一度は足を運んでみたい野球殿堂博物館
野球を見ただけで東京ドームを離れてしまうのはもったいない。ドームシティ内にはまだまだ他にも魅力的な施設がそろっている。その中の一つ、野球殿堂博物館は一度は足を踏み入れてみたい価値ある場所と言えるだろう。
野球殿堂博物館は1959年6月に開設され、東京ドームができた88年に現在の場所に移ってきた。収蔵品は名選手のバットやグローブ、写真を含めて約4万点。王貞治が世界記録となる756号を放ったホームランボール、張本勲が史上初の3000本安打を達成したバット、福本豊がこれも世界記録となる939盗塁を達成したスパイク! もうマニアはよだれダラダラだろう。
ドームシティ遠景、中にはさまざまなエンタメ施設が
さて、ここでいきなりクイズを出してみたい。2020年に野球殿堂入りをはたした3人の人物はだれ?
答えは田淵幸一、前田祐吉、石井連蔵の3氏。阪神、西武で活躍しダイエーの監督も務めたタブチくんは知る人も多いのではないか。しかし、後ろの2人になると「?」が多いはず。前田氏は慶応大の監督を長く務めるなどアマチュア球界で活躍。石井氏は早稲田大の監督を経験したほか、朝日新聞社で日米大学野球の実現に奔走したことが評価された。
殿堂博物館はプロだけでなく、アマチュアを含めた野球のすべてを網羅しているのだ。ちなみに東京ドームは11月に開催される都市対抗野球の聖地でもある。このときはチームの母体となる企業の社員がオリジナルの法被を着て入口付近にたむろしている姿をよく見かける。これもドームシティの風物詩の一つと言えるだろう。
野球博物館に別れを告げ、ドームシティ内にあるジェットコースター、サンダードルフィンを見上げながら東京メトロの後楽園駅に足を向けた。サンダードルフィンは駅ビルの右手に立つビルの壁を突き抜けるようにコースがデザインされている。このビルのメインの施設、東京ドーム天然温泉のスパ・ラクーアにも軽く触れておきたい。
白山通りから見た講道館、左はラクーア
柔道の総本山、講道館も近くにあった!
さて、後楽園駅まで来たら、そろそろ東京ドームシティに別れを告げよう。私たちは駅をすり抜け、東京メトロ丸ノ内線路沿いに足を東に向けた。目の前にドンと飛び込んできたのは柔道の総本山、講道館である。
かの嘉納治五郎師範が講道館を創設したのは1882年(明治15年)のこと。嘉納氏は日本のオリンピック初参加に向けて尽力し、1909年に東洋で初のIOC(国際オリンピック委員会)委員となった。日本が初めて参加したストックホルム大会では団長に就任。昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』では、役所広司が演じていた髭の人物、と説明すると分かりやすいだろうか。
講道館は日本発祥の柔道の総本山ではあるのだが、武道館のような和風の建築ではなく、外観はただのビル。初めて見た人はちょっと拍子抜けするかもしれない。
しかし中身はとても充実している。全国から訪れる柔道家が練習できるように道場やトレーニング施設、宿泊施設が完備され、柔道に関する資料館や図書館もある。日本国内だけでなく、海外からも「講道館で練習したい」と毎年多くの選手が訪れるほどだ。
近藤カメラマン自慢の(?)館員証
講道館のビルを見上げながら、そんなことに思いを巡らせていると、近藤カメラマンがおもむろに「私、高校のとき柔道をやっていまして」と講道館の館員証を人差し指と中指で挟んでちらりと見せた。えっ、自慢? いや、講道館は柔道を愛する人々に幅広く門戸を開放していることをアピールしたかったのだろう。
講道館はこれくらいにして、今度は少しだけ住宅街に足を踏み入れてみよう。白山通りを挟んで向かい側にトンネルが見えた。トンネルとは地下鉄丸ノ内線のトンネルである。
丸ノ内線の後楽園駅はビルの2階部分にある。東京方面から丸ノ内線に乗った場合、本郷三丁目駅を出発して後楽園駅に近づくと電車が地上に出る。そして2階にある後楽園駅に到着する。さらに後楽園駅を出るとしばらく地上を走り、最後にトンネルを入って茗荷谷駅に滑り込む。
裏に入るとけっこう素敵な坂がある
地下鉄なのに地上に出たり、トンネルに入ったりするのは、地形が起伏に富んでいるということだ。東京は坂が多いと言われるが、このあたりもいたるところに坂がある。トンネルの中を見ようと金網に顔をつけて覗き込んだが、中はあまり見えなかった。
白山通りに戻ろうとすると小さな公園と神社を発見した。調べて見ると、神社の名前は出世稲荷神社で、滑り台とブランコのある公園は春日児童遊園という。このあたり一帯にかつて春日局の屋敷があり、敗軍の将の娘から徳川3代将軍、家光の乳母、さらには大奥にまでなった春日局の出世にあやかって出世稲荷と呼ばれるようになったとか。
東京ドームや後楽園ホール、はたまた講道館で試合をする選手たちが出世を願い、この神社にお参りすることはあるのだろうか。
2020年6月掲載