日本ハンドボールリーグに初参戦のジークスター東京は開幕2試合目となった8月30日、トヨタ自動車東日本に競り勝って記念すべきリーグ初勝利を挙げた。新規参入チームのこの時点で勝利は快挙とも言えたが、その後は勝ち星に恵まれず、成績は10月終了時点で1勝6敗1分の10位。リーグ戦が中休みにはいった10月下旬、横地監督がここまでのチームの道のりを振り返ってくれた。
日本リーグ初采配を振るう横地監督
開幕時はある程度の自信 2戦目で初勝利を挙げる
――ジークスター東京は17年ぶりに東京を本拠地とするチームということで華々しく日本リーグにデビューしました。とはいえ新規参入のチームがいきなり活躍できるほど日本リーグは甘くありません。監督自身は開幕を迎えるにあたり、どのようなことを考え、どのようなプランを持っていたのでしょうか。
横地 いまのメンバーで今季スタートしたのが4月で、4月と5月はいきなりコロナの影響を受け、チームで集まっての練習ができませんでした。オンラインでトレーニングの指導をして、ほかにもランニング程度はやるように伝えていましたが、この時期にトレーニングできなかったのは正直きつかったですね。どこのチームの事情は同じなんですけど。
――それは新規参入チームだからとりわけ、ということでしょうか?
横地 6月に入ってからプロ選手3人が加入してくれたのですが、それが正式に決まらない段階では、既存のメンバーで戦うとなるとかなり厳しいと感じていました。開幕を考えると7月には試合に向けた練習が中心になりますから、4、5、6月というのは一番の“鍛練期”になります。基礎的な体力、フィジカルを最も鍛えられる。リーグ戦を戦い抜く上でこの3ヶ月は大きなポイントになると思っていたんです。
――既存のメンバーとは移籍組ではなく、もともと日本リーグに誘われなかった選手たちがトライアウトをへて集まったということですね。
横地 そういうことです。彼ら若い選手たちと、もともと日本リーグで戦っている選手たちと何が違うのかといえば、技術もありますけど一番はフィジカルの差なんです。その差をどう埋めるのかがカギになると思っていた。そこを徹底しようと思っていた3ヶ月間がなくなってしまったので、正直なところ個人の基礎的な部分に関してはあまりいい準備ができなかったということです。
若いチームを支えるGKの甲斐
――そうした中でもリーグ戦のスタートは悪くなかったと思います。
横地 そうですね。プロ選手である日本代表経験者の東長濱秀希、信太弘樹、甲斐昭人(ゴールキーパー)の3人が合流してチーム力が一気にあがりました。開幕前に強豪の大崎電気さんと2回練習試合をさせてもらって、いいところも出ました。まだまだではありましたけど、ある程度勝負にはなるのかなと感じていました。
――それなりの手応えを感じて開幕を迎えたわけですね。
横地 そうですね。開幕戦でトヨタ車体さんと試合をして27-34で負けました。ただ、トヨタ車体さんはトップ中のトップのチームです。勝つのは難しかったですけど、勝負できた時間帯もあったし、あと何か一つ、二つレベレルアップできれば手の届かない相手ではない、と感じることができました。
――そして2戦目で見事にリーグ初勝利を挙げることに成功します。
横地 トヨタ自動車東日本さんに勝つことができて(31-28)、次の琉球コラソン戦は引き分けでしたけどちょっと悪い内容だった(22-22)。でもシーズン中はそういう試合もありますからしっかり修正すればいい。ところが4戦目の大同特殊鋼戦の後半に東長濱がけがをして欠場しました。その試合はなんとか最後まで戦うことができましたが、これを機にチームが一気に崩れていきましたね。
大黒柱の離脱で一気にチームが崩れる…
――強豪チームである大同特殊鋼戦は、東長濱選手が抜けたあとも食らいついて、最後まで粘り強いところを見せました(28-30で敗れる)。かなり健闘したと感じました。結局、東長濱選手はそこから試合には出ていません。そのあと崩れたということは、やはり東長濱選手の存在がそれほど大きかったということでしょうか?
大黒柱の東長濱は4戦目にけがで戦線離脱となった
横地 その通りですね。東長濱の離脱は攻守において大きな影響がありました。彼が左利きというのも大きかった。そもそもうちのチームは左利きが少なく、東長浜のように上のポジションの選手となると代わりの左利きはいないんです。本来は左利きのほうが有利なポジションに右利きの選手を入れるわけですから、どうしても苦しくなってしまいました。
――ほかにはどんな影響がありましたか?
横地 離脱とは関係ないんですけど、信太と東長濱ほぼフル出場しています。現代のハンドボールって昔に比べてアップテンポになって、どんなエースでも普通はフル出場ってないんですよ。ところがうちは2人が抜けるとガクッとチーム力が落ちてしまうので2人を下げることができない。そうすると2人がフル出場しても大丈夫なようなゲームメイクが必要になるんです。
――というと?
横地 体力が必要なアップテンポな試合ができないということです。それがよく表われたのがトヨタ車体戦で、相手はうちの選手層が薄いことを知っているので、どんどん選手を入れ替えてテンポを上げていった。フル出場の信太や東長浜にとってきついゲームにしていくわけです。
――ただでさえ選手層の薄いところに、2本柱の1人、東長浜選手が抜けてしまった。マイナスが一気にチームを襲ったという感じでしょうか?
横地 そうなんです。そこから選手たちもどんどん自信を失っていきました。
2020年11月公開