スニーカー界の絶対王者として君臨するナイキ。その2021年のリリースモデルを振り返ってきましたが、他社だってもちろん黙ってはいません。どちらかというとナイキ以外のモデルを履くことのほうが多い私にとっては、むしろこちらのほうが気になっていたほどです。
ニューバランス、プーマ、アディダス、リーボック、今回はこの4社からリリースされたモデルを1足ずつ紹介しましょう。キーワードは「コラボレーション」です。
徐々に市場を席巻してきたニューバランス
はじめに、「NEW BALANCE(ニューバランス)」からお話しましょう。かの有名なAppleの創始者スティーブ・ジョブズもプレゼンテーションの時に履いていたのが、ニューバランスのスニーカー。少し定価が高いこともあり、若年層よりは中高年のユーザーが多い印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そんなニューバランスのプレゼンスが、昨年から少しずつ変わってきました。様々なストリートブランドやスニーカーショップ、著名人とのコラボレーションをリリースするようになったのです。特に昨年7月に発売された、西山徹の手掛けるブランド「WTAPS(ダブルタップス)」とコラボレーションした「N992」は両ブランドファン層も巻き込んだ争奪戦となり、取引価格は10万円を超えたほどの盛況でした。
そうしたリリースを経てニューバランスのユーザー層は広がり、今では原宿のストリートでニューバランスのスニーカーを履く若者を見るのも当たり前の光景に。一体今年はどんなモデルがリリースされるのでしょうか。
① RONNIE FIEG × NEW BALANCE 992 “KITHMAS”
これは、過去の記事でも何度か紹介した今世界規模で乗りに乗っているスニーカーブティック「KITH(キス)」の創始者兼デザイナーであるロニー・ファイグとコラボレーションした「N992」です。
実はこの「N992」というモデルは、ニューバランスの生誕100周年でもあった2006年に作られたもの。それが14年の時を経て昨年に復刻され、そこから前述の流れでニューバランスの市場復権へとつながっていったのです。「最高の履き心地」と評する人も多く、ランニング~ウォーキングまで幅広い用途で相棒となってくれます。
「N992」がすごいのは、パフォーマンスだけではなくその普遍的なシャープシルエット。非常に良質な素材で作られており、ファッションユースとしても最高なのです。この”KITHMAS”というモデルは、2020年のクリスマスにKITHから顧客へのスペシャルオファーとして限定生産・販売されたもの。私はたまたま運良く当選し年明けに日本へ到着したので、実はこれが2021年最初のスニーカーでした。
アッパーには上質なピッグスキンスエードが使用されているので、見た目もただの赤ではありません。見れば見るほどに、濃淡のある色合いを楽しむことが出来ます。この「N992」は国内定価3万円を超える高額モデルですが、買った後に後悔することは絶対にありません。もし街のショップで見かけた時は、ぜひ試着だけでも体験してみてください。
プーマが手掛けた、日米共演。
ニューバランスが「KITH」のロニー・ファイグと手を組めば、2月にはプーマがさらなるビッグな共演を実現させました。それが、このモデル。
② STAPLE × ATMOS × PUMA SUEDE VTG
「×」がなんと2個も…!!!
