キーワード② 『ヴィンテージ』
2022年トレンドキーワード、続いては「ヴィンテージ」です。
ファッション好きには耳慣れしたワードですが、年数がある程度経っていて保存価値が高いアイテムを指す言葉。どうも今年はこの流れが一気に強くなってきそうなのであります。
思えば1990年代、2000年代それぞれの初頭には古着がブームになっていました。かくいう私も学生時代は原宿や下北沢のショップへ足繁く通っては、ペラッペラなシャツや穴だらけのスウェットに何千円も出していました。
2020年代に入り、またそうしたブームがリバイバルしているのかというとそうではありません。もちろん本来であればそうだったかも知れませんが、そこに大きな影響を与えたのがコロナウイルスでした。ウイルスの蔓延防止のため、消毒・抗菌といった対応がデフォルトになってきたことで古着業界は大きなダメージを受けたと言われています。それはそうですよね、人が着用していたものをリユースするわけですから。
もちろん全部が全部というわけではありませんが、これまでよりも確実に売りづらい・買いづらいものとなってしまいました。では、そんな中でなぜ「ヴィンテージ」がブームになったのか。その答えはこの写真の中にあります。
これは、ナイキのスニーカーカスタマイズサービス「NIKE BY YOU」から昨年末に発売された「ダンク」というスニーカー。ベースの素材やカラーを自分で選び、その通りにカスタマイズされたものが届くというシステムで購入しました。
注目いただきたいのは質感と色味。これまではワントーンのレザーだったのですが、今回からはエイジング加工されたヌバックレザーや、経年変化を感じさせるセイルカラーのミッドソールといったオプションが搭載されていたのです。
そう、2022年のヴィンテージブームとは、正確には「ヴィンテージ加工」ブームなのです。アイテム自体はあくまでも新品なのですが、質感や色味にエイジング加工を施すことでヴィンテージ感を出しています。ブームも単なるリバイバルではなく、時代に最適化した形で生まれ変わった新しいケースといえますね。
既に発表されているリリースをみても一目瞭然。ナイキからは人気の「ダンク」のソールとレザーがヴィンテージ加工されたモデルが複数色リリースされますし、アディダスからも主力モデルの「フォーラム」が”worn(履かれた)”というコードネームで同じくヴィンテージ加工されたモデルがまもなく発売されます。スニーカー界はすぐにブームを反映したプロダクトがリリースされるので、とてもわかりやすいですね。
ヴィンテージブームはアパレルやスニーカーだけではありません。例えばシューレース一つとっても、1本1本丁寧にヴィンテージ加工されたものが発売されるようになり、今ではポップアップイベントを行うほどの規模にまで成長しました。さらにバッグやポーチといったアクセサリーも今年のコレクションを見る限り、ヴィンテージ加工されたものが数々リリースされると言われています。
また、ヴィンテージ加工されたものだけでなく、”加工しやすい”ものとしてデニムも再注目されています。昨年に引き続き今年もデニムが採用されたスニーカーも数々リリースが予定されており、流行の中でも自分の個性を出せるアイテムとして人気が出そうです。
写真のモデルは数年前にリリースされたデニムブランド「リーバイス」とナイキのコラボレーションモデルの「エア・ジョーダン4」。私は経年変化を楽しむとともに、毎年少しずつヤスリを掛けながら表情を変えて履いています。
初めて古着の魅力に出会ったのは10代、その時と今で決定的に違うのは古着自体に自分を重ねるようになったことです。もう今では仕事で年上よりも年下に出会うことが多くなってきました。経年変化で味わいが生まれてタイムレスな魅力を放つ古着をみると、「まだまだ若い人には負けないぞ!」という気持ちにさせてくれます(笑)
ヴィンテージブームを決してファッションだけのものと捉えず、同じくらい自分もヴィンテージとして輝けるようになりたいと思う2022年でした。
2022年1月公開