モノレールの車窓に藤井聡太さんが五冠を達成した王将戦の舞台
立川駅でJR中央線を下車した私、渋谷淳とカメラマンの近藤さんは多摩都市モノレールに乗り換えるため、駅前のデッキを通って立川北駅に向かった。人通りは多いものの、デッキは広く、平らで、松葉杖でも歩きやすい。
松葉杖でもエスカレーターには乗れます
エスカレーターを使って立川北駅の改札へ。改札からホームまではエレベーターを使わせてもらう。移動はスムーズ。バリアフリーはバッチリだ。
ホームに滑り込んできたモノレールがすいていて少し安心する。松葉杖で電車に乗るとき、混み具合によって1本見送ることがよくある。やっぱり混んでいると乗りにくい。ギブスで立ったまま、というわけにはいかないし、自分から「席を譲ってください」とも言えない。
「では、私は座らせていただきます」
相棒にそう告げて、座席に腰掛けた。近藤さんはここでひと仕事。モノレールの車内から、スポーツに関係ありそうな施設を撮影しようというのだ。最初の目当てはモノレールが走り始めてすぐに現われた。
その名はSORANO HOTEL(ソラノホテル)。2020年6月に開業したばかりのホテルで、最上階のインフィニティプールという、なんだか空中に浮いているようなプールが有名だ。もちろんお値段はお高め! それでも行ってみたいという人はたくさんいるだろう。
このソラノホテルはつい最近、将棋の王将戦の会場となって注目を浴びた。将棋界の若き天才、藤井聡太四冠が渡辺明三冠を4連勝で下してタイトルを獲得。19歳5ヶ月での五冠達成は、あの羽生善治九段が達成した22歳10ヶ月を大幅に更新する大記録というからすごい。やったぞ、藤井五冠! すごいぞ、ソラノホテル!
車窓からGREEN SPRINGSにあるSORANO HOTEL(奥)
さて、ここで立川立飛エリアについて少し説明させてほしい。立川駅北口の広大な土地を開発したのは、所有者である立飛ホールディングスだ。戦前から戦後にかけて飛行機を作っていた同社がこの地区の開発に着手し、2015年にららぽーと立飛をオープンしたのが始まりだった。その後、スポーツ施設のアリーナ立川立飛、ドーム立川立飛が完成し、ソラノホテルがあるGEEN SPRINGSも完成した。いまや立川は「住みたい街」としての人気も高く、オシャレタウンに変貌を遂げている。
モノレールが立飛駅に近づくと、アリーナが見えてきた。と、その前にある砂浜のような一角がTACHIHI BEACH。ビーチバレーやビーチフットサルの大会が開かれるスポーツ施設で、東京ヴェルディビーチサッカーチームのホームだ。
普通のレクリエーション施設としも営業しており、夏は水着を着てバーベキューを楽しむことでき、冬は鍋パーティーも可能。海のないところでビーチの気分を味わうことができる。
こちらはTACHIHI BEACH
さて、ついに今回の目的地、アリーナ立川立飛に到着した。エレベーターを降りて、入り口まですぐなのがありがたい。今日のイベントは日本ハンドボールリーグ、ジークスター東京vs.湧永製薬の一戦。このアリーナ、催されるスポーツイベントはもちろんハンドボールだけではない。
こちらでは卓球の国内最高峰、Tリーグの試合もたくさん行われている。過去には大相撲の夏巡業「立川立飛場所」が開催され、テニスの東レパンパシフィックオープンも開かれた。
フットサルのFリーグ、立川・府中アスレティックFCはこのアリーナを本拠地としている。バスケットボールのBリーグ、アルバルク東京の本拠地もここ(22-23シーズンからホーム変更)。ボクシングでも地元の石川ボクシングジム立川がここで興行を開催して、私も取材に訪れたことがある。
我が町をスポーツで豊に――。立飛グループの取り組みは立川のスポーツ関係者を大いに刺激していることだろう。
さあ、試合を楽しもう! 今日は仕事抜きでチケットを買っての観戦だ。心情的には取材をしているジークスターに傾きそうだが、今日はフラットな気持ちで湧永製薬も応援する。リーグ戦で2位につけるジークスターはこの試合に勝てばプレーオフ進出が決まる。一方の湧永は今季ここまで8位と元気がない。何とか意地を見せたいところだが……。
スタンドで試合を観戦
試合は戦前の予想に反して湧永が26―22で勝利した。この日、湧永の選手たちの気迫はすさまじかった。ゴールキーパー陣はスーパーセーブを連発した。フィールドプレーヤーのシュートも、何かテクニックで決めているというよりは、気持ちでねじ込んでいるような迫力があった。
湧永のメンバーは勝利の瞬間、だれもが雄叫びを上げた。涙を流す選手までいた。リーグ戦のたった1試合でここまで感情をあらわにするのは珍しい。いいものを見たな。そう思いながら会場をあとにした。
この日、最も心配していた雨は、我が家の最寄り駅、JR西国分寺駅についたころパラパラと降ってきた。松葉杖で傘は差せない。でも、この程度なら問題なし。本日の歩数計は3940歩。ふだんの「しぶさんぽ」の4分の1程度だが、松葉杖ということもあり、今回はこれで十分に満足だった。
無事さんぽを終えて満足!
おわり
2022年3月公開