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しぶさんぽ Season2 VOL.1

京王線飛田給駅に降り立った。ここはサッカーでお馴染み、味の素スタジアムの玄関口だ。普段は各駅停車しか停まらないけど、サッカー開催日は特急が停まる。ちなみに私は遠い昔、高校への通学で京王線のこの区間を使っていたものの飛田給は素通り。味スタはまだなかった時代の話だ。

飛田給駅前は広々したロータリー

駅北口を出ると右にマクドナルド、左には牛丼チェーン店のすき屋。サポーターたちの胃袋を満たすファストフード店が両サイドに構える。両店ともに入口にはFC東京のデコレーション。やはり、味スタといえばFC東京!

「味スタは東京ヴェルディのホームでもあります。それを忘れてもらっちゃ困りますね」

同行の二宮寿朗編集長よりピシッと指摘が入った。確かにその通り。キョロキョロと周りを見渡すと、セブンイレブンの窓ガラスに東京ヴェルディの小さなポスターが貼ってあった。それにしても扱いが違いすぎるのでは……最初に川崎をホームとしたヴェルディは外様の悲哀を味わっているということか?? 小さな疑問は胸にしまい、スタジアムに足を向ける。途中に中華チェーン店のバーミヤン。こちらは二宮編集長がよく出没する店だ。

すき屋はFC東京を応援を鮮明に!

味の素スタジアムは、東京オリンピックのサッカー、ラグビー、近代五種の会場でもあり、オリンピックで使用する際は味スタではなく本来の東京スタジアムと呼ぶ。細かい説明をすると、2001年に東京スタジアムがオープンし、03年に味の素がネーミングライツを取得。以来、契約を更新し続け、“味スタ”がすっかり定着しているのだが、オリンピックなどのビッグイベントは権利関係が厳しく制限されるので、東京スタジアムという呼称が使われる─というわけだ。

スタジアムの前を横切る幹線道路が甲州街道である。国道20号と書いたほうがピンとくる人も多いかもしれないが、調布市のお隣にある狛江市出身の私を含め、地元ピープルはみんな甲州街道と呼ぶ(たぶん)。その甲州街道、確かこのあたりに1964年に開催された東京オリンピックのマラソン折り返し地点があったような…。

「えー、それは陸橋を渡って右側ですね。ああ、あれです」

近藤俊哉カメラマンが指さした方向に顔を向けると、「1964.10.21東京オリンピック折返点」の看板が目に入った。車で通りっかったときによく見かけたけど、実際に標識の目の前に立つのは初めてだ。そして足元には「マラソン折返し地点」の石碑が。

調べてみると、平和の象徴であるハトを頭に乗せた御影石の石碑は大会翌年に建立されたという。文章を生業としている人間の性か、看板の「折返点」と石碑の「折返し地点」という表記の違いが気になってしまった。

ぜひ見てほしいマラソン折り返し地点の石碑

1964年のマラソンと言えば、銅メダルに輝いた円谷幸吉選手があまりに有名だ。2位で国立競技場に帰ってきた円谷が、後方からひたひたと走ってきたイギリスのベイジル・ヒートリーに抜かれたシーン。繰り返し放送されているので目にした人は多いだろう。

この折返し地点を最初に駆け抜けたのは優勝したエチオピアのアベベ・ビキラ。60年のローマ大会で、裸足で走って優勝して一躍有名になったあのアベベである。東京大会は2位に4分以上の差をつけての勝利だから、やっぱり速かったんだな~、アベベ。

石碑の前で10秒ほど目を閉じて、当時の様子を思い浮かべて見る。沿道は調布市だけでなく、近隣の市からも駆け付けてきた市民たちで埋め尽くされていたことだろう。生まれる前の話だけど、ちょっと懐かしい気持ちになった。

さて、東京スタジアムである。入口に立って見ると閉じたシャッターに「閉鎖」の張り紙。そう、散歩した3月上旬は新型コロナウイルスの影響により、スポーツイベントの中止が続々と発表された直後だった。予定されていたJリーグが中止になり、スタジアムの前は閑散としていた。はたしてオリンピック・パラリンピックは……。

味スタの看板もオリンピックでは消えるだろう

いや、気にするのはひとまずやめよう。説明すると、東京スタジアムで行われるオリンピック競技は、サッカー、ラグビー(7人制)、近代五種の3つ。向かいの武蔵野の森スポーツプラザでは近代五種とバドミントン、パラリンピックの車いすバスケットボールが行われる。さらにもう少し北に足を運んだ武蔵野の森公園は自転車ロードレースのスタート地点となっている。

ちなみに近代五種は、オリンピックの創立者であるクーベルタン男爵が、古代ギリシャで行われていた古代五種(レスリング・円盤投・やり投・走幅跳・短距離走)になぞらえて競技化を提案したのが始まりと言われていて、1912年のストックホルム大会から採用されているというからかなりの伝統競技である。

盛り上がるかどうか、という観点でいくと、サッカーは予選リーグから盛り上がるのは間違いないし、ラグビー男子7人制もリオデジャネイロ五輪ではあのラグビー王国、ニュージーランドを撃破しての4位だから、東京でもなかなか期待が持てるのではないだろうか。

さらに武蔵野の森スポーツプラザのバドミントンも必見。世界選手権で2度優勝のエース、桃田賢斗選手(NTT東日本)だけでなく、男女のダブルスなども大いなるメダル候補。調布から発信されるニュースに日本中が沸くことだろう!

2020年3月掲載

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