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新春しぶさんぽ VOL.3

今年は面白くなりそうな大相撲

亀戸香取神社からJR亀戸駅まで歩いて10分ほど。総武線に乗って目指す先は日本武道館だ。亀戸から2つ目、両国駅に停車すると目の前に両国国技館がその威容を誇る。両国の2020年は激動だった。

1月場所は德勝龍が20年ぶり史上2人目の幕尻優勝という波乱の幕開け。無観客となった3月場所は横綱白鵬が44度目の優勝を飾り、場所後に朝乃山の大関昇進が決定した。5月場所はコロナで中止。7月場所はまたしても幕尻の照ノ富士が優勝するという異例の事態に。9月場所は関脇の正代が優勝してこれまた大関に昇進。11月場所は大関の貴景勝が優勝して締めた。

こうしてみると20年の大相撲はなかなか明るい話題があったと言えるだろう。なんてったって大関に2人も昇進したのだ。さらに21年は貴景勝の横綱昇進があるかもしれない、という大きな期待を新たな年に提供した。いいぞ、大相撲! ちなみに東京オリンピックで両国国技館はボクシングの会場となる。

ガタゴトと電車は進み、隅田川を渡って東京ドームを横目に水道橋を過ぎ、市ヶ谷まで移動した。ここで地下鉄に乗り換えて九段下へ。改札を抜けて地上に出ると“大きなたまねぎ”の日本武道館が見えてくる。

ちなみにたまねぎとは屋根のてっぺんにある擬宝珠のこと。東京オリンピック・パラリンピックで柔道(パラも)、空手の会場となる武道館は大会に向けて大規模な改修工事が行われた。一番の変化は南側に選手がウォーミングアップなどで使う中道場棟が新たに建設されたこと。富士山の偉容を想像させる自慢の屋根は以前と同じ緑青色にふき替えられた。

朝日新聞によると、64年に日本武道館が完成したとき、屋根は赤銅色だったという。銅板を使って屋根をふいて赤銅色だったのが、年月をかけて酸化し緑青色に変わったのだとか。今回は銅価格の高騰でステンレスやアルミニウム合金を使い、「周辺の緑と調和するように」という配慮で緑青色にしたのだという。う~ん、赤銅色もけっこう渋くていいと思うけど…。このご時世で価格と言われたら黙るしかない。

1964東京五輪開催の直前に完成した日本武道館

調べて見ると日本武道館が完成したのは64年の9月というからオリンピック開幕の直前ということになる。10月3日に武道館の開館式、同10日にオリンピック開会式、柔道競技開始が同20日というからいまの感覚からすると何とも慌ただしい。

そもそも64年の東京オリンピック開催が国際オリンピック委員会の総会で決まったのが1959年。日本の国技である柔道がオリンピックの正式種目に決定したのは61年で、翌年に文部省から日本武道館建設の許可が出た。以下、日本武道館のホームページから抜粋したい。

建設は、天皇陛下の御下賜金のもと、国費と国民の浄財およそ20億円をもって、1963年10月に着工、工事期間わずか12ヵ月、関係者の昼夜を分かたぬ奮闘によって、1964年9月、世界に誇る日本武道の大殿堂が見事に完成しました。

なんだかものすごい突貫工事だったと思わせるような表現だが、こうして誇り高き日本武道の大殿堂は完成したのである。

1964年の柔道競技は無差別級、重量級(80㎏超)、中量級(80㎏以下)、軽量級(68㎏以下)の4階級で行われた(現在は60㎏級から100㎏超級まで7階級)。全階級金メダルが至上命令だった日本は軽量級から中野雄英、岡野功、猪熊功が優勝したものの、無差別級で神永昭夫がオランダの巨人、アントン・へーシンクに敗れ、この敗北をもってして“柔道ニッポンの敗北”とメディアに叩かれることになった。時代を感じさせる出来事だ。

柔道はその後、68年のメキシコ大会でいったん正式競技から外れ、72年のミュンヘン大会で復活。以降、オリンピックの正式競技として親しまれている。女子が採用されたのは1988年のソウル大会からとなる。

そういえば近藤カメラマン、高校時代は柔道部員。あこがれの柔道選手なんていたのでは?

「やっぱり私たちの時代は古賀稔彦ですね。あの背負い投げ。低い態勢からの“古賀背負い”をマネしたものです」

「じゃあ、背負い投げが得意技だったんですね?」

「………」

“平成の三四郎”こと古賀稔彦は92年のバルセロナ五輪でけがを負いながらも金メダルを獲得し、日本列島を感動の渦に巻き込んだ。平成の三四郎をマネした柔道少年は多くとも、本当にマネできた少年は少なかったはず。近藤カメラマン、恥ずかしくないぞ!

今年のオリンピックで柔道ニッポンの選手たちはどんな活躍を見せてくれるのだろうか。男子66㎏級の阿部一二三と女子52㎏級の阿部詩の兄妹アベック金メダルはメディアが最も期待するところだろう。個人的にはオリンピックの醍醐味とも言える無印選手の優勝を見てみたい気がする。

さあ、そろそろ北の丸公園をあとにしよう。田安門を抜けて右手に皇居のお堀を見ながら再び九段下へ靖国通りを下っていく。歩数計の数字は1万4561歩。そろそろ仲間たちと喉を潤しながらスポーツを語る時間だ。

新春しぶさんぽ 終

2021年1月公開

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