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しぶさんぽSeason13 VOL.1

しぶさんぽ初、松葉杖をついて立川立飛を目指す

「しぶさんぽで松葉杖編をやりませんか?」
「いいですね! どこに行きましょうか?」

私、渋谷淳とカメラマンの近藤さんのこんな会話から始まった今回のしぶさんぽ。前回のseason12で「何か今までとは変わったことを」と考え、初めて自転車で狭山丘陵を走ったことを考えれば、松葉杖も悪くはない。

そう、私は1月にアキレス腱を断裂、ギブス&松葉杖の身となったのである。

とはいえ、松葉杖だと行動範囲が限られる。歩くスピードは普段の半分以下だし、なにより体力を使うので「駅から徒歩15分」なんて距離は無理。そこで今回は私と近藤さんの自宅から近い立川を選んだ。日時は2月19日。この日、最終目的地であるアリーナ立川立飛では、日本ハンドボールリーグのジークスター東京vs.湧永製薬の試合が行われる。これをメインディッシュにしようと考えた。

スタート地点のJR国分寺駅で

 

待ち合わせはJR国分寺駅。私は最寄りの西国分寺駅よりも家から近いバス停、いずみプラザ前から小平団地行きのバスに乗り込んだ。国分寺駅南口のバス停に到着すると、車内をけんけんで移動し、ピッとスイカをタッチ。最後はヒョイっとジャンプして歩道に降りた。

さて、ここで松葉杖の装備を紹介させてほしい。

ギブスをつけた足には自分で買ったギブスシューズを履き、松葉杖のグリップは手の痛みを和らげるクッション機能がついた「まきまきくん」を装着。全体重を預けることになる手首は最も負担がかかるところだけに、少しでも痛みを和らげるグッズはありがたい。

リュックサックのチェストベルトをパチンと留めることも忘れてはいけない。松葉杖だと体が少し前傾になってしまうからなのか、これを留めておかないと歩いているうちにリュックが肩から外れてしまうのだ。

こちらは松葉杖グリップカバーのまきまきくん

 

バス停で降りた私は前後に人がいないことを確認して歩き始めた。駅までの道のりはわずか100メートルほど。ただし歩道は狭く、これが松葉杖ユーザーにとってはけっこうプレッシャーになる。

松葉杖のフォームは正面から見て「ハの字」が基本。つまり杖先が地面に接地するころには左右にかなり広がっている。イメージ的には肩幅の倍以上なので、狭い道だと前から来る人にも、後ろから追い抜こうとする人にも邪魔にもなる。ちなみにハの字にせず、杖を真っ直ぐに立てるとバランスが取りにくくなって歩きにくい。

私は人通りがあまりないことに胸をなで下ろしながら、心の中で「イチ、ニ、サン、シ」とリズムを取りながら松葉杖で歩いた。そう、大事なのはペースとリズム。きっとマラソンと同じなのだろう。

チェストベルトはしっかと留める

 

黙々と駅に向かっていると、先に着いていたカメラマンの近藤さんの姿が見えてきた。「お待たせ!」とあいさつする間もなく、近藤さんが話しかけてきた。

「いや~、大変そうですね、渋谷さん! 実は私も松葉杖の経験があるんですよ。あれは中学生の時でしたか。膝の手術をして松葉杖を使いました。いや、20年も前の話ですから、松葉杖は木製でしたけどね!」

語り口がどこか弾んでいる。近藤さんにとって松葉杖は青春の日の甘い思い出なのだろうか? 

「やっぱり松葉杖は手首が痛いですね。全体重が手首にかかりますから。松葉杖って脇で体重を支えるんじゃないんですよね!」

私がにわか知識を披露すると意外な返答が…。

「えっ、松葉杖って脇で支えるんじゃないんですか? 脇で支えていた記憶しかないけどなあ…」

そう言われると、とたんに自信がなくなる。いちおう病院では「脇が痛くなるので、脇に体重を乗せない。脇は挟むだけ」と教えてもらった。ただ、これだと手首にかかる負担があまりに大きく、「うまく脇も使って、体重を分散させてほうがいいのでは」なんて考えていたところだったのだ。

そう、そもそも松葉杖はオン・ザ・ジョブ・トレーニングで覚えるしかない。松葉杖の長さからしてそうなのだ。私は使い始めよりも既に目盛り一つ分(2センチくらい)長くしていたのだが、近藤カメラマンの「脇でしょ」の意見を取り入れ、もう一目盛りを長くしてみた。

う~ん、どうやらいい感じ(後日元に戻したけど、この瞬間はこう感じた)。

けんけんで階段を登るとこんな感じ

 

それでは出発。国分寺駅の正面に立つと、目の前に階段、左右にスロープという構造。さあどうするか。スロープの入り口までの距離は30メートルほどで、階段の高さは私の首あたりだからそう高くはない。よって階段を選択。手すりにつかまって左足けんけんで階段を登った。

「そうですね、今回はバリアフリーなんかもチェックしていくと面白いかもしれないですね」

近藤さんの言葉に深くうなずく。そう、松葉杖になると、とたんにバリアフリーが気になる。普段はまったく気にしないのだから勝手なものだ。松葉杖だと人の力を借りないと移動できなかったり、とても歩きにくかったりするところがけっこうある。ちょっとした傾斜、ちょっとした段差が歩くバランスとリズムを崩すのだ。

駅ではエレベーターの設置場所がとても気になる。たとえばJR水道橋駅は西口にエレベーターがない。でも私の通う後楽園ホールは西口のほうが近い。となると遠回りでも東口のエレベーターを使うのか、西口で階段をけんけんで移動するのかの選択となる。私の選択は後者。東口まで松葉杖で歩くのと、西口の階段をけんけんで登るのを天秤にかけた結果である。

私たちは国分寺駅の改札をくぐり、改札近くのエレベーターに乗ってホームに降りた。ちょうど入ってきた電車に乗り、私は一つあいていた席に座った。近藤さんは立ったままだ。こういうときは遠慮なく、感謝の気持ちで人の好意に甘える。なかなか難しいのだけど、松葉杖生活を送る上でこれも大事だと気がついた。

「それにしても渋谷さん、なんでアキレス腱切っちゃったんでしたっけ?」

そうそう、それを説明していなかった。いや、実は――。

第1話を見る

2022年3月公開

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