスカレーターを使って立川北駅の改札へ。改札からホームまではエレベーターを使わせてもらう。移動はスムーズ。バリアフリーはバッチリだ。

ホームに滑り込んできたモノレールがすいていて少し安心する。松葉杖で電車に乗るとき、混み具合によって1本見送ることがよくある。やっぱり混んでいると乗りにくい。ギブスで立ったまま、というわけにはいかないし、自分から「席を譲ってください」とも言えない。

「では、私は座らせていただきます」

相棒にそう告げて、座席に腰掛けた。近藤さんはここでひと仕事。モノレールの車内から、スポーツに関係ありそうな施設を撮影しようというのだ。最初の目当てはモノレールが走り始めてすぐに現われた。

その名はSORANO HOTEL(ソラノホテル)。2020年6月に開業したばかりのホテルで、最上階のインフィニティプールという、なんだか空中に浮いているようなプールが有名だ。もちろんお値段はお高め! それでも行ってみたいという人はたくさんいるだろう。

このソラノホテルはつい最近、将棋の王将戦の会場となって注目を浴びた。将棋界の若き天才、藤井聡太四冠が渡辺明三冠を4連勝で下してタイトルを獲得。19歳5ヶ月での五冠達成は、あの羽生善治九段が達成した22歳10ヶ月を大幅に更新する大記録というからすごい。やったぞ、藤井五冠! すごいぞ、ソラノホテル!

車窓からGREEN SPRINGSにあるSORANO HOTEL(奥)

 

さて、ここで立川立飛エリアについて少し説明させてほしい。立川駅北口の広大な土地を開発したのは、所有者である立飛ホールディングスだ。戦前から戦後にかけて飛行機を作っていた同社がこの地区の開発に着手し、2015年にららぽーと立飛をオープンしたのが始まりだった。その後、スポーツ施設のアリーナ立川立飛、ドーム立川立飛が完成し、ソラノホテルがあるGEEN SPRINGSも完成した。いまや立川は「住みたい街」としての人気も高く、オシャレタウンに変貌を遂げている。

モノレールが立飛駅に近づくと、アリーナが見えてきた。と、その前にある砂浜のような一角がTACHIHI BEACH。ビーチバレーやビーチフットサルの大会が開かれるスポーツ施設で、東京ヴェルディビーチサッカーチームのホームだ。

普通のレクリエーション施設としも営業しており、夏は水着を着てバーベキューを楽しむことでき、冬は鍋パーティーも可能。海のないところでビーチの気分を味わうことができる。

こちらはTACHIHI BEACH

 

さて、ついに今回の目的地、アリーナ立川立飛に到着した。エレベーターを降りて、入り口まですぐなのがありがたい。今日のイベントは日本ハンドボールリーグ、ジークスター東京vs.湧永製薬の一戦。このアリーナ、催されるスポーツイベントはもちろんハンドボールだけではない。

こちらでは卓球の国内最高峰、Tリーグの試合もたくさん行われている。過去には大相撲の夏巡業「立川立飛場所」が開催され、テニスの東レパンパシフィックオープンも開かれた。

フットサルのFリーグ、立川・府中アスレティックFCはこのアリーナを本拠地としている。バスケットボールのBリーグ、アルバルク東京の本拠地もここ(22-23シーズンからホーム変更)。ボクシングでも地元の石川ボクシングジム立川がここで興行を開催して、私も取材に訪れたことがある。

我が町をスポーツで豊に――。立飛グループの取り組みは立川のスポーツ関係者を大いに刺激していることだろう。

さあ、試合を楽しもう! 今日は仕事抜きでチケットを買っての観戦だ。心情的には取材をしているジークスターに傾きそうだが、今日はフラットな気持ちで湧永製薬も応援する。リーグ戦で2位につけるジークスターはこの試合に勝てばプレーオフ進出が決まる。一方の湧永は今季ここまで8位と元気がない。何とか意地を見せたいところだが……。

スタンドで試合を観戦

 

試合は戦前の予想に反して湧永が26―22で勝利した。この日、湧永の選手たちの気迫はすさまじかった。ゴールキーパー陣はスーパーセーブを連発した。フィールドプレーヤーのシュートも、何かテクニックで決めているというよりは、気持ちでねじ込んでいるような迫力があった。

湧永のメンバーは勝利の瞬間、だれもが雄叫びを上げた。涙を流す選手までいた。リーグ戦のたった1試合でここまで感情をあらわにするのは珍しい。いいものを見たな。そう思いながら会場をあとにした。

この日、最も心配していた雨は、我が家の最寄り駅、JR西国分寺駅についたころパラパラと降ってきた。松葉杖で傘は差せない。でも、この程度なら問題なし。本日の歩数計は3940歩。ふだんの「しぶさんぽ」の4分の1程度だが、松葉杖ということもあり、今回はこれで十分に満足だった。

無事さんぽを終えて満足!

