山中 中村正彦さん(※山中、岩佐が師事するストレングス&コンディショニングコーチ)のところでフィジカルトレーニングをやるようになったきっかけって?
岩佐 小國(以載)さんに勝って世界チャンピオン(IBF世界スーパーバンタム級)になって、チャンピオンとしてこれから勝っていくには今まで逃げてきたことにもやんなきゃいけねえなって思ったんですよ。僕、世界チャンピオンになるまでフィジカルやってないんです。筋トレも全然やってなかった。
山中 フィジカルが不安(要素)ということじゃなくて?
岩佐 不安だからというよりは自分が強くなるためには、いよいよやらなきゃなっていうのがきっかけですね。だから(フィジカルを強化して)扉が開いた感じはありましたよ。意外とできるんだなって。だが防衛戦のころ(2018年3月、サウロン戦、8月、ドヘニー戦)は(強くなった)フィジカルをうまく使えていなかった。強くなっていたのに、試せていなかった。
山中 筋力は強くなっているけど、(自分のボクシングに落とし込むのは)なかなか……。
岩佐 そうなんです。自分のボクシングスタイルがメーンで、元々筋力をあまり使わないようなボクシングで勝ってきているから、出し方が分からなかったところはありましたね。
山中 確かにそうやな。でもタパレス戦とか見ても成果は出てきていると思う。
岩佐 はい、フィジカルのほうはこれからも頑張ってやっていこう、と。
山中 俺、中村さんのところでフィジカルやるようになってから、腰痛が出なくなった。
岩佐 僕もそうなんですよ。
山中 やっぱり下半身の筋力って大事なんだなって思うよ。俺は特に、下半身の筋力を使ってボクシングをするほうやったし。
岩佐 山中さんに一つ聞きたいことがあったんですけど。
山中 えっ、何やろ。
岩佐 山中さんて(相手のパンチを受けて)効いてからが強いじゃないですか。あれは、なぜなんですか?
山中 うーん、俺は効かされたら、瞬間的にスコーンと倒れるタイプやからな。
岩佐 (ダウンして)起きたら何でもないっていう感じなんですね。
山中 そんなに足にも(ダメージが)こないし。
岩佐 なんなんすか、それは(笑)。
山中 それは打たれ弱いからや、逆に。
岩佐 10年前の試合も(2ラウンドの左クロスで)一度ガクンときてるじゃないですか。僕は効いてないと思ったんですけど。
山中 後日テレビであの試合を見たら俺、画面から消えていたからね(笑)。別に効いてから強いとかそんな感覚はなくて。
岩佐 倒れても、つまずいたみたいな感覚だ、と?
山中 効いたって感じじゃない。ソリス戦やモレノとの第2戦でも倒れているし、どちらかと言うと、やっちまったみたいな。逆に岩佐は、打たれ強いでしょ。実際、自分との試合でも倒れてない。
岩佐 そうっすね。倒れたのは、ハスキンス戦くらい。(セレス小林)会長に「僕、打たれ強いんで」と言ってもなかなか信じてもらえなかった。でも山中さんとの試合で、本当に打たれ強いって証明できました。
山中 それ、セレスさん言ってたわ。
岩佐 そうなんですね。
山中 自分は日本でしか試合をやってないけど、岩佐は海外での世界戦を望んで、実際に向こうでタパレスに勝って世界のタイトル(IBF世界スーパーバンタム級暫定王座)を獲ってきて、さらに強い選手と戦いたいっていう気持ちを常に持っているから、素晴らしいと思うよ。
岩佐 山中さんみたいに日本で長くできているカリスマ性のある人たちって、みんなに重宝されるし、需要があるじゃないですか。僕とかはそういうのが薄いんだと思います。だから海外でもどこでも自由に行けるみたいなところはあると思います。
山中 でも俺にあのとき勝っていたら、岩佐が(その後も)ずっと(試合の中継は)日テレだったと思うよ。
岩佐 それ言われると、何か悔しいですね。
山中 いや俺も日本でずっと試合をするなかでも、いつかアメリカで試合をしたいという気持ちはあったけどね。
岩佐 ないものねだりみたいなところはありますよね。でも(海外の試合は)時代もあって、日本のボクシング界で広まってきたなとは思います。
山中 井上(尚弥)もそうやけど、日本人選手が活躍しているからね。
岩佐 そうですね。
山中 もちろん岩佐も。
岩佐 ありがとうございます。
山中 さて、現役続行を決めたわけですけど。
岩佐 これまで頂点に向かって走ってきましたけど、どういうふうに終わりに(向かっていくか)。やるからにはもう1回世界チャンピオンになりたいし、それも踏まえて終わりに向かって走り始めているのは確かですね。
山中 どう自分で満足して終われるかが大切やからね。タパレス戦でも、フィジカルの強さが出ているから、次に活きてくるんじゃないかとは思う。
岩佐 はい、まだまだ伸びしろはあると思っています。
山中 31歳でしょ。本当にもう1回(世界チャンピオンに)返り咲いてほしい。昔、戦っているというのもあるけど、心から応援したい。なかなか海外までは行けないけど(笑)。悔いのない戦いをやってください。
岩佐 これからもいろいろと教えてください。
山中 頑張って。次の試合が終わったら、またゆっくり話しましょうよ。
YAMANAKA×IWASA 終わり
2021年7月公開