メルセデスの一強時代
開幕戦から3戦目までメルセデスの一強を前回のレビューでお届けしました。このままメルセデス独走の雰囲気があります。本当に強い。ここ何年もメルセデス一強時代は続いておりましたが、今年のメルセデスはいままでと違う強さを見せております。それはDASの効果なのか?明らかに今年のメルセデスは他チームと次元が違う走りを見せています。
※DAS※
レーシングカーは曲がりくねったコーナーを素早く曲がる為にトー角をトーアウトにしている。トー角とは直進方向にタイヤを何度ズラすか?の角度であり、トーアウトとはガニ股と言ったほうがわかりやすい。F1はガニ股である。ガニ股のほうが曲がりやすいのである。しかし、それはコーナーだけ。ストレートなどはガニ股ではなく真っ直ぐのほうがタイヤにも優しいし、スピードが出るのである。ストレートに走る時だけガニ股を真っ直ぐに矯正できるシステムと言えばわかりやすいだろう。
第4戦のイギリスグランプリ、シルバーストーン。ここでもメルセデスの速さが光りました。予選一番手はハミルトン。1:24:303でトップタイム。2位のボッタスはコンマ3秒差。3位のフェルスタッペンはなんと1秒差。予選タイムでなんと1秒もの差が開いてしまいました。F1での1秒差は余程のことが無い限り覆せない差となります。それだけメルセデスとレッドブルにはまだまだ差がある状況です。
運命の最終週
イギリスグランプリは最後の最後に大きなハプニングが起きました。1位を走行していたハミルトン、2位を走行していたボッタス。このグランプリもメルセデスがワンツーフィニッシュを飾ろうかという矢先、F1の神様はその2台に過酷な試練を与えました。
まず最初に異変が起きたのは2位を走行していたボッタス。順調に走行をしていたのですが、なんとあと2周でチェッカーフラッグというところでいきなりタイヤがバースト。スロー走行を余儀なくされそのままピットイン。12位まで順位を落としてしまいました。
※タイヤバースト※
タイヤが限界を迎えるか、デブリ(ゴミ)を拾ってタイヤを切ってしまいタイヤが粉々になってしまう現象。基本的にはタイヤの限界はドライバー自身がわかるので限界を迎えるとピットインをしてタイヤを換えるのですが、デブリを拾ってしまうと急にバーストをするか、スローパンクチャーといってゆっくりと空気が抜けてしまいます。F1のパーツはカーボンで出来ておりF1マシン同士が接触をするとカーボンが飛び散ってしまいます。そのカーボンは尖っており、万が一踏んでしまうとバーストに繋がる危険性があります。
なんとも不運な結果に終わってしまいましたがメルセデスが強すぎることもあり、心のどこかで「やった!」と叫んでいる私がいました。メルセデスファンの皆様ごめんなさい。
ボッタスのタイヤバーストを受け、3位を走っていたフェルスタッペンはピットイン。なぜこのタイミングでピットイン?と思われる方もいるかと思いますので、説明をしますとF1はゴールした順位によってポイントが振られます。
1位:25ポイント 2位:18ポイント 3位:15ポイント 4位:12ポイント・・・・となり、1位と2位のポイントは7ポイントも差があり1位の比重がものすごく大きくなっております。それだけグランプリ優勝という価値を出そうというポイント制度になっております。しかし、ポイントを獲得するのは順位だけではないのが今のF1。レース中に一番速く1周した者に対しても1ポイントを付与しています。これをファステストラップポイントといいます。フェルスタッペンはこの1ポイントと2位の18ポイントの合計19ポイントを狙ったのでラスト2周でピットインをし、新しいタイヤを履いてラスト1周でファステストタイムを出そうとしたのです。
さぁ、フレッシュタイヤ。ラスト1周。ファステストなるか?ハミルトンには届かないがフェルスタッペンの少しでもポイントを獲得してやろうという気概が感じられました。
ファイナルラップ。ハミルトンは独走状態。このまま優勝に思われた、、、、しかしF1の神は黙っていませんでした。きっと神様もF1好きなのでしょう。このままメルセデスが独走を許すのはけしからんとばかりに、ハミルトンにも試練を与えます。ハミルトン、ファイナルラップ。ターン9(9番目のコーナー)に差し掛かろうというところでハミルトンのタイヤがバースト。なんと、メルセデス2台にタイヤバーストというなんともハードな試練です。ハミルトンも最終周でスロー走行。後ろはレッドブルのフェルスタッペン。差は30秒。
30秒差はみるみると縮まるが、フラフラになりながらもハミルトンは何とか1位でチェッカーフラッグ。その5秒後にフェルスタッペンがチェッカー。神の試練を乗り切ったハミルトン。乗り切れなかったボッタス。恐らく2020年シーズンを制するのはハミルトンで間違いないでしょう。もし、フェルスタッペンがピットインせずにそのまま走行をしていたらフェルスタッペンが優勝をしていたでしょう。しかし、レースの世界に「もし」はございません。結果しかないのです。
最後の最後まで目が離せなかったイギリスGP。第5戦の舞台もシルバーストーン。同じコースで2週連続の開催です。
F1の神様は次のレースでどのような試練を与えるのでしょうか?
2020年8月掲載