板橋のみなさんにも足を運んでもらえるようなチームに
東京エクセレンスは7月1日、横浜エクセレンスとして新たなスタートを切った。これまで説明してきたように、エクセレンスはB2ライセンス取得に必要な収容人数3000人以上のアリーナをホームアリーナにするため、ホームタウンを東京都板橋区から横浜市に変更したのである。
ベテランの齋藤は来季もチームを牽引する
石田は選手として4年、ヘッドコーチ(HC)として4年、チームメイトやスタッフとともに板橋区で地道にファンを増やす活動をしてきた。ホームタウンの変更はエクセレンスの歴史の中で、最も大きな変化と言えるかもしれない。
「選手として現役を終え、HCとして経験を積ませてもらいました。小豆沢体育館、板橋区に育ててもらったという思いがあります。だからこれで終わりではなく、少し場所が離れても見に行きたいなと思ってもらえるチームでありたいし、板橋の方々が足を運びやすいような、運びたくなるような企画、発信をしていかなくちゃいけないと思っています」
新たなステージを迎えるにあたりエクセレンスのHCはきっとワクワクしているはずだ。それは石田が国内トップチームであるトヨタ自動車アルバルクを去ったあと、現役選手として活躍しながらさまざまなチャレンジをしてきたからである。
その一つが3人制バスケットボールチーム、湘南サンズの立ち上げだ。国内に3人制バスケのリーグができるのに合わせ、石田は新チームのオーナーとなり、現役中は自らもプレーしながら新しいフィールドに足を踏み入れた。チームとして試合に勝利するのはもちろん、もっと他にできることがあるのではないかと考えた。力を入れたのは社会貢献活動だった。
「たとえば(東日本大震災で被災した)南相馬の子どもたちを湘南に招いて夏休みをすごしてもらう企画。難民支援ということで子どもたちにバスケットボール遊びをしてもらったり、地元で難民指定を受けている方に話をしてもらったりという企画もしました。今は3人制のチームは持っていないのですが、その時々でメンバーを集めて湘南サンズとしてバスケット教室を開くこともあります」
来シーズンのさらなる成長が期待される小倉
話をもとに戻そう。エクセレンスはホームタウンが横浜に移り、板橋での8年をへて変わることもあれば、変わらないこともあるだろう。石田は「僕もまだ(ホームアリーナとなる)横浜武道館に1度行ったことがあるくらいで」と苦笑いしながら、よどみなくこれからのことを話してくれた。
「横浜に本拠地を置くという意味は何なのか。あの地域の子どもたちのあこがれになる、あそこに住んでいる人たちに会場に足を運んでもらう。そのためにはどういう存在になればいいのか。それは開幕戦を迎えて、体を動かしてみて分ってくることなのかなと思っています。変わらないのはどんな場所であっても、どのカテゴリーであっても、決まったメンバーでいいバスケットをしていくこと。そしてB3で優勝することです」
横浜武道館で会いましょう!
横浜武道館にファンを呼ぶためには秋の開幕戦までにやらなければならないことがたくさんある。地域に愛されるというミッションは、成績が良ければ成し遂げられるという甘い話ではない。選手やHCはいろいろなイベントやメディア出演でチームをアピールしなければならないし、チームとして横浜市に何ができるのか、どうやって地域に貢献していくのか、というところを模索することも大事だ。ちょうど8年前、ホームタウンとなった東京都板橋区でポスター貼りや企業回りをしたように――。
好きな言葉はなんですか?
そう問うと石田は「う~ん」と一瞬首をひねりながらも、それほど間を置かず次のように教えてくれた。
人生は旅だ
自分だけの地図を描こう
レストラン経営や子どもたちへの支援などを世界で展開する実業家、高橋歩さんの本で目にした言葉だという。枠にとらわれない活動をする高橋さんのフェイスブックを見ると、肩書きには「作家・自由人」とあった。
「僕がアルバルクをやめたとき、収入もない、仕事もない、何もない状態だったとき、慶應の同級生はみんな社会で活躍していていました。オレ、このままでいいのか? ダメだなと思いました。でも、この言葉に出会って、人との比較ではないんだと。そうとらえてしっくりきたんですね。だからそのあと千葉ジェッツやエクセレンスでやってきたこと、それ以外にもやってきたことは、自分らしくていいのかと思えるんです」
舞台を横浜に移したエクセレンスが新しい地図を描く。B3の2021-22シーズンは秋に開幕する予定だ。
おわり
2021年7月公開