多摩湖周辺はサイクリング、ランニングとの相性抜群!
多摩湖橋を渡って多摩湖通りへ
今回の「しぶさんぽ」は所沢&狭山丘陵。トトロの森で知られる里山の多い地域であり、今回は自転車を借りて狭山丘陵をグルっと回ってみようと計画した。しかし、第1回で説明したように西武球場前駅近くで借りた電動アシスト付き自転車の電池残量は残念ながら30%と0%。ならばと数100メートル離れた別のステーションに行ってみると――。
3台置いてある自転車の電池残量はすべて0%!
むむむむむ…。レンタル会社の人が定期的にバッテリーを回収して充電するんだろうけど、年末で間に合わなかったのか…リサーチが足りなかったな――などと恨んでみたり、反省したりするものの、ないものはないんだから仕方がない。
私たちはあきらめて電池残量の少ない自転車に乗り、多摩湖橋から多摩湖を縦断した。そして橋が渡り終わり、東に向かって道を折れたところで0%を表示していたバッテリーがついに最後の一滴を絞り出す。とたんにペダルにズンと強い負荷がかかる。電動アシストのない電動アシスト付き自転車は重い! 序盤戦にして大きな試練に襲われてしまった。
ところが――。
捨てる神あれば拾う神あり、とはこのことだろうか。登り坂だったらとてもじゃないけど「やってらせません」というところ、なんと私たちが走った方向の多摩湖通り(東京都東村市)は下りが続いたのである。
下り坂に救われた!
ホッとしたところで閑話休題、多摩湖について少し説明させてほしい。
この湖は大正から昭和にかけての時代、東京都と埼玉県にまたがる狭山丘陵を利用して造られた貯水池であり、東京都東村山市の多摩湖(村山貯水池)とその北西にある埼玉県所沢市の狭山湖(山口貯水池)からなっている。ようは大都市、東京の水瓶として造られたのだが、1世紀近い時間の中で、スポーツを愛する人たちになくてはならない場所にもなっていった。
多摩湖通りを走っているとサイクリングを楽しんでいる人がとても多い。競技者向けの自転車とそれにふわさしいウエアを着たサイクリストたちが次々に私たちチャリダーを抜き去っていく。豊かな木々に覆われ、ほどよくアップダウンのあるコースは、自転車を楽しむには確かに最適な感じがする。
サイクリストが多いとはいえ、ランナーたちの姿も少なからず目にした。実はこの多摩湖、日本で初のめて女子のフルマラソンが行われた地だという。
昭和53年(1978)年4月16日、多摩湖畔を3周するコースで、第1回女子タートルマラソン全国大会(社団法人日本タートル協会主催)が行われました。最高齢71歳を含め49人がフルマラソンに挑み、そのうち46人が完走しました。外園イチ子さんが3時間10分48秒というタイムで優勝したこの大会は、女性だけで健脚を競う日本初の女子フルマラソン大会と言われています。=東大和市ホームページより=
東大和市ではこの歴史を後世に伝えるため、2013年に記念碑を多摩湖畔に建立した。やはり多摩湖はスポーツと縁が深いのである。
アスレチックで日ごろの生活を反省
そんな“スポーツどころ”に来たのだから、自転車に乗るだけではなく、もう少し体を動かしてみよう、ということで自転車を途中下車。狭山緑地フィールドアスレチックでひと汗かくことにした。自然に手を加えない状態でアスレチックが散在している。小さいお子さんがいる方はぜひ足を伸ばしてほしい。
アスレチックを終えて多摩湖通りをさらに東へ。東端で北に折れ、多摩湖堰堤に出る。ここは景色がいい。西側に多摩湖、歴史を感じさせる取水塔が湖面に浮かぶように2つ。東に目を向けると国分寺駅と多摩湖駅(ついこの間まで西武遊園地という駅名だった)を結ぶ西武多摩湖線が走り、その遠く先には東京の高層ビルがかすむ。
多摩湖堰堤。後方にかすかにメットライフドームの屋根が見える
素敵な里山でリラックス、トトロの森へ行く
堰堤をのんびりと走り、西武ゆうえんちを眺めながら多摩湖を離れて進路を北へ。コンビニの横にあった道をググッと下っていくと期せずしてトトロの森が表れた。そう、狭山丘陵はスタジオジブリの映画、1988年公開の『トトロの森』のモデルになった舞台の一つと言われているのだ。
歴史をはしょって説明すると、トトロのふるさとを守ろうと1991年、市民団体が「トトロのふるさと基金」を創設。寄付金をもとに狭山丘陵の里山(土地)を取得して自然を守る活動を今日まで続けている。91年にトトロの森1号地を誕生させてから、その数は2021年までに55号地に達したというからすごい。
なんだか優しい気持ちになってしまうトトロの森
私と近藤カメラマンは「トトロの森●号地」と書かれた看板をいくつか確認しながら記念すべき1号地まで足を伸ばした。そこはまさに里山。人の手がほどよく入った丘陵地であり、思わず糸井重里さん(お父さんの草壁タツオ役)になりきって「サツキ~、メイ~」とのどかな声を出したくなった。それにしてもメットライフドームのほど近くにこんな場所があるなんて、と小さく感動しながら里山を後にした。
さて、次は人間科学部とスポーツ科学部から多くのスポーツ人を輩出している早稲田大学所沢キャンパスに向かうつもりだったが、バッテリー切れの自転車では厳しいと判断。ここで今回の散歩は切り上げることにした。
トトロの森から西武球場前駅までの道は、ゆるやかな登り坂だ。私たちはいざという時のためにオフにしていた電動アシストのスイッチをようやくオンにして、軽くなったペダルを踏みしめながら出発地点に到着した。
「では、せっかくなので」と私と近藤カメラマンは声を合わせ、駅前の『ダイニングKitchenどん』の暖簾をくぐる。「フーッ」と一息ついた私たちは冷えたビールとおいしいカレーを胃袋に流し込み、今回のしぶさんぽを締めたのだった。
しぶさんぽシーズン12 おわり
2022年1月公開