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しぶさんぽ Season12 VOL.1

西武ライオンズの本拠地、メットライフドーム

2021年の暮れ、私、渋谷淳とカメラマンの近藤俊哉は所沢、狭山丘陵を訪れた。理由は「2人の自宅に近いから…」というのはその通りなのだけど、所沢といえば何と言ってもメットライフドーム(西武ドーム)がある! さらにはトトロの森に足を伸ばして「自然に触れる」も今回のテーマにした。

予定したコースはメットライフドームに始まり、多摩湖(村山貯水池)をグルッと回って、トトロの森、早稲田大学所沢キャンパスまで足を伸ばすというもの。もちろん歩いてはいけないし、公共の交通機関も使いづらい。そこで考えたのが自転車だ。電動アシスト付き自転車をレンタルして、スイスイと丘陵地を走れば気分のいいこと間違いなし。調べてみると、狭山丘陵はサイクリングにピッタリというではないか。

アプリを使って自転車をレンタルしたのだが…

 

ところが――。

レンタル自転車のアプリから自転車を予約し、ワクワクしながら西武球場前駅で自転車を選ぼうとすると、なんと自転車の電池残量は30%が1台、ほかの数台はすべて0%…。う~ん、これはちょっといただけない。スマホで検索してみると他のステーションに自転車がありそうなので、そこまでアシストなしで移動して乗り換える、というプランを立ててみた。問題はひとまず置いといて、スタート地点でメットライフドームを味わおう。

プロ野球、埼玉西武ライオンズの本拠地、メットライフドーム。メットライフ生命がネーミングライツを取得して現在の球場名になったのが2017年のこと。これに合わせて大規模な再整備が17年から21年にかけて行われたというだけあり、球場の周辺はなかなかきれいでオシャレな印象。感心していると近藤カメラマンがドームを見上げながらつぶやいた。

「私、小学生のころにライオンズ友の会に入っていたんです」

メットライフドーム。人はいなくとも野球場はテンションが上がる

 

なるほど、近藤カメラマンのふるさとは所沢の少し南にある東京都小平市だ。きっとクラスの何%かはライオンズ友の会に入っていたに違いない。ちなみに私は関西に住んでいた小学校2年生のとき「阪神子どもの会」の会員だった。当時の私は阪神ファンではなく、ヤクルトファン。それでも入りたくなってしまうのが、子どもたちのあこがれ、プロ野球チームの力なのだろう。

「で、近藤さんがよく見ていたのはだれのとき?」
「そうですね~、私は石毛とか、清原とかの時代ですね。あとは松沼兄弟…とか?」

渋いな~、近藤さん。素晴らしいですよ、松沼兄弟!

私は真っ先に“アニヤン”のチョビヒゲを思い出し、プロ野球選手らしからぬ細身の体とアンダースローのピッチングフォームを脳裏に映し出した。まだメットライフドームでも、西武ドームでもなく、屋根のない西武ライオンズ球場だったころの話だ。

アニヤンこと兄の松沼博久さんは1980年代に西武で活躍した投手でプロ通算112勝。弟のオトマツこと雅之さんも西武一筋で69勝を上げた。黄金時代、スターぞろいの西武にあって2人は決して主役でなはなかったが、確かな存在感は十分にインパクトがあったと言えるだろう。

栄光のチャンピオンフラッグ

 

松沼兄弟の力投、そして平成の怪物

個人的に西武球場で最も印象深いのは1989年10月12日のパ・リーグ天王山、西武×近鉄のダブルヘッダー、近鉄のラルフ・ブライアントが放った奇跡の4連発だ。あのときのブライアントには震えた! ライオンズの本拠地で不謹慎ながら、やっぱり「神様、仏様、ブライアント様」(スポーツ新聞の見出し)なのである。

後日、編集者の二宮寿朗くんにも西武ライオンズの思い出を聞いてみた。

「スポニチの整理記者だった時、松坂大輔の入団記者会見の記事で1面を組ませてもらったことがあるんですよ。あれは1998年かな。そのあと外勤の記者になったからよく覚えてますね」

横浜高で“平成の怪物”と呼ばれた松坂大輔さんは西武ライオンズからドラフト1位指名を受けたのが98年のこと。翌年からの大活躍、さらいは海を渡ってメジャーリーグでも豪腕をうならせたのはご存知の通りだ。そして21年、最後は古巣のライオンズで20年に及んだ現役生活に別れを告げた。

引退試合がメットライフドームで行われたのが10月19日だから、今回のさんぽからほんの2ヶ月前の話。引退試合での投球はわずか5球でフォアボール。けがに苦しみ続け、最終登板の球速は最高で118キロだった。人気のない真冬の球場を眺めながらあのシーンを思い返すと、グッとこみ上げてくるものがあった。

いかん、思い出にひたりすぎてしまった。先を急ごう。

メットライフドームの横には「都心のすぐそばに本格ゲレンデ」がキャッチフレーズの狭山スキー場がある。目を向けるとスキー板を背負って楽しそうな家族連れが何組か見えた。

こちらは狭山スキー場

 

この屋内スキー場、オープンはなんと1959年というからずいぶん古い。開業式では高松宮夫妻がテープカットを行い、なんとあのトニー・ザイラーが初滑りをしたらしい。あのザイラーとは、56年コルチナ・ダンペッツオ五輪のアルペンスキーで回転、大回転、滑降の3種目で金メダルを獲得したオーストリア選手で、俳優としても活躍した。

この大会で日本人初の冬季五輪メダルに輝いたのが、ザイラーに次いで回転で2位に入った猪谷千春さん。のちに国際オリンピック委員会(IOC)の副会長まで務めた人物である。そういうこともあって当時、ザイラーの日本での知名度はかなり高かった。

余談になるが、屋内スキー場と言えばザウスを思い出す。多くの若者がゲレンデに足を運んでいた1993年、千葉県船橋市にオープンした巨大な屋内スキー場だ。テレビCMでガンガン流れていた山下達郎の「湾岸スキーヤー」が耳によみがえった人もいるのではなかろうか。しかし、ザウスはスキー人気の陰りとともに2003年に閉鎖。今、関東に残っている本格的屋内スキー場はこの狭山スキー場だけとなっている。

冬の日差しが少し温かくなってきた。
さあ、サイクリングに出発だ!

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2022年1月公開

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