「今年のアシックスは、一味違う。」
スニーカー好きアスリートへの取材へ行くたびに、みな口を揃えてそう言っていました。それもそのはず、アシックスにとってこの2020年は本当に重要なものだったのです。
まず、一番は何と言ってもオリンピック。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、スポーツ用品部門唯一のゴールドパートナーになりました。日本代表選手団のオフィシャルスポーツウェアをはじめ、日本中のトップアスリートがアシックスに身を包むという素敵な光景が見られるはずだったのです。もちろんその後の展開は皆様も知る通り、延期という結果に。夢の続きは、来年へと持ち越しになりました。
そして、続いてはアシックス最大の人気モデルと言っても過言ではない「gel lyte3(ゲルライト3)」の生誕30周年というモーメント。日本だけでなく世界中で愛され、ファッションシーンでも重要な存在である本作の生誕記念ということで、非常に多くのプロモーションが展開されました。
本来であれば、この両軸の盛り上がりを通じてアシックスブランドの展開を進めて行きたかったところでしょう。思ったとおりには進まなかった2020年ですが、それでも確実に、今年のプロモーションは世の中へ影響を与え、多くの人々がアシックスに触れたと私は感じています。
それでは、アシックスの2020年を振り返ってみましょう。
2020年、日本最速でスニーカーを発売!
オーオーオー さあWAになってお~どろ~♪
2020年1月1日、午前0時ジャスト。
私のルーティーンは「行く年来る年」ではなく、ジャニーズのカウントダウンライブです。テレビでは相変わらずキラキラしたイケメン達が歌っている一方で、私は全力でスマホを叩き決済ボタンを押していました。
――ASICS GEL PTG “black”
お目当てはこのスニーカー。
実は2020年は、並み居るメーカーを押しのけアシックスが日本最速の元日0時0分にスニーカーを発売したのでした。最高のスタートダッシュを決めたといえましょう。
このGEL PTGは1983年に発売されたバスケットボールシューズである「FABREPOINTGETTER」がベースで、”日本で元日に誕生した自動車”がデザインモチーフとなっています。引きまれるような漆黒の輝きが特徴で、1950年代の当時の車の深みのあるブラックを光沢のあるレザーで表現しました。また、インナーソールのブルーは、当時のチェアシートの色を再現しています。そしてヒールの「GEL」の刺繍はテールランプを意識した赤のカラーリング。シンプルながら素材や細部の作りまで細やかに作られた、ラグジュアリーな一足でした。
メダリストも虜にした、珠玉のコラボモデル。
こうして年始から上々のスタートを切ったアシックスでしたが、その後はコロナウイルス流行の影響もあり思うようなプロモーションができなくなってしまいました。これはアシックスに限った話ではありませんが、やはり店頭での販売が制限されてしまったことは大きなマイナスとなりました。
こうして世界中が、日本中が耐え忍ぶ時期がしばらく続いたのち、緊急事態宣言が解除された6月のことでした。アシックスが、動きます。
――SEAN WOTHERSPOON×ATMOS×ASICS GEL-LYTE III
もしかしたら見覚えのある読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう、7月に掲載した『x TOKYO』で、ロンドン五輪フェンシング男子銀メダリストの三宅諒選手も履いていたあのモデルです。
日本を代表するスニーカーショップ「atmos」のディレクターである小島奉文さんと、世界に名を馳せるスニーカーアイコンであるショーン・ウェザースプーンが、アシックスのゲルライト3の生誕30周年を祝して奇跡のタッグを組んだのです。暗いニュースが続いたスニーカー界・ファッション界にとっても大きなニュースで、日本中から多くの人がこのモデルの抽選に応募したのでした。ここだけの話ですが、小島さんによると「数万単位の応募があった」そうです。本当にすごい数ですね….
もちろんコラボというニュースもさることながら、その人気はデザインがあってこそ。ショーンが陽気で明るいロサンゼルスの雰囲気を右足に、小島さんが眠らない夜の街東京のイメージを左足に込めたミスマッチ(左右非対称)デザインは、スニーカーヘッズたちを唸らせる完成度です。三宅選手も大のお気に入りらしく、練習やプライベートでもヘビロテで履いているのだとか。
どんどん続く、30周年記念モデル。
こうして6月にまた盛り上がりを見せたアシックスは、アニバーサリーモデルである「ゲルライト3」を続々と展開していきます。
7月にはゲルライト3を世界に広めたキーマンの一人であるロニー・ファイグが手掛けるブランド「KITH(キース)」が日本初上陸。東京の新しいランドマークとなったMIYASHITA PARKに出店し、そこでもまたコラボレーションモデルが発売されました。なんと、その時に並んだ人数は平日にもかかわらず400人以上!コロナ禍で厳格な並びルールであったことも添えておきますが、それでも大きな人数ですよね。
そして9月には、こんな素敵なコラボレーションモデルが発売されました。
――ASICS GEL-LYTE III OG “MIDNIGHT DENIM”
鮮やかな濃紺のデニム地に、同色のレザーでまとめられた一足。実はこのデニムは、日本でも有名な産地「岡山デニム」の素材を用いています。しっかりとタグも付いていますね。
これは今年を象徴する一足だと思います。生誕30周年を迎えたゲルライト3を、日本の伝統的な岡山デニムを使って作り上げた、究極のメイドインジャパンコラボレーション。日本が、東京が盛り上がるはずだった2020年に、これがちゃんとプロモーションされていればと思うと悔しい気持ちでいっぱいになります。
デニムを使っていることで、履けば履くほどに色落ちして自分色に染まっていくのも魅力の一つ。長く足元を支えてくれる一足ですね。
――END. × ASICS GEL-LYTE III “PEARL”
さらに10月には、ゲルライト3のこんなモデルも発売されました。これは、イギリスを拠点に置くブティック「END(エンド)」とのコラボレーションモデル。PEARL=真珠がモチーフになっています。
この由来が面白く、結婚30周年が”真珠婚式”と呼ばれていることからきています。ゲルライト3の30周年とかけているのですね。そこからインスピレーションを受け、真珠をモチーフにパープル、ラベンダーグレー、ピンク、アイボリーなど様々な色を重ね合わせて繊細な光沢感を表現しています。
ちなみにこれは、私が買いましたが自分用ではありません。たまたま妻とスニーカーショップへいったら「これ欲しい!」と反応し、購入したのでした。日頃そこまでスニーカーに詳しくない女性も一瞬で恋に落ちてしまうデザイン、恐るべしアシックス….
スニーカーシーンから振り返るアシックスの1年、いかがでしたか?
残念な出来事もありましたが、主力モデルのゲルライト3のアニバーサリーという点で非常に多くのスニーカーが発売され多くの人が買い求めました。
物も捉えようです。この一年で、アシックスを初めて履いた人、もっと好きになった人はたくさんいるでしょう。そんな下地があって迎える、来年の東京オリンピック。まだまだ予断を許さない状況ですが、きっとその時のプロモーションは今年以上に多くのリアクションがあるのではないかと私は思っています。
ナイキも、アディダスもいいですが、やっぱり我らが日本代表のアシックスは応援したいですよね。来年もたくさん買おうと思います(笑)
2020年11月公開