アシックスの持つ、ファッションとしての魅力。
この2020年に様々なアーティスト・ブランドとコラボレーションを展開してきたことを第1話で書きましたが、少しその魅力は伝わりましたでしょうか?
今回はタイムスリップして、小ネタを散りばめながら過去のコラボレーションモデルを一部紹介していきたいと思います。
あのビッグイベントに合わせて作られた一足
まずは、ニューヨークのセレクトショップ「KITH(キス)」のディレクターであるロニー・ファイグ(Ronnie Fieg)が手掛けた一足。
ご覧ください、このピカピカな輝き!
2014年6月に発売された、【Ronnie Fieg x ASICS Gel Lyte III “KITH Football Equipment” Pack】というゲルライト3のコラボレーションモデルです。
この発売年月と商品名でピンときた方はスポーツ通。
そう、これはサッカーワールドカップのブラジル大会に合わせてリリースされたものなんです。大会へ臨むアメリカ代表の栄光を祈念して、ゴールド×星条旗カラーで彩られたデザインはインパクト満点。
こんな素敵なデザインを作ったロニー・ファイグ、実はすごい人なのです。ニューヨークのクイーンズで生まれたロニーは、若干13歳の時からデイビッドZ(DAVID Z)というスニーカーショップに関わるように。販売員からヘッドバイヤーを歴任したのちに独立し、2011年に「KITH」を立ち上げました。なんとその時はまだ28歳でした。
それが今では世界中のファンが「KITH」のアイテムを買い求め、店舗も様々なブランドのシューズやアパレルを取り扱うようになりました。第1話でも触れましたが、7月28日にオープンした東京のショッピング施設「MIYASHITA PARK」にKITHの国外初出店として「KITH TOKYO」も展開しています。
これほどまでに大きな存在となったロニーが、ずっと愛してデザインを手掛けてきた存在。それこそがアシックスなのです。
世界中が祝った、ゲルライト3の25周年。
続く2015年は、アシックスにとって節目の一年。世界中で愛されるモデルであるゲルライト3の生誕25周年でした。ファッションという観点でもこの一年のインパクトは大きく、世界各国のスニーカーショップがそのモーメントを祝ってお祭り騒ぎ。なんと計12社も集まり、1月ごとに1足ずつコラボレーションモデルをリレー展開するという夢のような一年でした。もちろん先程紹介したロニーや、日本からはSPOALでもおなじみatmos(アトモス)・mita sneakers(ミタスニーカーズ)も参加しています。
中でも私の1番のお気に入りが、こちら。
【CONCEPTS × ASICS TIGER GEL LYTE III 25TH ANNIVERSARY BOSTON TEA PARTY】というモデルで、ボストンの人気スニーカーショップ「CONCEPTS(コンセプツ)」がデザインを手掛けたゲルライト3です。
このモデルが特に魅力的なのは、デザインの由来。商品名にもありますが、1773年にボストンで起こったアメリカ独立革命を象徴する出来事「ボストン茶会事件(BOSTON TEA PARTY)」からインスパイアされています。アッパー部分の色に注目してみてください、実は当時の北アメリカで植民地争いをしていたイギリス軍の象徴としてレッドが、ニューイングランド軍の象徴としてネイビーがブロッキングされているのです。まさにボストンの由緒あるスニーカーショップならではのデザインと言えますね。
ロニー・ファイグとアシックスの10周年
ファッションアイテムとしてのアシックスの現在の地位、そこに最も貢献したひとりは冒頭でも紹介した「KITH」のロニー・ファイグです。そんな彼とアシックスにとっての2016年は、パートナシップ開始から10周年という記念すべきモーメントでした。
両者が初めてコラボレーションしたのは、2007年のこと。ちなみに当時のロニーはまだ24歳で、そこから10年でなんと40足以上もスニーカーを世の中へ送り出してきました。そうして迎えた2016年11月22日を”LEGENDS DAY COLLECTION”と銘打って、記念のスニーカーをリリースしたのです。
全部で6足ほど発売され、そのうちの1足がこちら。
【Ronnie Fieg × asics “Legends Day” Gel Lyte 3.1】です。これは、ゲルライト3のアッパーに、「GEL Nimbus(ゲルニンバス)」というモデルのソールを組み合わせたハイブリッドモデル。そのため”3.1”というナンバリングになっています。
まず何より、箱がすごい。アニバーサリー感が思いっきり伝わってくるスケールの大きさです。サーモンをモチーフにしたそのデザインは、アッパーがワントーンのピンクカラーに。ソールはホワイトベースにしつつ、ネイビーカラーのゲルを挟むことで全体のトーンを引き立たせています。
みなさま、もうお気づきでしょうか?
ファッションとしてのアシックスを語ると、日本人が本当に出てきません。それだけ、このモデルが世界的に人気を博しているということ、もっと言えば日本よりもはるかに世界中で愛されているということです。
分かりやすく言うと、1990年代のエアマックスブームと真逆の現象です。あの時は、本国アメリカではさほどでもなかったのに日本では爆発的な人気でした。アメリカ人から見たNIKEは、日本人から見たアシックスと同じで、運動やスポーツに直結するものだったのです。
ファッションとしてのアシックスは、ある意味「逆輸入」のような形で日本を少しずつ席巻してきています。一部のフリークだけではなく、広いスニーカーファンが注目するようになったことで、街中で少しずつ見かけるようにもなりました。
今回紹介したモデルも、いい意味でアシックスっぽくないデザインだったと思います。最終話では、アシックスのファッショナブルな履きこなしをたくさん見てみましょう!
2020年7月掲載