3年以内で優勝の目標は前倒しで2年目の目標に!
日本代表のエースである東江雄斗、日本代表キャプテンの土井レミイ杏利、元日本代表の小室大地、そして強豪チーム大崎電気で活躍していた小山哲也。この4人が新興チーム、ジークスター東京に移籍するというニュースはハンドボール界で大いに話題になった。
もともとジークスター東京は昨シーズンの日本ハンドボールリーグ参戦にあたり、初年度にプレーオフ進出(リーグ戦4位以内)、3年以内に優勝という目標を掲げた(初年度の結果は11チーム中7位)。ところが6月1日に開いた記者会見では、当初の目標を1年前倒しにし、2021-22シーズンの目標を「プレーオフ進出と優勝」と掲げたのである。
新体制について発表する大賀社長
その決意の象徴とも言えるのが4人のトップ選手獲得だった。そもそも3年以内で優勝というのもかなり高いハードルであり、それを前倒しするというのだからかなり強気と言える。4人はプロ契約選手であり、当然のことながら経費もふくらむ。なぜこれほど思い切った決断をしたのか。運営会社のジークスタースポーツエンターテインメント株式会社、大賀智也社長の答えは明快だった。
「去年リーグに参入して1年やらせてもらいまして、ハンドボールが日本ではメジャーではないということを痛感しました。我々から発信してもなかなか響かない。であれば、よりスピードを加速させ、より強いチームを作っていこうと。やはり弱いチームだと長続きしないところもあります。だからこそ東京を拠点とするチームとして、ハンドボールを広めていくシンボリックな強いチームにしようと。その考えに(移籍してきた)選手も賛同してくれました」
ジークスターは昨シーズン、リーグの戦と並行してさまざまな“発信”をしてきた。たとえばリーグ開幕前の昨夏、コロナ禍で大会がなくなってしまった高校生のために「フューチャートライアウト」と銘打ち、高校生と大学を結びつけるトライアウトを実施した。トライアウトには19人が参加し、そのうちの4人がこの春、希望の大学に入学してハンドボールをプレーすることになった。
それ以外にも、ハンドボールの普及を目的とした小学生と幼稚園児を対象としたイベントやスクールを開催し、ホームゲームをインターネットで配信する「ジークスターTV」も立ち上げた。スポンサー企業が得意としているITやAIを駆使した戦力分析とトレーイングへのフィードバック、ファンクラブの創設やEC物販などなど、発信の内容は実に意欲的であり、そのほとんどが“業界初”の試みだった。
しかし、こうしたハンドボール界にとって画期的な取り組みも、大賀社長によれば「なかなか響かない」ということになる。外野の目には「まだ1年目なんだから仕方がないのでは?」と映らなくもないのだが、そうではないのだ。明確なビジョンに基づいた投資をして、しっかりとした結果を得る。それが攻めの経営というものなのだろう。
折しも日本ハンドボールリーグは5月下旬、バスケットボールのBリーグ初代事務局長を務めた葦原一正氏を代表理事とし、機構を一般社団法人化する新体制を発表した。世界最高峰のリーグを作ると決意表明し、ハンドボール界全体に「変ろう」という機運ができあがりつつある。大賀社長も「我々にとって追い風なのかなと感じている」とこれには大歓迎だ。
2年目の横地監督にとっても来シーズンは正念場だ
死に物狂いで勝ちにいく!
となると、やはり最大の興味はジークスター東京が本当に強さを見せつけることができるのか、優勝を勝ち取ることができるのか、というところに行き着くだろう。大役を任された横地康介監督は記者会見で今シーズンの力強いスローガンを発表した。
CRAZY TO WIN
「死に物狂いで勝ちに行くがテーマになります。実力のある選手がそろいましたが、歴史と伝統のあるチームがひしめくリーグで、2年目のチームが簡単に優勝を勝ち取れるほどトップリーグの世界は甘くありません。昨シーズンの戦いを通してそのことを痛いほど感じました。そこを打破するためにも、一人一人が死に物狂いで勝ちに行く姿勢が大事だと思います」
大型補強をしたからといって、それがすぐさま結果に結びつくとは限らない。団体スポーツであれば当然であり、野球であれ、サッカーであれ、スター軍団が優勝から見放されたケースは古今東西いくらでもある。チームとしての目指すものは何か、チームとしてのポリシーは何なのか。チーム全員が同じ方向を向き、同じ価値観を共有して切磋琢磨してこそ、チームの力は上がっていく。それができるかどうかが、ジークスターが上位に進出し、優勝争いに絡めるかどうかのカギとなる。
移籍組の一人、攻撃面でチームの牽引役を期待される東江は次のように語った。
「参入2年目なので日本リーグに慣れてない若手選手もいると思う。引っ張っていく力もこれからの自分には必要になると思っている。若手の力を最大限に引き出したい」
6人の日本代表経験者に小山を加えて7人のトップ選手が集結したとはいえ、それ以外の選手は今のところ昨シーズンから残留した7人と大学生の新人2人だ。彼らの成長、活躍がなければリーグ優勝というミッションが達成されることはないだろう。選手が交代しても戦力が落ちないチームこそが、本当に底力のある強いチームなのである。
東江、土井という日本代表組の合流は遅れるが、新規加入選手の多いチームとしてはできるだけ早く始動して、チームワークの醸成に時間をかけたいところだろう。勝負に打って出た“新生”ジークスター東京が2シーズン目が怒濤の勢いで始まった。
2021年6月公開