 

おわり

2022年3月公開

New Arrival

すべて見る
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

モノレールの車窓に藤井聡太さんが五冠を達成した王将戦の舞台 立川駅でJR中央線を下車した私、渋谷淳とカメラマン […]

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

アジア最終予選の最後の舞台は雨の吹田。インドネシアを迎えての一戦でした。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

アジア最終予選の最後の舞台は雨の吹田。インドネシアを迎えての一戦でした。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

カメラマン近藤によるボクシングフォトギャラリー第8弾!「Road to the RING〜第8章〜2025.6.8 有明コロシアム」vol.02はWBC世界バンタム級王者中谷潤人vs IBF世界バンタム級王者西田凌佑!2025年6月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

カメラマン近藤によるボクシングフォトギャラリー第8弾!「Road to the RING〜第8章〜2025.6.8 有明コロシアム」『Prime Video Boxing 13』の模様をお届け!2025年6月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「Viaje con pro wrestling NOAH」好評連載第22弾!2025.05.03 両国国技館で行われた「LINEヤフー Presents プロレスリング・ノア25周年記念大会 MEMORIAL VOYAGE 2025 in KOKUGIKAN」の模様をお届け!2024年5月公開

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

本戦出場を決めたサムライブルーがサウジアラビア代表と対戦しました。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
高須力

SPOALカメラマン

高須力

FIFAワールドカップ・アジア最終予選、日本は世界最速での予選突破を賭けてバーレーン代表と対戦しました。髙須カメラマンが撮影したサムライブルーの戦いをご覧ください。

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「Viaje con pro wrestling NOAH」好評連載第21弾!2025.03.22 後楽園ホールで行われた「STAR NAVIGATION PREMIUM 2025」の模様をお届け!2025年3月公開

記事を読む
Non Fiction
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

カメラマン近藤によるボクシングフォトギャラリー第7弾!「Road to the RING〜第7章〜2025.3.13 両国国技館」vol.02は寺地拳四朗vsユーリ阿久井政悟!2025年3月公開

記事を読む
Prev
Next

同じジャンルのコンテンツ

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

今回はパリオリンピックにちなんでフランスにゆかりのある東京日仏学院を最初に目的地に選んで散歩をスタート。偶然見つけた“サムライ施設”に立ち寄ったあとは、神楽坂から早稲田へ足を伸ばし、スポーツとまた出会う。炎天下の東京を歩き続けたSeason17――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

スポーツを求めて街を歩く「しぶさんぽ」も17回目を迎えた。今回はパリオリンピック開幕にちなみ、フランスとの接点を求めて向かった先は神楽坂。長く日本とフランスの架け橋となってきた東京日仏学院の所在地であり、この地域に住むフランス人も多いとか。日本文学の匂いも感じながら、風情漂う街を歩き始めた。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
高須力

SPOALカメラマン

高須力

3大会ぶりの優勝が期待されたアジアカップに挑んだサムライブルーが直面したのはアジアと世界のギャップでした。髙須カメラマンが撮影した準々決勝のイラン戦の写真をご覧ください。

高須力

SPOALカメラマン

高須力

記事を読む
高須力

SPOALカメラマン

高須力

3大会ぶりの優勝が期待されたアジアカップに挑んだサムライブルーが直面したのはアジアと世界のギャップでした。髙須カメラマンが撮影した決勝トーナメント1回戦バーレーン戦の写真をご覧ください。

高須力

SPOALカメラマン

高須力

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

全世界待望のスポーツイベント、NFLスーパーボウルがいよいよ2月11日(現地時間)に開催されます。今回のマニアックモノガタリはそのスーパーボウルを5度制覇した「サンフランシスコ・49ers」をご紹介。さあマニアックの扉を開きましょう。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