そう、このモデルはトリプルコラボなのです。ニューヨークを拠点に置くファッションレーベルである「STAPLE(ステイプル)」、そして日本を代表するスニーカーショップ「atmos(アトモス)」が、プーマの人気モデル「SUEDE(スエード)」でコラボレーションしたのです。
このパートナーシップ、元々はステイプルとプーマからはじまりました。歴史は意外と古く、ファーストモデルの発売は2013年。そこから2016年、2018年と定期的にコラボレーションが続き、今回は4作目でした。
当初リーク情報を聞いた時は両者(ステイプルとプーマ)のコラボレーションと思っていたのですが、なんとそこに我らが日本代表アトモスもジョインしたのですから興奮しないわけがありません。過去3作のマテリアルが随所に再現されているのも魅力ですが、最もシンボリックなのはヒール(かかと)の部分。ニューヨークを本拠地とするステイプルのブランドロゴでもあるピジョン(鳩)の逆側に、東京の街を舞うという意味でカラスのロゴが入っているのです。
ナイキやアディダス、ニューバランスと比べるとファン層も落ち着いているプーマですが、このモデルの発売時にはアトモスのサイトへの抽選応募も非常に多く、3月現在も定価を上回る価格で取引されています。コラボレーションはメーカーのファン層だけではなくコラボ元のファン層へも訴求できるので、インパクトも大きいですね。今後の展開も期待したくなる、プーマからのアツいリリースでした。
カニエ・ウエスト、バッシュに進出。
さて、続いてはアディダスへと話を移しましょう。アディダスのコラボレーションといえば、真っ先に思い浮かぶのが世界的なアーティストであるカニエ・ウエストと手掛ける「YEEZY(イージー)」ブランド。日本でもリリース当初から絶大な人気を誇り、ストリートでイージーを見かけない日はないと言えるほどでした。
ところが栄枯盛衰のスパンが激しすぎるスニーカー界、その勢いは長くは続かず昨年くらいから少しブランドの勢いは弱まってきました。新作が出るたびに行列が出来、即日完売が当たり前だったものが、今ではリリース後でも店舗で買えるまでに。そんな中今年の3月1日に突如としてアディダス公式サイトから発売されたのが、このモデルでした。
③ ADIDAS YZY BSKTBL QNTM
これは、「イージー」が手掛けた初のバスケットボールシューズなのです。もともと数年前からスポーツ分野に進出していくことは公式として言及されていたのですが、それがようやく実現するという形に。
実はこのモデル、最初にお目見えしたのは2020年2月にシカゴで行われたNBAオールスターのタイミング。シカゴの街をトラックが走り、履いているスニーカーと交換でこのモデルをあげるというプロモーションを行いました。この設計が秀逸なのは、「履いているスニーカーと交換」という形を採用していたこと。履かざるを得ないので、半ば強制的に新品での転売を防ぐという効果がありました。(実際は裸足で去っていく転売者もいたようですが)
そんな限定発売だったモデルが、この3月に初めて日本国内で発売されたのでした。ずっと気になっていた私は、公式でのゲリラリリースに遭遇して狂喜乱舞し、即購入。気づけばすぐに完売しており、小康状態だったイージーの底力を垣間見ることもできました。
また、モデルとしてもバッシュらしからぬ外観が魅力的です。ステッチが少なく、美しい流線型のボディとなっており、一度見たら記憶に残るインパクトです。さらにクッショニングには、過去モデルでもおなじみの「ブースト」という素材がフルで採用されているので、外観だけでなく内装含めて完全にバスケットボール仕様となっています。
リーボックが誇る、安心安定の良コラボ。
最後にご紹介するのは、リーボック。
先日資本関係にあったアディダスから事業売却が発表され今後の動向に注目が集まっていますが、そんな風もどこ吹くやら新年から数々の良作を連発しています。特につい先日リリースされたモデルは、私にとっては上半期ベスト3に入るほどの一足でした。
④ AWAKE NY × REEBOK CLASSIC CLUB C 85
これは、ニューヨークのストリートブランド「AWAKE(アウェイク)」とコラボレーションした、リーボックの代表作でもあるクラシックスニーカー「CLUB C(クラブシー)」というモデルです。
両社は2020年からパートナーシップを組むようになり、昨年も数々のモデルをリリースしてきました。今回は2021年に入って初めてのリリースとなります。同時に「CLASSIC LEATHER(クラシックレザー)」というもう一つのリーボックの代表モデルも発売されましたが、私が購入したのはクラブシーでした。
まず特徴的なのはアッパーの配色。これは「CHALK(チョーク)」と称される、クリームがかったホワイト。とにかくその色合いがレザーの質感と相まって美しく、サイドのオーバーレイには同色スネークスキンが配されているのもたまりません。そんなワントーンなアッパーに強烈な印象を作るのが、シューレースとサイドロゴのクリアブルー。
シンプルながらしっかりと主張をするという、アウェイクのセンスが炸裂した素晴らしいコラボレーションモデルなのでした。
ということでちょっとボリューミーでしたが、“コラボレーション”という軸で振り返る各社の2021年のリリースモデルはいかがでしたか?
スニーカー界はナイキを中心に回っているのが大勢ですが、それでも各社それぞれに魅力あるモデルを世に送り出しています。今回紹介したスニーカー達が、そんな発見のきっかけになることを心より願っています。
2021年3月公開