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ホンダF1の歴史 VOL.1

2020年10月の頭に衝撃的なニュースが飛び込んできました。来年の2021年限りで、ホンダがF1事業からの撤退を発表したのです。ホンダの社長である八郷社長は「将来のカーボンニュートラル実現に向け、それに集中する為にF1参戦を終了する」と語りました。

ガソリンを燃やせば二酸化炭素が出て地球温暖化の原因となります。もちろん、ガソリンを燃やして走るエンジンを乗せて走るF1に関してはカーボンニュートラルから程遠い存在です。

欧州各国は2030年前後を目処にガソリン車の販売を禁止する方針を示しており、ガソリン車の最高峰であるF1の肩身も狭くなっている状況です。その反対にフォーミュラEなどの活動も活発になってきており将来的にはF1がフォーミュラEに取って代わるのではないかと思っております。

※フォーミュラE
ガソリンを使用しない電気自動車のフォーミュラーカーによるレース。エンジンが無いので非常に静かである。個人的には爆音を轟かせるF1よりも面白みに欠ける。

今回はホンダのF1活動における歴史から今回の撤退に至るまでを綴っていきます。

ホンダが誇るスーパースポーツカーNSXを鈴鹿サーキット1コーナーにて

 

F1参戦 第1期~第2期

ホンダが初めてF1に参戦したのは、私も生まれてもいない1964年のこと。当時はオートバイメーカーとしての知名度が高く、自動車まで作っているというのは世間には知られてはいませんでした。

当初はエンジンだけ供給するだけのエンジンサプライヤーとして参戦を予定していたのですが、契約をしていたロータス側から急遽ホンダエンジンを載せらないということが決まり、シャシーも独自で開発をすることとなりました。

当時のホンダは軽トラックしか作ったことがなく、レーシングマシンのシャシーを一から作るのは非常にチャレンジングでもあり、ホンダの創業者である本田宗一郎の夢でもありました。この背景には、本田宗一郎の「よその真似をするのが嫌いで、独自技術で難関を突破したい」という思いがあり、私が察するに最先端を走るF1の技術を自動車事業に落とし本格的にホンダの車作りをスタートさせたかったのだと思います。

64年の初参戦はシャシー開発もあってか、3戦しか戦えませんでした。しかし、翌65年にはフル参戦を果たし最終戦にて初優勝を果たします。エンジンもシャシーも作りフルワークスとして参戦2年目での優勝はホンダの技術力の高さが伺えた年となりました。しかしながら、66年にはエンジンレギュレーションの変更があり開発が遅れ不調に終わります。67年には1回の優勝し2回目のレース勝利ということで順風満帆に見えました。

68年に空冷エンジンに固執したホンダエンジンは、この年のフランスGPでエンジンが炎上。ドライバーが死んでしまうという悲劇が起きます。ホンダのF1撤退が囁かれはじめ、その噂通りにこの年を最後にF1から撤退をします。

当時の撤退理由として、今回と同じく環境に配慮したエンジンを開発ということでした。

その後、ホンダは沈黙を守りますがF1に「ターボエンジン」という流れができると再度F1に興味を持ち始めることとなります。第1期はフルカスタマーとしてシャシーからエンジンも作って参戦をしましたが、今回はエンジンサプライヤーとして1983年に復帰をすることとなり、ここから伝説の第2期がスタートします。

鈴鹿サーキット ヘアピンコーナー

 

1983年にスピリット・ホンダとして復帰。翌1984年には名門のウィリアムズにエンジンを提供。復帰後のホンダエンジンは優秀とは言えず、1984年は厳しい年となりますが何とか1勝をしまして17年ぶりにレース優勝の美酒を味わうこととなります。その後もウィリアムズという名門チームとの関係は続き1986年にはウィリアムズ・ホンダとして総合優勝を飾ることとなります。ホンダ初の総合優勝となり本田宗一郎も喜んだことでしょう。そこから破竹の勢いで91年までホンダエンジンが勝ち続けます。86年から91年まで、ホンダエンジンがないと総合優勝ができない。そんな状態が続きました。

日本人からしてみたら心底嬉しいものの、あまりの強さにレースとしての面白みは少なかったのではないかと思います。レース外での政治の駆け引きなどに興味が注がれた時代でした。その後、世界的なホンダの自動車販売不振により1992年にF1を撤退。1983年の復帰から1992年までに69勝をあげ、第2期は大成功という結果に終わったのです。

F1ファンから惜しまれながらも撤退することとなりましたが、F1はお金がかかるもの。莫大なお金を掛けてF1に参戦し、知名度を上げても市販車が売れないのでは仕方がありません。一節には、1991年に本田宗一郎が亡くなってしまい、肝いりであったF1への足かせが無くなったことにより撤退を決めたと噂もされましたが、「環境への配慮」という逃げ道を作らずに撤退したことは正直者で非常に格好が良いと私は思います。

次回は第3期から今回の撤退までをレポートをお届けします。

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2020年11月公開

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