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しぶさんぽ Season2 VOL.2

武蔵野の森スポーツプラザは普段、プールや武道場、アリーナが一般の市民にも開放されている。しかし散歩当日は新型コロナウイルスの影響で館全体が閉鎖されていた。静かに清掃をする作業員のほかには、中庭でベビーカーを押すお母さんの姿が見られるのみ。親子連れを目にしながら、ふと「地元の子どもたちはどんな気持ちでオリンピックを迎えるのかな~」と思ったりした。

左が武蔵野の森総合スポーツプラザのメインアリーナ。右がスタジアム

発見したのは「調布市のオリンピック・パラリンピック教育」というリーフレット。それによると、市内の小中学校が、「オリンピック・パラリンピックの歴史、精神」、「国際理解、日本の伝統文化・芸能」、「スポーツ、交流」、「環境、ボランティア」という4つのテーマについて、各校で1つのテーマについて実習したり、講師を呼んだり、体験したり、という学習を行っているという。ふむふむ。

たとえば、柏野小学校では、しめ縄づくりの名人を講師に招き、正月用のしめ縄をつくり、日本の伝統を学ぶと同時に稲わらの再利用、リサイクルの仕組みを学んだ。八雲台小学校はアイルランド大使館員にアイリッシュダンスを踊ってもらい、一緒にアイルランド料理を食べた。食育だ。なかなか手のかかる学習をして、オリンピック・パラリンピックを迎える準備をしているのである。

地元でオリンピックが開かれるなんて、一生に一度あるかないかの出来事だろう。せっかくのオリンピックが、子どもたちの心にいい形で残りますように。リーフレットを見ただけだけど、そんな思いが伝わってきた。

写真左側にはAGFフィールドがある

さて、散歩を続けよう。人気のないスタジアムと武蔵野の森スポーツプラザを後に、今度は京王線飛田給駅とは逆の方向へと歩いてみた。角を曲がってAGFフィールド沿いを歩いて西へ。スポーツプラザを挟んでスタジアムとは逆側にあるAGFフィールドは、味の素スタジアムと同じ天然芝を使用しているとか。陸上のほかサッカーやラグビーでも使われるという。

さらに突き当たって右に折れ、スポーツ施設から離れていくと、「おりゃ~!」と気合いの声が遠くから聞こえてきた。ここはどこ? 何をやっているの? そう思っていると近藤俊哉カメラマンがまたしても冷静に教えてくれた。

「あれは機動隊員の声じゃないですかね。ここ、警察学校ですから。ああいう声、子どものころによく聞きました」

警視庁警察学校。確かに機動隊員が訓練しているといえば、しているような声に聞こえる(どんな訓練かはまったく不明だが)。近藤カメラマンが育った地元にも警察学校があり、真夏に機動隊員が重厚な装備を身につけて、汗だくで大声を出しながら訓練をしている姿を何度か目にしたことがあるらしい。

府中市の路地。なんだか心が温まる

警察学校の北側に隣接するのは警察大学校。警察施設が連発する街並みを歩いていると、またしても近藤カメラマンがつぶやいた。

「やっぱり警察の施設があると、地域の人たちが安心というのはあるかもしれませんね。若い警察官がちょくちょくコンビニに行くだけでも防犯上の効果がありますから」

う~ん、そうかもしれない。だからといって「警察学校が近くにあるから安心だね。このマンションに決めよう!」とかって人はいるのかなあ…。それにしてもこのあたり、住宅は切れ目なく続いているけど、ちょっとだだっ広いというか、道がびよーんと真っすぐで、夜なんか女性はちょっと急ぎ足で歩きたくならないだろうか…。

なぜこのあたりはだだっ広い感がするのか。歴史をひも解くと、調布市を中心に三鷹市から府中市にかけて、調布基地だったということが分かった。1941年に飛行場が完成し、戦時中はもっぱら日本陸軍が使用。戦後、米軍が接収し「調布水耕農園及び補助飛行場」とされていた。

これが日本に全面返還されたのが1973年のこと。そこから東京都を中心に関係者が跡地利用について協議を重ね、飛行場は調布飛行場として生まれ変わり、新島や大島など伊豆の島々とを結ぶ拠点となった。

西武多摩川線多磨駅に到着

今回の散歩では訪れなかったが、跡地の東側に位置する調布飛行場はこじんまりとした空港で、観光目的で立ち寄る人たちもちらほらいる。小さな展望デッキから滑走路を見ていると(その向こうにスタジアムが見える!)、両翼にプロペラをつけた飛行機が静かに着陸し、瞬く間にターミナルの目の前に到着する。10人ほどの乗客がスルスル飛行機を降りて、ターミナルに歩いていく様は、大きな空港では感じられない暖かな空気に包まれていて何だか心地よい。

跡地の西側一帯には、東京外語大学や警察学校、下水道処理場、社会福祉施設、武蔵野の森公園など規模の大きな公共施設が次々と整備され、現在のような街並みができあがった。大きな施設が多く、計画的につくられた街並みだから道が真っすぐというわけだ。以上は調布市が出している「調布基地跡地土地利用計画の概要について」という資料から知識を得た。

警察学校の前を歩いていると、住所は府中市となっていた。警察学校に背中を向けてさらに府中市に踏み込んでいくと畑と路地。のどかな雰囲気に包まれる。電車の音のするほうに足を向けて見ると、それは京王線ではなく、西武多摩川線だ。中央線の武蔵境駅と府中市の多摩川沿いにある是政駅を結ぶ全長わずか8キロの単線である。

2両編成のかわいらしい電車を目に北上すると多磨駅が現れる。地元の住民、東京外語大の学生が利用し、駅前は居酒屋などの飲食店が並んでいて、いかにも東京の私鉄沿線の駅前然としている。

以下、頼りないかもしれない私の妻情報。2019年のラグビーワールドカップで、オーストラリアvs.ウエールズという好カードを東京スタジアムで観戦した際、スタジアム周辺は人でごった返していたが、多磨駅周辺はそれほどでもなく、居酒屋にすんなり入れたという。もし本当なら多磨駅は穴場だ!

スタジアムから多磨駅までは徒歩で20分ほど。飛田給駅が表だとすれば、多磨駅は裏。試合観戦の余韻にひたりながら、裏をのぞいてみるのも悪くないのではないだろうか。

しぶさんぽ Season2 終わり

2020年3月掲載

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