マニアックモノガタリ、アメリカンフットボール編第2弾。今回の舞台は鉄鋼の街として有名なペンシルベニア州ピッツバーグ。さあマニアックの扉を開きましょう!2023年12月公開。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森でホッケーの聖地を訪れ、そのあとはいざ平和島へ。ギャンブルにどっぷり(?)浸かったあとはただただ歩き続ける。大井・平和島かいわいのスポーツ施設の充実ぶりに目を見張った。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

寒さが身にしみ始めた11月下旬、しぶさんぽSeason16の舞台に選んだのは大井・平和島。大井といえば大井競馬場が真っ先に思い浮かぶが、足を運んでみるとほかにもスポーツとの出会いがたくさんあった――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「エンタメ大百科」×「マニアックモノガタリ」第3弾のテーマは映画「クールランニング」です。ジャマイカのボブスレー代表が1988年カルガリー冬季オリンピックに出場した出来事をベースに、彼らの起こした奇跡をコメディタッチで描いた作品。マニアック男・近藤と、私、二宮が再び熱く語り合います!※一部ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年11月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

マニアックモノガタリ、アメリカンフットボール編の舞台はテキサス州ヒューストン。時の波間に消えたあるチームを、テキサス州の歴史と共にご紹介。さあマニアックの扉を開きましょう。2023年10月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「エンタメ大百科」×「マニアックモノガタリ」のコラボレーション第2弾は、映画「キャノンボール」。40年前のカーアクション映画を熱く語り合います!※一部ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年10月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

SPOALの企画「エンタメ大百科」と「マニアックモノガタリ」のコラボ。テーマは映画ロッキーシリーズ。モノではありませんが、この作品を心の大切な宝モノにしている近藤俊哉と私、二宮寿朗がエイドリアーン!とロッキー愛を叫びながら、語り合います!※ネタバレを含みますのでご注意ください! 2023年10月再公開

二宮寿朗

SPOAL編集長

二宮寿朗

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

SPOALディレクターの石井が発信するeSports情報。今回は現在のeSports大会などを紹介していこう。

石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

記事を読む
石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

SPOALディレクターの石井はF1以外にも趣味がある。それはゲーム。ゲーマー自身から見たeSportsの発展と展望を語っていきたい。

石井邦良

SPOALディレクター

石井邦良

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

粘着テープじゃないけれど、カセットテープにビデオテープ。あれ?テープってもしかして過去の物?いえいえ、パーマセルテープは違います。生涯現役、永遠の先発ローテーション。今回はより細かい使用方法や、緊急事態での対処方法もご紹介!またまたマニアックの扉を開きましょう。2023年4月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

好評連載「マニアックモノガタリ」今回は写真、映像業界なら誰でも知っている『粘着テープ』にスポットライトを当ててみたいと思います。裏方中の裏方。キングオブ小道具。その便利さに誰も異議を唱える人はいないかと。さあ、マニアックの扉を開きましょう!2023年4月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

国民栄誉賞にも輝いた登山家にして冒険家、植村直己さんの冒険舘をあとにしたSPOALの渋谷淳と近藤俊哉は進路をいざ北に取った。次なる目的地はトップアスリートが汗を流す味の素ナショナルトレーニングセンターだ――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

国民栄誉賞にも輝いた登山家にして冒険家、植村直己さんの冒険舘をあとにしたSPOALの渋谷淳と近藤俊哉は進路をいざ北に取った。次なる目的地はトップアスリートが汗を流す味の素ナショナルトレーニングセンターだ――。

渋谷淳

SPOAL編集者

渋谷淳

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

今年はイーグルスvsチーフス!そうです、第57回スーパーボウルが迫ってきました。今回のマニアックモノガタリは、NFLのトップを決める戦いを都市伝説と共に!さあ、マニアックの扉を開きましょう。2023年2月公開

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む
近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

「リフレッシュしていますか?」日々の戦いに疲れた企業戦士。そんな彼らの休日の過ごし方ではなく、充電池についてのお話。カメラマンのこだわりギアシリーズ第二弾。カメラだけでなく日々の生活でもお世話になりっぱなしの「電池」について。2023年1月公開。

近藤俊哉

SPOALカメラマン

近藤俊哉

記事を読む