「筋肉なしでは筋肉の聖地は作れない」
皆さんご存知、映画「ペイン&ゲイン」(2013年)からの一言。
筋トレ大好きジムトレーナーが、間違ったアメリカンドリームを夢見て誘拐事件を引き起こす。筋肉マニアのおバカなコメディ映画と思いきや、まさかの実話に基づいた作品。ロック様ことドウェイン・ジョンソンの桁違いの筋肉を是非ご堪能ください。
さて、今回の「マニアックモノガタリ」はキン肉マンをテーマにサッカーチームを作ってみました。初期のギャグ漫画時代は人気低迷で打ち切りの可能性もあったのですが、プロレスに近づくにつれ人気もウナギ登りに。もちろん私も熱中していきました。
当時小学生だった私は、夏のプールでやる事と言ったらキン肉バスターか、「キャプテン翼」の立花兄弟の合体技、スカイラブハリケーン。キン肉バスターはかけられるほうがあまりにも苦しいのと、やはりあのまま飛び込みのですから、傍から見ても危険でしょう。すぐに学校側から禁止令が出たのを覚えています。
またまた昔話で恐縮ですが、十数年前、格闘技の取材に行った時の話を。
大会はたいてい夜なので、通常その翌日に一夜明け会見というのが行われます。ホテルの宴会場で試合に出た選手が一同に会して記者会見するというもの。いつもは試合だけの撮影なのですが、この時は会見後に、ある選手の独占インタビューを行う予定でしたので記者会見から撮影することに。
当日、会場となるホテルに指定された時間よりちょっと早めに着きました。カメラマンは荷物も多いので、時間に余裕を持って早めに着くことが多いです。まだ編集者も来てないよなと、ロビーを見渡すとある一角に人だかりが。
格闘家が泊まっている情報はだいたいどこからか漏れるもので、選手、もしくは引退してトレーナーをやっている人とかがファンにサインを求められているのかと思いましたが、輪の中心人物は身体つきが普通。だいたい僧帽筋の盛り上がり方で格闘関係かそうじゃないかの区別が付きます。見た感じ芸能人でもなさそうだし誰なんだろう?サインをもらっているのは子供が多いのですが、大人もチラホラ。気になるので通りすがりを装いサインを見てみると、なんとそこにはキン肉マンの顔が!そうです!なんと、ゆで氏かたまご氏かどちらか正直わかりませんが(すみません)、キン肉マンの作者だったのです!!
以下の心の葛藤は「東京大学物語」を意識して読んでいただけると幸いです。
——仕事上ではサインを求めないと今まで決めていたけど、今回は違うんじゃないか?待ち合わせ前の時間だから今はプライベートタイムって事で。だって、あのゆでたまご先生だぞ!?しかも皆直筆のキン肉マンを描いてもらっているじゃないか。欲しい!!行くなら昔からのファンという事をアピールしたいし、そうなると色紙に描いてもらうのはキン肉マンではなく、カレクックあたりが先生の心をくすぐれるか?いや、漫画家だからといって、そもそもリクエストに応えてくれるサインのシステムがあるかどうかもわからない。仮にリクエストに応じてくれたとしても、行列になっているから時間的にカレクックよりはラーメンマンのほうが後ろに迷惑かからない?ラーメンマンは時間がかからないというのも失礼か。いや、待てよ。誰を描いてもらうかという以前にそもそも色紙なんて持ってないじゃないか!だったら近くのコンビニへ。近くのコンビニってどこよ?場所調べて近くにあったとしても、コンビニ行って、色紙買って、戻ってきた時、ゆでたまご先生がその場にいる保証はあるか?自分だって待ち合わせの時間は迫ってきてるし。あっ、Tシャツにサインをもらってるチビッコを発見!そうかその手があったか!幸い油性ペンは持っている!あー、こんな日に限って今日Tシャツ黒じゃん……。
この間、わずか0.5秒というわけではないですが、あーだこーだと考えを巡らせているうちに、約束の時間となってしまいました。
グダグダやってないで、サクッと色紙買ってきて列に並べよ!とあの頃の自分に言いたい。
今でも、サインをもらった子供の笑顔が忘れられないのと、もし自分も描いてもらったとして果たしてカレクックが正解だったかと、勝手に自問自答の日々が続いています。
本音を言えばロビンマスク描いて欲しかったんだよなあ……。
最後にキン肉マン都市伝説を一つ。
本編でもお話した、突き抜けた出オチキャラで有名になったレオパルドン。作者は神戸の清水君。ゆでたまご先生から表彰状をもらい、一躍学校のヒーローに!と思いきや、本編のあまりの瞬殺っぷりに本人もイジられキャラになり、運動会ではかならず次鋒にさせられた。という未確認情報が。
信じるか信じないかはあなた自身が決めてください!
「つゆだく」を世に広めたのは華原朋美。
「妄想イレブン 超人でサッカーチームを作ろう」EXTRA 終
2022年7月公開